インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

ソバーキュリアス

「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という言葉があります。お酒を飲めないわけではないけれど、あえて飲まない人、素面(しらふ)でいたがる人、というような意味だそうです。『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』という、そのまんまの題名の本で知りました。

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「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本

もう数年前から静かなブームになっているようで、試みにネットで検索してみると、数多くのサイトが見つかります。
hillslife.jp
madamefigaro.jp
www.esquire.com
maruku09.com
なんと、中国語のサイトもありました。かつて中国語圏でのビジネスといえば酒宴、それもマチズモ全開のそれがつきものだったんですけど、どんどん時代は変わっているんですねえ。いいことです。
www.foodnext.net

かくいう私ももうずいぶん前から、お酒に弱くなっていました。昔はお酒が大好きで、そのために学校に通って資格まで取ったほどだったのに、ほんの少しの量で酔うようになり、最近は飲むとかなり気持ちが悪くなる日も。これはもう「打ち止め」、一生分のアルコールをすでに飲んでしまったということなのかもしれません。

上掲の本によると、歳をとってお酒が弱くなるのは、医学的には以下のような背景があるそうです。

肝臓のアルコール分解能力が低下、アルコールの血中濃度が下がりにくくなる。
加齢と共に体内の水分量が減り、アルコール血中濃度が上がりやすくなる。
中枢神経のアルコール感受性が上がって、鎮静作用や運動系への作用が強く現れるようになる。

なるほど。私は中でも内臓への影響に注目しています。実はここ半年ほど慢性的な腰痛に悩まされていて、その対策としてかなり積極的に身体を鍛えることでなんとか解消に努めているのですが、なかなか好転しません。もちろんこれからも動かし続けはしますが(運動していると、なぜか腰痛はほとんど気にならないのです)、それ以外に内臓の機能が低下して腰痛にも影響している可能性を考え始めました。それでちょっとお酒を控えて様子をみてみようと思ったのです。

この本ではまず「アルコールは薬物である」というちょっと意外な認識からはじめ、「禁酒して何が変わったかを記録することで『見える化』する」、「飲まなくても平気ですごせる行動パターンのコツをつかむ」、「『自分にとって、なにが飲む引き金になるのか』を知る」など、さまざまなアプローチで減酒・禁酒・断酒への手引きをしてくれます。

この本で紹介されている「AUDIT」という「1990年代初めに、世界保健機関(WHO)がスポンサーになり作成されたスクリーニングテスト(AUDIT | e-ヘルスネット(厚生労働省))」もやってみました。結果は40点中15点で「アルコール依存症疑い群」という判定。うーん、けっこう依存症に近いところにいますね。

そして最終章には「アルコール依存症に『治癒』はない(回復はある)」として、こんなことが書かれています。

・「治癒」=飲酒のコントロールを取り戻すこと
・「回復」=断酒をして「飲んでいれば幸せ」だった状態から、「シラフのほうが幸せ」という生き方へ転換すること(229ページ)

いったん依存症になってしまうと、飲酒をコントロールできる状態には戻れないと。なかなか厳しい言葉です。しかし、依存症にいたる手前の私のような人間にとっても、この「回復」の状態、つまり「シラフのほうが幸せ」という生き方へ転換することというのは、なかなか魅力的です。ソバーキュリアスを選ぶ人たちの気持ちも同じようなところにあるのでしょう。ヴィーガンを選択するのと似ているような気もします(私自身はヴィーガンではありませんが)。

そういえば、コロナ禍前に何度か旅行した北欧では、当時から早くもレストランなどでノンアルコール飲料のペアリングなどが流行していました。あれから自分でもいろいろと試してはみたのですが、比較的長く続くこともあれば、すぐに挫折してしまうことも。いまはソバーキュリアスが静かなブームになりつつあるということで、こんな魅力的な商品も販売されています。いま一度私もチャレンジしてみようと思っています。

soberplus.tokyo