いつもトレーニングに通っているジムへ行く途中に、材木をまるでかぎ針編みのように組み合わせたような奇妙な外観の建物があります。外国から見えた建築ファンと思しき方々がよく写真を撮っているこの建物、台湾の“鳳梨酥(パイナップルケーキ)”で有名な「微熱山丘(Sunny Hills)」の東京店です。
先日の夕刻にここを通りかかったら、お店の前に大きなリンゴのオブジェが置かれていました。りんごケーキの販売が始まったというマークかしらと思ってお店に入ってみれば、案の定その通りでした。こちらのリンゴケーキはいつもネットショップや一部店舗での限定販売ばかりで手に入れにくいのですが、今なら楽に買うことができます。
紅玉りんごを似たフィリングは甘さかなり控えめで、香料などのよけいな香りがせず、シンプルな味わいです。パイナップルケーキはÉchiréのバターを使っているそうですが、りんごケーキのほうはFléchardを使っているそう。材料にこだわりまくっているせいか、これがブランドの威力というべきか、パイナップルケーキ同様ひとつ300円というやや「強気」のお値段設定。でもとてもおいしいです。表面に薄く塗られたアイシングがまた魅力的ですね。
微熱山丘って、そのシンプル志向や商品ラインナップの極端な絞り込み、そして高価格設定など、ブランド作りの一つの典型例ですよね。スコット・ギャロウェイ氏が『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』で「不合理だがセクシー」と評した、少し前までのAppleが目指していたものに似ているような気がします。
そういえばÉchiréも似ています。こないだ新宿伊勢丹の地下を通りかかったらÉchiréの焼き菓子を売るお店ができていて、そんなに並んでいなかったので買おうかなと思ったら、お向かいの階段の踊り場からさらに後ろまでずっと列ができていてあきらめました。私は洋服などのブランドにはあまり心ときめかないのですが、食べ物のブランドにはとことん弱くて、毎度おのれのスノッブさにあきれてしまいます。
でも、ちょっと夜に飲みにでも出かければ、一皿800円とか1000円とかの料理をいくつも頼んで客単価としては数千円は簡単に支払っちゃいますよね。それに比べれば一個300円のりんごケーキも、一個500円もするÉchiréの小さなポーションも安……くはないけど、まあ支払えない額ではない。私は昔に比べて外食というものをほとんどしなくなりましたが、その理由の一つは同じ額を支払うならこういう「好きだけどちょっとお高い」ものを食べる方が外食よりもずっと楽しいと思うようになってきたからです。プロの料理はまた別の世界ではあるんですけど。
というわけで、今日はこれを作ります。牛すね肉を500グラムも買ったらたぶん3000円くらいはするでしょうけど、外食することを考えたら安いですよね。