ヘルシンキでは現代フィンランド料理のお店二軒に行ってみました。いずれも食材に自然素材やオーガニックなどを謳っていて、なおかつ芸術的な盛り付けで小さな料理をいくつも提供するコース、つまり会席料理みたいなスタイルのお店です。どちらもコースに合わせてグラスワインのペアリングコースがあるのですが、特徴的なのは「ノンアルコール」のペアリングもあることです。
悲しいことに、歳を取ってお酒があまり飲めなくなってしまいました。まったく飲めないわけではなくて、むしろ飲むのは今でも好きなのです。でも飲める量がかなり減ってほんの少しのお酒で酔うようになり、さらに翌日の身体が重くてつらいので、自然とお酒から遠ざかるようになりました。それでも食事の時に少しずつ違ったワインを合わせるのは楽しいものです。それでこの二軒では「ノンアルコールのペアリング」を試してみました。
nolla
フィンランド語で「ゼロ」という意味の店名は“zero waste”、つまり廃棄物ゼロを目指すレストランというコンセプトが込められているんだそうです。お店で調達する食材も、生産者と話し合って例えばプラスチックのパッケージやラップフィルムなどを廃するよう努力しているとか。またできるだけ「地産地消」を目指すということで、フィンランドの地元の食材をできるだけ使用してそうです。
ノンアルコールの飲み物は、例えばトマトとラズベリーのサラダスープには「ラズベリージュースにほんの少しチリを効かせたもの」とか、グリンピースとロメインレタスのサラダに豚の脂身のフレークを散らしたものには「桃の香りのジュースに緑色のシロップを浮かべたもの」とか、白身魚のパプリカソースには「レッドカラントと蜂蜜のジュース」とか、料理の味わいや香りに合わせたソフトドリンクを工夫していました。
メインの羊肉には赤ワインを思わせる真っ赤な「ラズベリージュース」がついてきました。またデザートのキンモクセイ味のアイスクリームにも「リンゴ酢のジュース」が。こうした料理にソフトドリンクというと、日本では烏龍茶一辺倒か、あるいは全然合わないコーラやジンジャエールやオレンジジュースというパターンが多いですが、ペアリングをとことん考えているんだなという努力の跡が見て取れるようでした。
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こちらは一年半ほど前にも行きましたが、ネットで予約したので記録が残っているのか、店員さんが「前にもいらっしゃいましたね」と声をかけてくれました。食前酒がわりに「白ぶどうのジュース」。ワイン用ぶどうのリースリング種で作られているそうです。生食用のぶどう、例えばコンコードとかマスカットなどのジュースはよくありますけど、ワイン用ぶどうのジュースは珍しいですね。でもかなり甘かったですけど。
その後も料理に合わせて「エルダーフラワーのコーラ」とか「ホワイトミントティー(の冷やしたもの)」とか「フィンランドの湖周辺によく生えている草から作ったお茶」とか、色々と珍しい、凝った飲み物が出てきました。かと思えば「100%りんごジュース」みたいにストレートなものも。
メインの肉料理には、これも「ワイン用ぶどうのメルロー種で作ったジュース」を合わせてくれました。店員さんいわく「ワインはアルコール発酵しているのでぶどうの糖分がアルコールに変わって糖度が落ち、辛口になるんですけど、ジュースの場合は限界があります」とのこと。確かに、料理に合わせるにはちょっと甘いかなと思いました。
デザートも飲み物がついていて、これは「フィンランドの田舎でよく見かける赤い花で作ったジュース」だそうです。たしかにこの花、湖畔やら道路脇やら、とにかくどこにでも咲いている花なんですが、名前が聞き取れませんでした。で、後で調べてみたら、どうやら「ヤナギラン(maitohorsma)」みたい。面白いなと思ってスーパーやデパ地下で探してみたんですが、見つかりませんでした。次回訪れることがあれば、また探してみようと思います。
ノンアルコールのペアリング、それぞれに面白い飲み物ばかりでしたけど、やはりちょっと無理があるかなと思ったものも多かったです。特に、これは好みもあるでしょうけど、甘さの問題。やっぱりある程度以上に甘い飲み物は食事には合わないかなあ……。