インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

しまじまの旅 たびたびの旅 98 ……ホテル・スオネンヨキ

カヤックツアーを終えたら、夜の七時過ぎ。北欧の夏は昼間が長いので、七時過ぎでもかなり明るいですが、たぶん疲れるだろうなと事前に予測して、国立公園から一番近い(車で30分くらい)小さな街のホテルを予約しておきました。スオネンヨキ(Suonenjoki)という街にひとつだけしかないという(ガイドさんによる)、その名も「ホテル・スオネンヨキ」です。

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事前にメールで連絡が来ていて、「着いたら暗証番号を押してホテルに入り、そのまま部屋に入って。鍵は部屋のドアに差してあるから」とのこと。チェックインやチェックアウトはどうするんでしょうか。ホテルの裏の駐車場に車を止めて、そのまま建物の三階にあるホテルへ。この暗くてちょっと怪しげ(失礼)な雰囲気は……思わず「You can check out any time you like, but you can never leave.(いつでも好きなときにチェックアウトできるけれど、二度とここを出られない)」というイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を思い出しました。

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部屋の中も適度に場末感(またまた失礼)が漂っていますが、とにかく疲れていたので、シャワーを浴びてすぐに寝ました。共用サウナもあったので入ってみたかったんですけど、あまりに疲れていてあきらめました。壁にはかなり古い何かのスポーツチームの写真が何枚か飾ってありました。フィンランド語を読む気力もなくて何のスポーツだか確認しませんでしたが、このスオネンヨキの代表チームらしいです。みなさんズボンの腰の位置が異様に高くて、全員「気をつけ!」の直立不動で写っているのが時代を感じさせました。

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翌朝、周囲を散歩してみると、ホテルの近くで朝市が立っていました。野菜やベリー類を売っているお店がいくつか。そういえばホテル・スオネンヨキの看板もそうですが、この街はあちこちでベリーの絵を見かけました。もしかするとベリー類が特産なのかもしれません。フィンランドはどこでも野生のベリーが摘み放題みたいな国ではありますけど。

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ホテルの部屋のクローゼットに小さな鍵がかけてあって「一階のジムが使用できます」とのこと。旅行中も体幹レーニングと腕立て伏せなどは継続してきたので、ジムに出かけてみましたが、これは……かなり本格的なジムで、ホテルによくあるマシンが二つ三つといったような「おざなり」な作りではありません。あとから分かったのですが、これは地元の人も利用するトレーニングクラブで、ホテルと提携して宿泊客にも開放していたんですね。

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宿泊代に含まれている朝食を食べに食堂に行ったら、受付の女性が「食べ終わったら宿泊客カードを書いてください」と言ってきました。なるほど、ここで宿泊代の支払いをするわけですか。この女性とは英語とフィンランド語でいろいろ話をしました。「日本にムーミンのテーマパークができたんでしょう?」と、やけに日本にお詳しいと思ったら、彼女は15年くらい前に「日本人の彼氏がいました」とのこと。旅行者の日本人と知り合って、その後しばらくつきあっていたそうです。

私が「日本の東京から来た」と言ったら、「東京に行ってみたい」。
「ここと違って、騒がしいし、人も多すぎますよ」
「でも私はずっとこの街にいるから。ここはつまらなくて……」

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う〜ん、確かに、私みたいな旅行者にはこういう小さな街がかえって愛らしく感じられますが、それは旅人のノスタルジーに過ぎないですよね。車で五分もあれば通り抜けられるくらい小さくて、教会とスーパーマーケットと小さな映画館がひとつといった感じの街です。田舎に住んでいて、そこからなかなか出られない状況を背負っている中で、都会の喧噪がどれほど魅力的に思えるかは、私にも体験があるのでよく分かります。

でもホテル・スオネンヨキ、最初の印象と違ってとても過ごしやすいホテルでした。怪しげとか場末感とか言って、ごめんなさい。