インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

警察のチラシに見る外国人への予断と偏見

昨日学校の事務局から「担当クラスの留学生に配布してください」と渡されたチラシ。一読、不愉快な気持ちになりました。学校がある区の警察署から送られてきたという、こんなチラシです。

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「日本で生活する外国人のみなさまへ」と題されたこのチラシ、日本語に加えて英語、中国語(簡体字)、ベトナム語の説明が付されています。上半分は「新型コロナウイルス対策」ということで、三密を避けるなどの注意喚起があり、下半分に「SNSでさがしたアルバイト」が犯罪かもしれないと警鐘が発せられています。注意喚起の趣旨は理解できなくもありません。でも「してはいけないこと」に列挙されている項目は、まるで留学生が犯罪者予備軍であるかのような予断と偏見に満ちていませんか。

このチラシが「警視庁組織犯罪対策部」の発行であることからも、配布の目的が下半分にあることは明白です。その意味で上半分は、そうした主目的の露骨さを薄めるために取って付けたような印象すらあります。中国語で“溫馨提示”とあるのですが、これ、「お知らせ」くらいの意味ながら、「お気をつけになってください」的な丁寧さを醸し出した表現でもあります。これすら却って慇懃無礼に感じてしまうのは、私の心がひねくれているからでしょうか。

だいたい、新型コロナウイルス対策については、警察署に言われるまでもなくできる限りの体制を取っています。何なら異国に住んでいる留学生のほうが私たち日本人よりも敏感かつ繊細であるくらい。そして下半分の「してはいけないこと」に列記された「どろぼう・ごうとう」だの「さぎ」だのは一体何でしょう。改めて言われなくたって、やりませんよ、そんなこと。自分が留学生や在留外国人の立場で、現地の警察からいきなり「どろぼう・ごうとう・さぎ」はしないようにと言われたら、どんな気持ちがするでしょうか。一度想像してみてほしいと思います。

このチラシを唯々諾々と受け取り、我々現場の職員に配るよう指示した学校当局にも、少々疑問を感じています。留学生を千人単位で抱える学校でありながら、こうした予断や偏見に何のセンサーも働かなかったのでしょうか。私はこのチラシを配る気はありません。組織犯罪に巻き込まれないようにと警察から注意喚起があったので、各自注意してくださいと口頭で伝えるだけにしたいと思います。いや、そうだ、あえて留学生にこのチラシを見せて、それぞれどう感じたか、日本における外国人への偏見についてどう考えるか、討論の材料にしましょう。留学生のみなさんの意見や感想、討論の結果は、あとでこのエントリに追記したいと思います。