『フィンランド人はなぜ「学校教育」だけで英語が話せるのか』という本を読みました。確かにフィンランドを旅行すると、特に都会ではどこに行っても英語が普通に通じます。田舎に行くと、年配の方々には「英語は苦手なの」とおっしゃる(とはいえ私などより桁違いに流暢)方もいましたが、それでもコミュニケーションにはあまり不自由しませんでした。
この本の帯には「その秘密を解き明かす」と惹句が書かれてあって、私は言語的に英語とは縁遠いフィンランド語の母語話者が、なぜ学校教育だけで英語が話せるようになるのか、興味を持って読みました。でも結局「フィンランドは、とにかく先生と教科書と教育制度がすごい!」以上のことは書かれておらず、少々期待はずれでした。でもこれは私の選択が良くなかったのです。この本は、むしろフィンランドの教育制度を通して、日本の教育制度の現状、とりわけその不備を指摘するところに重点が置かれており、言語的な特徴・差異が外語学習にどう反映・影響しているのかについては、あまり紙幅が割かれていないからです。
英語とフィンランド語の両方を学び、なおかつ教育学や言語学を研究されているという方はそんなにいらっしゃらないのでしょうから、無いものねだりなのかもしれません。もちろん、この本で指摘されている通り、インプットやアウトプットの量が桁外れに違い、教科書や教案に様々な工夫が凝らされ、教員も基本的には修士以上の研究経験があり、かつ教員の労働環境もかなり恵まれている……という点は、いずれも日本が大いに学ぶべき点だと思います。ただそれとは別に、同じく言語的には遠く隔たっている我々日本語母語話者が英語を学ぶ際のヒントを、フィンランド母語話者の英語学習プロセスから学べたらいいなあと思うのです。