インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

カネ目当てに留学生を集めているんだろうと言われて

今朝の東京新聞に、千人以上の留学生が所在不明で問題になっている東京福祉大学の記事が乗っていました。

www.tokyo-np.co.jp

元教員は「研究生を無制限に集めた上、教室や教員を整備しなかった。大学は学費目当てで、金もうけしか考えていなかった」と証言し、就労目的で在留資格を得ようとする外国人と、少子化で経営難に陥りつつある学校法人の思惑が一致した結果のようです。この学校は「残った学生に対し、名古屋にある系列の専門学校への進学を勧める」そうで、その理由をこの元教員は「また二年間、学費を吸い取れるから……」としています。しかもこの系列の専門学校は東京新聞の取材に対して定員超過が常態化していたことを認め「各地の日本語学校からの受け入れ要請を断り切れなかった」と釈明しているとのこと。

私は現在、多数の外国人留学生が学ぶ専門学校や日本語学校に奉職しています。もちろん私が勤めている学校はいずれもきちんと入学試験や入学に際しての選考を行い、カリキュラムもきちんとしていますし、留学生自身もみな真面目な方ばかりです(なかには少々「ご遊学」的な方も散見されますが)。それでも、この記事を読んで少なからず胸が痛み、いろいろと考えるところがありました。

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https://www.irasutoya.com/2018/01/blog-post_52.html

先日、私の勤めている専門学校の授業の一環で長野県に行ってきました。学校の研修施設が山の中腹にあって、そこでお互いに親睦を深めるとともに、観光通訳などに関する学習を行うのです。周囲は森あり湖ありでとても風光明媚な場所ですが、ここには私、苦い思い出があります。それは二年前にここで、留学生のひとりが夜に深酒をして急性アルコール中毒に陥り、救急車で搬送されたことです。私が救急車を呼んで病院まで付き添い、徹夜で対応しましたが、お医者さんからは「引率の先生がついていて何をしていたんだ」と厳しく叱責されました。

誠にその通りで、返す言葉もありません。その後私は、万が一の時のためにと消防署の救命講習を受けて、人工呼吸やAEDの使用方法などを学びましたが、これとて急性アルコール中毒に対応できるものではありません。留学生はもうみなさん一人一人が大人ですから、本来なら自分で自分を律してほしいところです。でもそこはそれ、留学生のみなさんはまだ若いですし、学校としても全て自己責任で済ますわけにもいきません。

qianchong.hatenablog.com

二年前に救急搬送された際、お医者さんから上述の叱責の他にもうひとつ言われたことがあります。

あんたらどうせ、留学生をだまして大勢集めてカネを吸い上げてるだけなんだろ。留学生の命なんて何とも思っていないんだろ。

あまりの暴言ですが、私は「そんな学校ではありません」と返すのが精一杯でした。ひとつにはこんな夜中(午前二時ごろでした)に、本来は地元の人のためにスタンバイしている救急車と救急隊に出動して頂いたことや、当直とはいえ夜中にたたき起こされたお医者さんに対して本当に申し訳なかったから。そして昨今、上述のような悪質な日本語学校や大学などが、留学生を集めるだけ集めてろくな授業をしていなかったなどの事例がマスコミで報道されており、たぶんこのお医者さんもそうした報道に接していらしての言だろうと想像したからです。

というわけで私は、それ以降の合宿に際してはちょっとしつこいかなと思うくらい留学生のみなさんに対して注意喚起をしてきました。かつて私が中国で留学していた大学では、私たちの何年か後に留学してきた日本人が厳冬期にキャンパス内の池に張った氷の上で遊んでいて氷が割れ、そのまま亡くなるという痛ましい事故がありました(私はテレビニュースで知りました)。あえてその例も引いて「日本で客死するなんてことがあれば、みなさんのご家族の悲しみも計り知れません」と毎回「重い話」をしてきたのです。その甲斐あってか、ここ二年間はみなさん深酒もせず、とても「健康的」に合宿を過ごして下さっています。

もちろんうちの学校は、不法残留などの問題についても非常に厳しく対処していて、出席率などの管理も厳格です。ですから上述の東京福祉大学の問題と同列に語るつもりは全くないのですが、それでも日々留学生と接している一教員として、学校経営と教学内容のバランスについてはなお一層自覚と内省が必要だなと思ったのでした。