インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

後味の悪い出来事

先日、東急東横店の地下にある「フードショー」で特売のお刺身を物色していたら、突然シャワーの水が飛んできました。ちょうど私の目の前のガラス戸が開いており、奥(バックヤード)で洗い物をしていた店員さんの手が滑ったようなのです。眼鏡に水滴がたくさんつき、上半身のポロシャツがまだら模様になりました。

びっくりして奥を見ると、女性の店員さんがシャワーを手に、すまさそうな顔ないしは苦笑いのような顔で「会釈」していました。私は思わず「ヒドくない? 謝ってよ」と言ってしまいました。言ってから気づいたのですが、その店員さんは外国人労働者のようでした。近くにいた主任らしき人が飛んできて「大変申し訳ありません」と何度も謝るので「もういいです」となったのですが、この些細な出来事について後からいろいろと反芻しました(反芻ばかりしていて、まるで牛です)。

もし私があの店員さんの立場だったら、どう対応したでしょう。とにもかくにもまずバックヤードから飛び出て客の目の前に行き、深々と頭を下げるでしょうか。故意に水をかけたわけではないけれども、悪いのは自分ですから。でも、あの店員さんは苦笑いに会釈程度だった。だから私は思わず「謝ってよ」とキレてしまった。

しかしひょっとすると、水をかけた相手が私のような「こわもての、おあ兄さん」だったから、彼女は謝罪すらできず竦んでしまったのかもしれません。あるいは敬語や丁寧語を含んだ、ネイティブ・スピーカーを納得させられるレベルの謝罪の言葉を紡ぎ出せるほど日本語が達者ではなかったのかもしれません。さらには、彼女にとってはほんの少し水がかかった程度で実害はほぼゼロなのに、何をこの客は怒っているのだろうと不可解だったのかもしれません。

こういう場面では私は、まずはとにかく平謝りして誠意を示すのが最良の解決方法だと考えると思います。飛んできた主任らしき日本人店員さんも平謝りでした。でも、そうした価値観(?)を共有していない、あるいは理解できないという異文化の人もいるでしょう。またこれが地元の魚屋さんでちょっと水が跳ねて「おっとごめんなさいね」と言われれば私もスルーするところが、デパ地下という少々お高くとまった場所であったため「誠意がない」ことにことさら腹を立ててしまったのかもしれません。

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https://www.irasutoya.com/2017/08/blog-post_82.html

私は以前、このブログで、コンビニで働く外国人労働者の日本語がほんの少し拙いだけでも「日本人に代われ」とか「働く以上きちんとした日本語を話せ」などと罵声を浴びせる日本人について批判したことがあります。

qianchong.hatenablog.com

今回の私の立腹を、日本人と同じレベルの誠意を見せろと求めたと考えれば、こうした「働く以上きちんとした……」というスタンスと同じようなものかもしれないと思いました。

それに、私に水をかけたあの店員さんはたぶんアルバイトだと思いますが、その低賃金が批判されて久しいアルバイトであれば、主任さん(たぶん正社員でしょう)と同じような対応を望むのは無理筋かもしれません。ご本人にもそんなインセンティブは働かないでしょう。私は海外でスーパーやコンビニやデパ地下(に類する売り場)を利用したことが何度もありますが、正直に申し上げておおむね「それなり」の接客態度です。むしろ日本が異質なくらいで。

政府が外国人労働者の大量受け入れ、それも単純労働のそれを積極的に推し進めようとしている現在、こうした出来事は今後あちこちで起こるのかもしれません。雇用に際して日本人的なメンタリティを教育するのか、それとも私たちの方がもっと鷹揚に構えるべく変わっていくべきなのか、ほんの些細な出来事ですけど、色々と考えさせられたのでした。

……しかし、まず恥ずべきは私の短気でしょうか。一張羅を着て結婚式の披露宴にでも向かっていたのならともかく、ポロシャツにジーンズ姿で少しくらい水がかかってもね。何とも後味の悪い出来事でした。