インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

しまじまの旅 たびたびの旅 135 ……台湾料理の香り

かつて台湾で働いていたとき、日本から短期の出張で来た職員のなかに、食べ慣れない台湾の料理で苦労している方が少なからずいました。えー、台湾といえば食べ物がおいしくて有名なところじゃないかと思われるかもしれませんが、意外にも台湾の料理、それもどちらかといえば庶民的なそれが苦手という方は存外多かったように記憶しています。

私は人の好き嫌いはあるけれど食べ物の好き嫌いはまったくない人間なので、毎日「おいしい〜、おいしい〜」と食べていたのですが、おそらく台湾の庶民的な料理が食べ慣れないという方は(とくにお若い方に多かったです)八角など台湾料理特有の香辛料が苦手だったんじゃないかと思います。現在では滷肉飯(ルーローハン)や牛肉麵などの典型的かつ庶民的な台湾料理も日本でポピュラーになりつつありますが、当時はまだまだマイナーな存在でした。食べ慣れない方が多かったのも無理もないかもしれません。

そう思って検索してみたら、やはり八角の香りが苦手という日本の方は多いようです。こちらのページでは、八角の香りが苦手な人向けの台湾料理ガイドまでありました。そうそう、たしかに台湾のコンビニでも八角の香りがしますよね。

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それはさておき、台北から高鐵(台湾新幹線)で高雄にやってきました。私が働いていたのはこの街だったので、ひときわ懐かしさがこみ上げます。でも台鐵の高雄駅周辺などはかなり様変わりしていて、高雄駅全体が地下化され、保存されている旧駅舎が中山一路の真ん前に据えられ、その両側には巨大なショッピングセンターができていました。たまたま乗ったタクシーの運転手さんは、旧駅舎とショッピングセンターのアンバランスさを「政治家は何を考えているんだか」と嘆いていました。

ネットで予約した宿に荷物を置かせてもらって、お昼ごはんを食べに四神湯と米糕のお店に行きました。ここは高雄出身の台湾人留学生におすすめされたお店です。私が泊まる予定の旅館を教えたら、その近くだったらここがおすすめですと教えてくださったのです(優しいですね)。四神湯というのは、茯苓や蓮の実など四種類の生薬と豚のモツなどを煮込んだ塩味のスープで、米糕はおこわのようなご飯の上に魚鬆(魚のでんぶ)や花生(ピーナッツ)などが乗った小さな丼料理です。

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他にも紅槽肉(甘みのある麹で味つけして上げた豚肉)や滷大腸(モツ煮込みみたいなの)も頼みましたが、どれもおいしいです。あまりに懐かしい味ばかりなので夢中でかきこんでしまいましたが、食べ終えてふと、でもこれらも日本からの観光客や出張者に絶賛推薦できるかというと、人によっては二の足を踏んでしまうかも……と思ってしまいました。いずれも八角をはじめとする漢方薬っぽい香り(薬膳料理みたいな)が立っているからです。

食べ物の好みは人によってそれぞれですから、こうした料理がちょっと苦手という方もいらっしゃると思います。私はむかし、出張してきた日本人に「ここがおいしいです」などとおすすめしたりしてましたが、あれもいま考えると「ありがた迷惑」だったケースもあっただろうなあと思います。

そうそう、くだんの高雄出身の台湾人留学生が私のためにわざわざ書いてくださったB級グルメおすすめのお店、独り占めしているのはもったいないので、ここに載せておきます。Google Mapなどで検索すれば、場所はすぐに分かると思います。高雄を訪れる機会がありましたら、ぜひ。あ、でもB級グルメですから、八角などの香りは強めです。