インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

食品ロスについて

十月一日に施行された「食品ロス削減推進法」を受けて、東京新聞の「考える広場」に三人の専門家が意見を寄せていました。

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お三方のご意見はそれぞれに説得力があるのですが、国や自治体、食品事業者の責務もさることながら、やっぱり問題の根本は私たち消費者の意識にあるのだという思いを新たにしました。同法律には「消費者の役割」として「食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、食品の購入又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとする」と謳われており、「教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及」を図るとされています。

でもこれ、理念として謳うことはできても、実際に人々の意識にまで根を下ろしてもらうためにはかなりの困難を伴いそうです。ジャーナリストの井出留美氏によれば「食品ロスの半分近くは家庭から出ています」ということで、われわれ消費者の意識が一番のネックなのですが、例えば食品ロスを防ぐためスーパーの棚に欠品があってもよしとする意識が広く共有できるだろうかと考えてみたら……う〜ん、棚に欠品があるのはかなり異様な状態と感じるはずです。私もついついそう感じてしまう。欠品があるのは台風とか地震などの自然災害のときくらいで、平時に欠品があったら「なんだよ、この店は」と不満を覚えるのではないでしょうか。でも、そういう意識から変えていかなければ食品ロスはいつまで経っても減らしていけないんですね。

もうひとつ、食品の賞味期限という問題もあります。これも食品ロスを生む一因になっているのだそうですが、井出氏は「賞味期限ぎりぎりまで商品を棚において売る社会実験」を紹介されています。この実験では食品ロスが10%減ったとのことで、つまり消費者は賞味期限をそこまで気にしていないという結論で興味深いのですが、もし棚に賞味期限の異なる同じ商品が並んでいたら、私たちはどういう行動を取るでしょうか。豆腐とか卵とか肉や魚とか……。

私はスーパーではいつも、賞味期限が迫って値引きになっているものを好んで買い求めます。でも値引きになっていない場合、つまり同じ値段なのに賞味期限が異なっていたらどうします? そういう場合私は賞味期限の短い方から手に取って買います。賞味期限が迫っていて、見た目に「これはちょっと」という場合は、その食材を買うこと自体あきらめちゃいます。要するに「新しい方から買う」ということをしないようにしていて、それは食品ロスを少しでも回避できるかなと思うからなのですが、周囲の知人や同僚に聞いてみたら、ほぼ全員に驚かれるか「それはまた殊勝な」と変な感心のされ方をしました。

つまりみなさん「賞味期限の日付を確かめて、新しい方から買う」ということなのです。「同じ値段だったら、古い方を買うのは損じゃない?」って。そうなのか。確かにスーパーでは、卵や牛乳などのパックを、棚の一番後ろから取ろうとして不自然な姿勢で腕を突っ込んでいる方がけっこう多いです。肉のパックも手前から「発掘」するようにどんどん取り除いていって、一番奥の物を引っ張り出している方も。一度確かめてみたことがあるのですが、すべてのパックが同じ賞味期限でもやっぱり一番奥から取りたがるんですね。

私はこういう行為は単に「はしたない」「みっともない」と思いますけど、こういった自分だけ得をすればよいという発想から脱却して、そういう行為が回り回って食品ロスを生むことになるのだという想像力や自制力を多くの人に持ってもらうのはかなり難しいでしょうね。これはもう世界観とか哲学とか教養、あるいは信仰みたいな領域であって、「教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及」だけではなかなか改善には結びつかないのではないかと。

それでもまあ私はなるべく食品ロスを減らす行動を選択していきたいと思います。食品の買い方や食べ方もさらなる工夫が必要ですね。とりあえず上記の記事で魚柄仁之助氏が紹介されていた「塩ワカメと昆布を切ったもので白菜をもんだらいいじゃないですか」ってのをやってみましょう。これ、ネットを検索してみたらほんとに「まるで自分が発明したみたいに周囲に教えていた人」がたくさんいて、思わず笑いました。