インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

画面を共有すると一発で伝わる

はてなブログで、興味深い記事を読みました。英語が苦手とおっしゃる筆者氏が、英語ばかりの環境の職場に入って駆使してきた「バッドノウハウ」を紹介するという記事です。バッドノウハウとは筆者氏によると「本質的には生産性はないものの、問題解決のために必要になってしまうようなノウハウのこと」だそうです。

ご本人は「小手先」の知恵みたいなものと書かれていて、確かに「志(こころざし)低そう」な感じで書かれているのですが、読んでいくと「けっこう志高そう」と思えてくるのが素晴らしいです。外語を使って仕事をすることに果敢に挑戦されていますよね。そして、外語を使って仕事をしたことがある方なら、多かれ少なかれここに書かれているようなノウハウを自分なりに開発して奮闘しているんじゃないかなと。

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全編おもしろくて興味深いのですが、なかでも「画面共有しまくる」という項目にひかれました。「英語のみで全てを説明するのは大変です。ですが、画面共有をして"This!"とか言っておけば一発で伝わります」。これ、パワポ資料を使った通訳でレーザーポインターを持っていると、多くの固有名詞を代名詞に置き換えられてラクというのに似ているなと思ったのです。

たとえばこんな図面を前に通訳をしている時(図はあくまでもイメージです)。

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ここで技術者が例えば「復水貯蔵タンクから高圧注水系の高圧注水ポンプを経て蒸気ドラムに入ったのち原子炉に至ります」などと発言したとして、これを英語や中国語ですべて話すのは大変です。もちろん通訳者としては話せて当然ですし通常は話すでしょうけど、何時間もある技術会議で体力を温存するためには、こういう言い方はなんですが「省力化できるところは省力化したい」。

そんな時にレーザーポインターがあれば、複雑な専門用語や技術用語の多くが代名詞で置き換えられます。画面をポイントしながら「ここからこう来て、ここを通ってここに入り、最後にここです」のように話すことができるのです。もちろん毎回これをやっているとこちらの能力を疑われますし、そもそも画面の表記に英語や中国語が添えられていないと(あるいは訳されていないと)使えない「ワザ」ですが。

ちょっと状況は違いますが、留学生に何かを説明する際に、資料や図解をプロジェクターで投影して説明するのと、純粋に口頭だけで説明するのとでは、情報の伝わり方が全く違うという話にも通じます。留学生のみなさんは(もちろん人にも、日本語の習熟度にもよりますが)口頭だけで説明していると「ふんふん」と聞いているようで、実は全然伝わっていなかったということがよくあります。聞き取れないことが恥ずかしいという心理も手伝って、あえて確認しない人もいますからなおさら。それが画面を見せながらポイントして話すと、当たり前ですけど理解度がぐっと上がり、一発で伝わるんですね。

あと、蛇足ながら「強めの"は?“に備える」にも笑いました。「自分が何か発言した時に結構強めに“は?“と言われて精神がやられる時があります」。わははは、これ、中国語の“あ゛ぁん!?”と同じですね。私もこれでずいぶん精神をやられ、そのおかげでのちにはとても精神が強くなりました。

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