昨年の台湾大統領(総統)選挙前日に陳水扁が狙撃された“三一九槍擊案”。今週、各メディアがこの事件の「容疑者を特定」と大々的に報じた。
……が、この人物がすでに自殺していたため、「疑惑の銃弾*1」を主張する人たちを中心に議論が沸騰している。“死無對證(死人に口なし)”、でっち上げじゃないのかというわけだ。
で、今日の《聯合報》に載っていたのが“一不四没有”。これは野党議員が立法委(国会)の質疑で使ったパワーポイント画面で、“四不一没有”をもじって特捜班の発表を皮肉ったものだ。わはは、台湾の立法委員(国会議員)はプレゼンテーションが巧みだね。
“四不一没有*2”というのは、陳水扁が二〇〇〇年の就任演説で大陸との関係について述べたくだりが後に政治用語化したもので、
只要中共無意對台動武,本人保證在任期之內,不會宣佈獨立,不會更改國號,不會推動兩國論入憲,不會推動改變現狀的統獨公投,也沒有廢除國統綱領與國統會的問題。
中共が武力を行使する意図がない限りにおいて、私は在任中に独立を宣言せず、国名を変更せず、二国論*3を憲法に盛り込まず、統一か独立かといった現状の変更に関する住民投票は行わず、また国家統一綱領*4や国家統一委員会*5を廃止することもいたしません。*6
というもの。
いっぽう、これをもじった“一不四没有”というのは、
沒有槍枝/沒有人/沒有遺書/沒有黃夾克/不符合科學辦案條件
銃撃に使われたピストルが見つかっていない/容疑者がすでに死んでいる/遺書が残されていない/黄色のジャンパー*7が見つかっていない/よって科学的な捜査というにはほど遠い
なんだそうだ。
批判勢力は、陳水扁が就任後、しないと言っていた住民投票を行うなど(名目は異なるのだが)「独立色」を強めており、“四不一没有”が骨抜きになっていると主張している。そういう背景をふまえつつ“一不四没有”という言葉の組み替えを使うことで、皮肉が効いてくるというわけ。