インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

イベント参加者の不思議な行動

勤めているいくつかの学校では、受験希望者のための説明会や体験レッスンや公開セミナーのようなイベントによくかり出されます。生まれついての大声と「香具師みたい」と評される話し方がみなさまの印象に残る私の特徴のようで、どこの学校でも「こいつに客寄せパンダをやらせとけ」てな具合で依頼されるのです。
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https://www.irasutoya.com/2017/10/blog-post_29.html

……というのはまあ冗談ですが、某通訳学校ではかれこれもう十年近く、そういったイベントの「パンダさん」をつとめています。生徒募集のためのイベントなので、もちろん参加費は無料。私が担当しているのは主に中国語通訳のクラスなので、お客さん(生徒さん)は日本語母語話者と中国語母語話者が半々くらいです(最近は後者の比率が高まってきました)。

こうしたイベント、どちらの学校にも共通したある現象が見られます。それは……

①参加を申し込まれた方のうち、約2割~3割の方が、当日お見えにならないか、大幅に遅刻して来られる。
②イベント情報がネットで公開されているので、当日必ず「飛び込み参加」の方がいらっしゃる。

……という点です。

もちろんそういう方が皆無の時もありますし、また統計を取っているわけではないので日本語母語話者と中国語母語話者のどちらにそういう傾向が強いのかなどは分かりませんが、とにかく遅刻や欠席、あるいは「飛び込み」がけっこう多いなあという印象です。受付で対応される学校のスタッフさんも大変ですね。

聞いたところによると、学校によっては最初からそういう方の人数を折り込み済みで募集人員をオーバーしても受け付ける、なんてこともあるそうです。まあこうしたイベントは基本無料ですから、参加される方もそれだけ「お気軽」な気持ちになっちゃうのでしょう。

……しかしですね。

口幅ったいことを申し上げるようですが、何かを学ぼうと志して学校や講座を検討する、その初手からして遅刻や無断欠席や「アポなし」をやらかすようでは、たぶんその学びの芽は出ないと思うんです。ましてや余暇や趣味のためではなくお仕事をその手につかもうと志す学習の、その入り口がそんな体たらくでは。

世上よく、そこまで「時間厳守」をやかましく言うのは日本人だけだ、諸外国ではもっと「大陸的」で「ラテン系」で「ちっちゃい事は気にするな!」だ……ってな言説がありますけど、ホントにそうですかね。

まあもちろん、ダイヤが数分遅れただけで「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」的なアナウンスが入る電車みたいなのは私だって「過剰」だと感じますけど、会議とか、何かのプロジェクトとか、大事なイベントとか、時間厳守で進められるシチュエーションは、海外でだってあると思いますし、私個人の経験でもきちんとした企業はどこでもそれなりに時間には厳しかったです。

某放送局で現地通訳者をしたときには、日本へ衛星通信で送る映像の送出時間などがきちんと決まっていて、その時間に従って衛星回線の予約を取るなど、きっちり時間厳守で現場は動いていました。また例えば会社の面接とか、資格試験とか、私も海外で受けたことがありますが、いずれも時間厳守でした。まあ当たり前なんですけど。

特に自分の将来の選択に関わる大事な局面では、人は誰しも「きちんとしよう」と思うじゃないですか。自己を厳しく律するという高邁な理由からというよりは、相手にマイナスの評価をさせまいという功利的な打算の結果としてです。

私が無料のイベントを担当している学校はいずれも入学試験があります。私が生徒だったら、少しでも学校側によい印象を持ってもらおうという「下心」が働いて、試験当日はもちろんですが、その前の説明会段階から絶対に遅刻や欠席をしない、万一そうなりそうだったら最低限連絡を入れると思いますけど。

実際、かつて通った某通訳学校で公開講座に参加を申し込んだ際、まあそのとき私は海外にいて事務局の方々に手続き上いろいろとお手数をおかけしたこともあって、当日の時間厳守はもちろんのこと、お礼の意味も込めて菓子折まで持ってったんですよね。事務局の方はちょっと迷惑そうな顔をされていました(そりゃまあそうだ)が、入学したら事務局の方にも「覚えがめでた」い方が将来の仕事につながる可能性は少しでも高まるだろう……的な小ずるい打算を働かせたわけです。

我ながらえらくまた「セコい」行動だなと、今となっては恥ずかしさが先に立ちますが。でも、これから通うことになるかもしれない、将来のお仕事につながるかもしれない学校の内部の人間に、最初から「この人はちょっと信用できないかな」という予断や評価を与えてしまうような行動をなぜ、しかもけっこうな割合の方が採るのか、それがよくわからないのです。

英語はどうだか分かりませんが、中国語業界は広いようで狭いです。意外なところで意外な方とつながっている。信用履歴の蓄積が大切というのは、なにもフィンテックの中だけのお話ではありませんよね。