インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

バンド形成

  上の大臼歯の前後に特殊な輪ゴムを挟んで一週間、ほどよく歯間に隙間ができたところで、ここに金属のリングを装着する。これは矯正器具を取りつけるための土台のようなものだ。
  輪ゴムを外したあとに検査をしてみると、右の歯に非常に小さい虫歯のあることが判明。これはもともと歯と歯が接している部分だったので、これまで見逃されてきたものだという。この段階で見つかる人は多いのだそうだ。で、別の虫歯治療専門の医師に交代して*1即虫歯の治療。とても小さいので五分ほどで終わる。この歯科医院は、治療のステップごとに患者に手鏡を渡して現在の状態を確認させる。私など全面的に医師に頼りきりだから別に見なくてもいいのだが、これが今流のやり方なのだろう。
  次に様々な大きさのリングから私の大臼歯に合うものを選んで、ぐいっとかぶせる。先生がしきりに「立派な大臼歯ですねえ、大きいですねえ」と繰り返すので、なんだか誇らしいような恥ずかしいような。先生はリングをかぶせて歯の形通り変形させたところでいったんはずし、「では器具を溶接してきますのでちょっと待っててください」。矯正歯科の先生は金属溶接までやるのかあ*2
  小さな器具が溶接されたリングを再び大臼歯にはめる。このとき特殊な接着剤を使うそうだ。このリングはこの先矯正が終わるまで着けっぱなしである。つけた瞬間はものすごい違和感があるが、「すぐに慣れますよ」とのこと。リングから小さな器具が外側に出っ張っているので、人によってはこれが唇の裏側にあたって口内炎になったりするそうで、それを緩和するための小さなケースに入った透明なゴム状のものをもらった。これは痛くて我慢できない時に、少しずつちぎって器具の上にかぶせるように貼り付けるんだそうだ。
  さらに矯正がはじまってから使う「ヘッドギア」の使い方講習。これはより効率的に歯を動かすための特殊な装置で、夜寝ている時は必ず装着する。リングの器具部分にちいさな管がついていて、ここにヘッドギアから伸びている「フェイスボウ」という太い針金状のものを差し込むことで奥歯が固定され、矯正の効果を高める。まだヘッドギアを使う段階ではないのだが、本格的に矯正がはじまるまでに何度も練習してスムーズに着脱できるようにしておいてくださいと言われた。ううむ、これはかなり怪しい姿だ。ちょっと「責め具」入ってるなあ。どんなものかは、そのうち絵を描きます、はい。
  今日はこれでおしまい。次回はいよいよ抜歯だ。

バンド装着後の食事

  すごく食べにくい。たった二本の歯にリングがかぶさっているだけなのに、こんなに咀嚼が困難になるとは。入れ歯や差し歯をしている人がよく「食べ物がおいしくない」と言っているが、その気持ちがほんの少しだけわかったような気がした。
  あと数年はこのまま、いや、今後矯正用の「ブラケット」を装着したらこれ以上に食べにくくなるのだろうなあ。予想していたことではあるけれども、ちょっとした感慨に見舞われてしまった。

*1:この医院では、歯列矯正はその専門家が、その他の治療はまた別の専門家が行うらしい。

*2:法的には歯科医の資格さえあれば歯列矯正もやっていいそうだが、一般の歯科治療とはかなり異なる技術が必要とされる治療だ。それで現在では歯科医の中でも日本矯正歯科学会の基準をクリアした「認定医」が主に治療をしているという。さらに矯正専門歯科医を目指す研修医を指導監督する教官資格として「指導医」という制度がある。