インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

チャイニーズの「舌打ち文化」

都内の、とある日本語学校の先生と話をしていて「中国人留学生がよく舌打ちするんだけど」という話題になりました。確かに、中国人留学生に限らず、チャイニーズ(中国語圏の人々。華人と言ってもいいですけど、音的に「歌人」や「家人」と間違えるので「チャイニーズ」としておきましょう)には、けっこう頻繁に舌打ちをする方がいます。

話し始めに「チッ」、話の途中に「チッ」……日本人にとって舌打ちは、まずほとんどの場合「不満」や「不快」を表すサインですから、かなりインパクトがあります。個人的にはこれ、日本の人々の、チャイニーズに対する誤解なり偏見なりのけっこう大きな原因になっているのではないかと思っています。

でも、チャイニーズにとっての舌打ちは、日本人が想像するほどの具体的な意味は持っていないことがほとんどです。もちろん「不満」や「不快」の表現としても使われますが、それよりはるかに多くの場合、舌打ちはほとんど言葉の息継ぎというか、句読点みたいなもの。ご本人もたぶん無意識のうちに舌打ちしているはずです。

実際、私が授業で「パブリックスピーキング(人前に出て、相手に納得してもらえるような話し方)」の訓練を行う際に、チャイニーズの留学生の舌打ちを指摘すると、「え? 舌打ちしてました?」という反応が多いです。録音を聞かせて「本当だ……」と気づく方も多い。

さらに、チャイニーズに特徴的な習慣として、おいしいものを食べたときに「チッチッ」(これは日本にも「舌鼓を打つ」というのがありますね)、相手を賞賛するときや、何かに感嘆したとき、得意な気分になったときなどに連続して「チッチッチッ……」などというのもあります。とにかく日本人とはかなり異なる「舌打ち文化」と持っている人たちなのです。

qianchong.hatenablog.com

長年チャイニーズの留学生と接してきた日本語学校の先生でも、こうしたほんの小さな文化の差異に気づかず誤解を重ねていることがあるかもしれません。そしてたぶん、私もまだ知らない習慣もきっとあるはずです。

留学生と接するときは、その日本語のつたなさについ「ティーチャートーク」が昂進して相手を子供扱いしてしまう危険性があり、私は常々自戒としていますが、言葉以外にも様々な誤解の種はあるのだと改めて思った次第です。

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https://www.irasutoya.com/2016/06/blog-post_140.html

追記

台湾で働いていたときも、日本から出張してきた若い社員が「王さんに舌打ちされちゃったんです~」とヘコんだり、引いたりしていることが時々ありました。私はそのたびに「あれは息継ぎみたいなものですから」と説明していましたが、まあなかなか慣れないですよね。

逆に、現在日本に留学している、ないしは日本に住んだり日本で働いたりしているチャイニーズのみなさんは、日本人にはそうした「豊かな舌打ち文化」はないことをもう少し意識されるとよいかと思います。あらぬ誤解を招かないためにも。

……と思って、何かチャイニーズの舌打ちの実例はないかなとYouTubeを検索してみたら、中国系マレーシア人の方がこんな動画をアップされていました。気づいている方は気づいているんですね。面白いです。

youtu.be