台湾南部の列車を延々乗り継いで、太平洋側から台湾海峡側にぐるっと回り込んできました。屏東が近づくにつれ、車窓は見渡す限りのビンロウ(檳榔)畑です。
ビンロウはその種子を嗜好品として噛む文化があって、台湾で仕事をしていたときは現場のおっちゃんなどによく勧められたんですけど、ちょっとその生臭い香りが苦手でした。タクシーの運転手さんが噛んでいると、車内がその香りで充満するんですよね。噛んで赤くなった唾液を紙コップにペッと吐き出すのもちょっとねえ……と思っていました。個人的には「ビンロウ」と聞くと唐十郎の芝居(紅テント)を思い出します。
ともあれ、屏東を過ぎれば間もなく高雄です。かつてこの街で二年半ほどを過ごしたので、なんだか帰省したような気分です。とはいえ家は当時高雄縣(今は高雄市)の「岡山」という街で、この街は高雄と台南のちょうど真ん中にあるので、毎週末は高岡台湾に必ず出かけて映画を見たり買い物をしたりしていたというだけなんですけど。
台湾を離れた後も、高雄には何度か仕事で来ましたが、完全なプライベートは今回が初めて。真っ先に駆けつけたのは、牛肉麺では高雄一の名店との呼び声も高い「港園」です。ここは高雄出身の留学生に聞いても、高雄をよく知る日本人に聞いても、だれもが「一番」とおすすめされるお店。私が住んでいた当時から大人気で、かなりの頻度で通っていました。
こちらがお店の外観。いつも混んでいますけど、店員さんがテキパキとお客をさばくので、そんなに待たされません。
牛肉麺は「湯麵(スープあり)」と「乾麵(スープなしの混ぜそば風)」があるんですけど、今回は「乾麵」にしました。
う〜ん、これこれ。台湾全土で牛肉麺は食べられますが、ここのお店はかなり独特かつ孤高のクオリティを保っていると思います。台湾南部の料理は概してあっさりしていて、このお店も例外ではありません。私のような中壮年にも優しいお味です。
もうひとつ、高雄に住んでいたときヘビロテで通っていた牛肉麺のお店「劉易記」があるので、そちらにも行ってみましたが、残念ながら定休日でした。このお店の牛肉麺は「刀削麵」で、やはりかなりの高クオリティ。麺のほかに「滷味*1」もおいしいです。先回出張で高雄に来たときも駆けつけたんですけど、やはり営業時間外でフラれました。いつかまた訪れたいと思っています。
*1:説明が難しいですが、様々な素材(内臓系のお肉や豆腐、卵などなど)を煮込んだ台湾風のおでんみたいなおつまみ料理です。