インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

医療保険って何だったんだ

万一「くも膜下出血」を発症して、入院・手術・リハビリを受けると、全部でどれくらい医療費がかかると思いますか?

先般、細君がこの病気にかかった際、私の両親や細君の親戚筋から「お金は大丈夫?」と声をかけられました。たまにしか帰省せず、親戚づきあいも決して熱心でなく、今年からは年賀状も一切取り止めてしまったような私たちだというのに、ありがたいことです。

細君は保険会社などの医療保険に入っていませんでした。私自身もそれほどの蓄えはありませんし、入院して手術……という初期段階では、身の回りのものを買いそろえたり、介護用品や特殊な入院服をレンタルしたりと、こまごまとした出費が続きます。都合一ヶ月ほど入院していたので、正直、どれくらいの医療費になるのかと不安になりました。

ところが。

f:id:QianChong:20180221135401p:plain
http://www.irasutoya.com/

退院時の会計では、想像していた額と桁がひとつ違う、あっと驚くような額でした。桁が多かったわけではありません。少なかったのです。つまり、漠然と「これくらいはかかるんじゃないか」と予想していた額の十分の一以下でした。毎月社会保険料を払っていながら、この「お金のリテラシー」のなさといったら。おのれの不明を恥じました。

細君は「国民健康保険」の被保険者で、入院初日に病院から「市区町村役場の保健課に連絡して『限度額適用認定証』を取得するといいですよ」と勧められました。それまでは全く知らない制度でしたが、これは「交付を受けて医療機関の窓口に提示することで、医療機関ごとにひと月の支払額が自己負担限度額までとなる」というものです。

国民健康保険協会けんぽ・組合健保など、いずれの被保険者も申請できるそうですが、国民健康保険中央会の公式ウェブサイトには、不思議なことにあまり詳しい解説が載っていません(なぜでしょうね?)。とりあえず私が参考にした世田谷区のページはこちらです。

www.city.setagaya.lg.jp

仕事が忙しくて、役所に直接出向くことができなくても、郵便のやりとりで対応してくれました。全国健康保険協会協会けんぽ)のウェブサイトにも、詳しい説明が載っています。

限度額適用認定証をご利用ください | 広報・イベント | 全国健康保険協会

高額療養費制度

実はこれも初めて知った(ふたたび不明を恥じています)のですが、公的医療保険制度には「高額療養費制度」というものがあり、医療機関より請求された医療費の全額をいったん支払ったうえで申請すれば、自己負担限度額を超えた金額が払い戻されるようになっています。とはいえ、一時的にせよ多額の費用を立て替えるのは大変。この時、上記の「限度額適用認定証」の交付を受けて医療機関の窓口に提示すれば「医療機関ごとにひと月の支払額が自己負担限度額までとなる」のです*1

高額医療費制度については、同サイトのこちらのページが分かりやすいです。

nurseful.jp

厚生労働省のページも載せておきましょう。

www.mhlw.go.jp

医療保険って何だったんだ

細君の場合、くも膜下出血としては発見が早く、手術が成功し、予後も一度水頭症に陥って再手術をした以外は順調に回復して社会復帰できましたから、かなり幸運だったと思います。それでも都合二ヶ月近い入院(ICUを含む)と二度の大手術を経たものの、「限度額適用認定証」の交付を受けて最終的に「高額療養費制度」を利用できたことで、トータルの医療費は驚くほど少なくて済みました。国民皆保険、すんごい。若い頃からきちんと毎月保険料を支払ってきたんですから、当然ではありますけど、それでもやっぱり、ありがたかったです。

でも逆に思ってしまったのは、「公的医療保険以外に、保険会社などから販売されている医療保険商品って、何だったんだ?」という疑問です。テレビCMなどでも「もしもの時の……」とか「保障が一生涯続く」とか「高度先進医療に対応するため」などと大宣伝が打たれていますよね。私もかつてはそうした民間の医療保険に入っていたのですが、フリーランスで稼働していた頃、暮らしにおける毎月の固定費を抑えたくて、全部解約してしまいました。

もちろん個々人の年齢や病状、それに家族構成や仕事、住んでいる場所などによって状況は千差万別です。だからひとしなみに語ることはできないのですが、こちらのページにある「高い医療費を支払うことを恐れて、医療保険を検討する必要はない」というアドバイスは一考に値するのではないか、と思いました。

nurseful.jp

高額療養費制度を利用すれば、ひと月あたりの医療費は8万円+αで済む」というの、うちの場合はまさにその通りでした。そして「医療費のためにだけ確保しておける貯蓄が『150万円以上』ある人は、医療保険は必要ありません」というのも、それくらいだったら何とかなる、と、こう何だか気持ちが明るくなるような響きがありますよね。医療保険に掛け捨てるお金があるなら、その分をそれこそ「もしもの時」に備えて積み立て投資にでも回した方がよいのかも知れません。

*1:つまり、一時的な高額支払いが大丈夫なら、「限度額適用認定証」の交付を受けずに、最終的に「高額療養費制度」を使えばよいということですかね。