ヘルシンキを訪れたら、ぜひ行ってみたかったのがアルヴァ・アアルト氏の自邸です。アアルトといえば、フィンランディア・ホールや、イッタラで製品化されているあの「ぐにゃぐにゃフォルム」の花瓶、妻のアイノ・アアルトがデザインしたタンブラーなどが有名で、学生時代から大好きだった建築家・デザイナーの一人でした。
ヘルシンキの郊外にある“The Aalto House”はアアルトが自宅兼事務所として建てたモダニズム建築。ウェブサイトを見ると一時間のガイドツアーをやっているそうです。スマホから予約してカードで支払いをしたら、すぐに確認のメールが届いたので、GoogleMapで検索したトラムとバスを乗り継いで行ってきました。
https://shop.alvaraalto.fi/en/tuote/guided-tour-the-aalto-house/
普通の住宅街に家はあります。ツアーには、私のほかにスウェーデン人とおぼしきご夫婦二組が参加していました。ほかに予約なしで来た方が一人いたんですけど、断られていたので、やはり予約はしておいた方がよいみたいです。
ツアーの言語は英語ですけど、建築やデザインに関する用語や、画家やデザイナーの名前や作品名など、聞き覚えのある語彙が多く、案内をしてくれた女性*1も英語が母語ではないようだったので、とても分かりやすかったです。
アイノ・アアルトのタンブラーが食器棚に並んでいました。案内の女性によると、このデザインは石を水に投げ込んだ時の波紋からデザインしたのだそうです。
二階のリビングには、アルヴァ・アアルト自身が書いた曲線がうねるような抽象画が何枚か掛かっていて、この絵を指して案内の女性が「ナミ、ナミ」というので何だろうと思ったら「波」でした。フィンランド語で「アアルト(aalto)」は「波」という意味なんだそうです。へええ、初めて知りました。
それにしても、このモダンさはどうですか。壁にはほとんどベニヤ板みたいな木材や麻のような布(ジュートだといっていました)が使われていて、質素でシンプルな印象です。でもよく見ると、合板を曲げて椅子の骨組みにしている素材や、細くて上部がカーブした木材をいくつも合わせて貝のようなフォルムを作っているテーブルの脚など、細かいところに工芸的に高度な手法が用いられています(下の写真の椅子とテーブル)。
窓が大きくて、木製のサッシというのがいいですね。暖房がしっかり効いた室内に新鮮な空気を取り入れるための細長いベンチレーションが窓枠の下についていたり、大きな窓を掃除するために窓全体を開ける時に使うレバーの穴があったり*2、いろいろと工夫されています。
特にこれら寝室のデザインは、現代の住宅写真といっても通じるくらい洗練されています。家具や調度品もほとんどがアアルト自身によるデザインだそうです。フィンランドのデザインはマリメッコやアラビアなどのカラフルで大胆な色彩やパターンも魅力ですが、こういうほとんど「禅」的にさえ感じるほどのシンプルさにも惹かれます。