海外旅行はとにかくフツーの街歩きが楽しいです。まあこれは私が、人の多いところはほんとうに苦手で「人酔い」するからというのもあるんですが、有名な観光地は、往々にして事前に調べて何度も写真で見た光景を確認するだけに終わることが多くて、つまらないなと思って。
ガイドブックの観光案内に極力頼らず、嗅覚だけを頼りにぶらぶらしていると、思わぬ出会いがあったりするのです。……思わぬ出会いがまったくないことも多いですけど。で、この日もぶらぶら歩いていましたら、この通りに出ました。牯嶺街です。
牯嶺街といえば、大好きな映画作家、故・楊德昌(エドワード・ヤン)監督初期の傑作『牯嶺街少年殺人事件』を思い浮かべます。映画に出てきたような街並みはもちろん残っていませんが、この界隈はあまり高いビルもなくて、ぐっと庶民的なたたずまいです。台北市の中心部ではあるんですけど。
この映画は昨年、4Kレストア・デジタルリマスター版となって再公開され、日本でもロードショー公開されました。私も再度見に行きましたが、4時間近い上映時間があっという間に感じるほどでした。
そんなこんなでいろいろ感慨深いものがある牯嶺街。とはいえごくごくフツーの街並みなので、特に何が目を引くというものでもないのですが、こんな味わい深い店構えの古書店がありました。
それと、ここでも見つけた、タンドリー式の釜で焼いている「胡椒餅」。龍山寺近くの「元祖福州胡椒餅」とはまたちょっと違う味わいで、こちらもおいしかったです。
交通量はそれほど多くなく、通りを歩いている人も少なくて、この街に暮らしているような「日常感」を味わうことができました。