今朝の東京新聞に載っていた、ラグビー全国大学選手権に関する記事。明治大学が二十二大会ぶりに優勝を果たした要因には元監督による「競技外での指導」があったという「美談」です。
以前の明大ラグビー部合宿所では玄関に履き物が脱ぎ散らかされていたのを、きちんと並べるように指導したとのことで「改善前・改善後」の写真が。なるほど、これはすっきりしましたね。ほかにも夜更かしを戒めたり、大学の授業にもきちんと出るよう促したり、校歌や部歌を練習させたりして「名門にふさわしい振る舞いを」求めたというお話。
アスリートはただ競技にだけ集中すればいいのだ、と考えるのではなく、普段の立ち居振る舞いから規律と礼儀を重んじようというこうした指導はいかにも日本的な同調圧力のように感じるかもしれませんが、海外のプロスポーツでも、特に名門とか一流と呼ばれるチームでは「競技外でもきちんと」というのはよくあるんだそうですね。例えば遠征の移動時に「制服」のようなオフィシャルスーツやユニフォームで揃え、てんでバラバラの私服は御法度、とか。
https://qoly.jp/2016/02/05/barcelona-casual-wear-by-replay
もう十年以上前になりますが、アジアリーグ・アイスホッケーで通訳のお仕事をしたことがありました。現在は参加していないようですが、当時は中国のプロチームも参戦していて、長春や斉斉哈爾(チチハル)の遠征チームに帯同して日本国内を転戦していたのです。日本のプロチームが中国へ遠征する際にも帯同したことがあって、日光アイスバックスというチームと一緒に中国にも行きました。
その際、このチームのシニアディレクターを務めていたセルジオ越後氏から聞いたお話が興味深かったです。いわく、以前のチームは遠征の際にもみんな私服で移動していた。なかにはジャージ姿で飛行機に乗る選手もいた。それではいけないと「プロとしての心構え」を説き、まずは遠征の際にスーツ姿で移動するようにした……と。
なるほど、運動選手と言えば、それもラグビーやアイスホッケーのように激しいスポーツの選手はとかく無頼なイメージがつきまといますが、メディアを通してその姿が広く伝わるレベルのチームであれば、社会人としてごく当たり前の儀礼やプロトコルは不可欠ということなんでしょうね。これはまあスポーツに限らず、どんな仕事でも同じかもしれません。
冒頭の記事はその意味で清々しい印象を持ちましたが、記事の最後には少々首をかしげました。
決勝直前。ピッチに並ぶメンバーだけでなく、客席の仲間たちも起立して校歌を大声で斉唱した。茶髪やひげ面は皆無で、誰もが誇らしげな表情だった。
ん? 茶髪や髭面はだめなの? たぶん記者氏は「茶髪や髭面はだらしない」という価値観なのだろうと思われますが、これはどうかなあ。一事が万事という考え方もできますが、下駄箱や身なりを整えるよう求めるのと、個人が頭髪や髭を自由にするのを諫めるのとでは、方向性がちょっと違うのではないかと思いました。高校野球における坊主頭の強要や、先日話題になっていたこの大阪市における訴訟と同根のような気がします。
個人の自由を最大限尊重することと、儀礼やプロトコルを重んじることを両立するのは不可能ではないと思いたいのです。茶髪や髭面でも、生活態度は折り目正しいとか、遠征時には公式スーツをピシッと着込んでるとか、そういうのが最高にクールだと思うんですけど、理想論に過ぎないのかな。