- 作者: 清水美和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/01
- メディア: 新書
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『中国はなぜ「反日」になったか (文春新書)』の続編。前著が胡錦濤政権成立以前の日中関係史を概説したものだとすれば、今回は成立後から直近までの状況にスポットを当てている。
つい先日、李肇星外相がナチスやヒトラーを引用して靖国神社参拝問題を批判し、日本側も強い反発を見せている。そんな中で東シナ海の天然ガス田開発に関する協議など開いても、そりゃ平行線だわなあ。本当にもううんざりするくらいにお互いがばうばう吠え合う昨今の状況を、この本ではまずこう前提づける。
問題なのは靖国をめぐる日中両国の強硬姿勢が両国指導部の「高度な戦略的判断」に基づくのではなく、それぞれの社会で不満や不安を強める民衆の排外感情、強硬論に迎合する形で打ち出されていることだ。
そしてアジアカップサッカーでの反日暴動、呉儀副首相の「ドタキャン」騒動、日本との関係改善を提唱した『対日新思考』への逆流、西安大学事件、そして昨年の大規模な反日デモなどを論じながら、共産党内の対日強硬派の存在、なかんずく江沢民とその一派の影響を浮き彫りにする。また胡錦濤政権成立直後に発せられたメッセージを正確に読み解けず、情勢の判断を誤り、相手と共同で今日のような状況を作りだした日本側の非も指摘されている。
昨年四月二十三日のバンドン会議五十周年記念会議の際、小泉首相と胡錦濤国家主席が会談し、その後の記者会見で胡錦濤は日本との関係改善に意欲を見せる。ところがその直後の五月四日、江沢民が南京大虐殺記念館を突然訪問したという。場所も場所なら日時もよりによって“五四”だ。露骨だなあ、江沢民。しかもその直後の五月二十三日には例の「ドタキャン」騒動が起こっている。なるほど、共産党最高指導部内で対日強硬派が勝利したと著者が判断するわけだ。
となると当分「うんざり」な日々は続きそうだが、ま、とりあえず個人的な不安(仕事とか生活とか将来とか)のはけ口を排外的な民族主義や攻撃的な言論に求めるようなことだけはしたくないと思う。
日本と中国のインターネットに見られる、互いの国に対する若者たちの書き込みを見ると、中国が憤激、日本は冷笑と、書き込みの「作風」に違いはあるものの、その排外性と攻撃性は共通している。
その通り。「作風」なんて言い得て妙。