台東から電車とバスを乗り継いで、台湾最南端の古い街、恆春にやってきました。にぎやかな街で、殊にこの、ごった煮のような庶民的な空気が魅力的です。
恆春には昔の街を囲っていた城壁や門の一部が今も残っています。公園のように整備されている所もありますが、今も現役で人や車の往来がある門もありました。
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台湾を旅していても、都会ではそれほど「異国感」を覚えません。街の風景や建物のデザインなどはもちろん日本とは多少異なりますけど、多かれ少なかれ同じようなブランドの看板が並んでいますし、特にショッピングセンターやコンビニなどはほとんど同じ雰囲気です。
ところが台湾の南の地方、それも田舎の町に行くほど濃厚なある種の雰囲気が立ち上がってきます。かつて仕事で何年間か住んでいたのもそうした南部の、それも田舎町だったので、個人的にはとても懐かしい感覚がよみがえります。
この雰囲気を言語化するのはとても難しいです。気取っていないというか、どこか「ユルい」というか、雑然としていて様々な色と音と匂いが混在していて……「台客*1」的でもあり、唐十郎の芝居のよう*2でもあり、とにかく居心地が良いのです。
こうした街でバイクを借りて、にわか住人よろしく通りをゆっくり流していると、本当に癒やされます。まあ、旅人の勝手なノスタルジーなんですけど。
恆春に限らず、路上に点在する亀の子たわしの破片のような檳榔(ビンロウ)の「噛みがら」と、路地のそこここに我が物顔で寝そべっている飼い犬や悠々と闊歩する野良犬を見ると、ああ台湾南部の田舎町に来たんだなあ……という気分に包まれます。現地の方には「よりによって、それか!」と突っ込まれそうですが。
そんな恆春で泊まったのは、前日にAirbnbで予約したカッコいい宿です。若い人たちが共同で経営しているらしく、ここで料理教室などの活動をしているよし。かつては銀行だったという建物の一部をリノベーションして、恆春らしからぬ(失礼)こんなおしゃれな空間に。
Airbnbなどの民泊は、日本では個人の家の一部を貸すとか、所有するマンションの一室を貸すなどというイメージで、それが周辺の住民とのトラブルを生んで、政府も規制に傾いていますけど、台湾ではこうしたホテルや旅館も積極的に民泊サービスのシステムを利用していて、運用がとてもフレキシブルだといつも感じます。
私は他のネットのサービス、例えばBooking.comやエクスペディアなども使いますが、宿のバリエーションと旅ならではの思いがけない体験は今のところAirbnbが断トツだと思います。
料理教室をやっているだけあって、宿泊料に入っている朝食はその場で作ってくれるワンプレートでした。すばらしい。
恆春といえば映画『海角七号』のロケ地で、映画に出てきた「阿嘉の家」はこの宿のすぐ裏手でした。この辺はおしゃれなカフェもあちこちにあって、観光客でにぎわっています。私はスルーしちゃいましたけど(ごめんなさい)。
でもこの建物を見てからというもの、脳内で『國境之南』の歌がイヤーワームになってしまって、いささか参りました。