インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

キット・アームストロング氏の音楽

バッハに「パルティータ」という曲のシリーズがあります。バッハのなかでも特に好きな作品で、グレン・グールドが弾くそれは愛聴盤(ストリーミング時代に「盤」もおかしいですが)として繰り返し聴いています。

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ところが先日Spotifyで、これまでに聴いたことのないタイプの「パルティータ」に出くわしました。たまたまそれは第1番の第6曲目「ジーグ」だったのですが、この曲はグールドを含めて数多のピアニストがその超絶技巧を余すことなく発揮して、言うなれば「ドーダ(©東海林さだお)」的にアグレッシブな演奏であることが多い(例えばこちらのページには6名のピアニストによる演奏がまとめられています。)なか、この「ジーグ」はとても繊細かつエレガントで、天上から静かに雪が降ってくるかのようだったのです。

あまりにも繊細なので、聴く方によっては「弱々しい」と感じるかもしれない……と思えるほどの演奏をしているそのピアニストのお名前はキット・アームストロング氏でした。

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キット・アームストロング氏は、ウィキペディアによると台湾系のアメリカ人なんですね。「周善祥」というチャイニーズ・ネームもお持ちのようです。それはさておき、「パルティータ」にびっくりして、Spotifyで次々に聴いていくうちに、すっかりその音楽世界に魅了されてしまいました。

音楽の専門家でもない私があれこれ言っても始まりませんが、氏の演奏はかなり独特だと思います。強さと速さが前に出る演奏ももちろんあるのですが、私は小さな音でゆっくりと奏でられる部分によりひかれました。例えばこちらの「ゴルトベルク変奏曲」。私はこの曲も大好きで様々なピアニストの演奏をコレクションするように聴いてきましたが、キット・アームストロング氏ほど様々な表情と緩急に富んでいる演奏は初めてでした。これぞ「変奏曲」と呼ぶににふさわしい千変万化ぶりなのです。

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奇しくも先日、東京新聞に氏の音楽評が載っていました。なるほど、かなり天才肌の方のようですね。この記事を読んで、さっそくリサイタルのチケットを予約してしまったのは言うまでもありません。

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