インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

どうして私なんかに相談してくるのかな

教師という職業を長年(といってもほんの15年ほど、それも断続的にですが)やっていると、学生さんから、それも卒業後しばらく経ってから様々な相談を受けることがあります。それは学習上の悩みであることも多いですが、もっと重い、例えば就職についてとか、進学についてとか、人生設計についてとか、あるいは家族との関係についてだったりすることもあります。なかば「人生相談」に近いんですね。そうした相談のメールやショートメッセージやLINEをけっこう受け取るのです。

私自身は、仕事についても自分の生き方についてもそんなに自信があるほうじゃない、というかいつもバタバタと必死に生きているので、どうして私なんかに相談してくるのかなと思うことがあります。そんなに頼れると思われているのでしょうか。人生相談だったら私などよりもっと近しいご家族とかご友人に相談した方がよさそうですが、近しすぎるとかえって相談しにくいのかもしれません。それで家族や友人の次くらい日常的に顔を合わせている教師に相談するのかな。

cakes で連載されているコラム「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」では、写真家の幡野広志氏が多くの人から人生相談のメッセージが届くことに対して、こんなことをおっしゃっています。

さいきん少しだけぼくに質問をしてくる理由がわかってきた。相談を受けるとここぞとばかりに、相談者のことを否定して自分の考えを押し付ける人がいる。場合によってはそのまま説教や批判されることや、昔はさぁ~とまったく役に立たない過去の話をしだす人がいる。


ちなみにここでいう昔って、縄文時代のころの話でも江戸時代のころの話でもなく、その人の若いころの話です。彼らはただ自分の話をしたいだけなんです。ぼく自身も過去に先輩などに相談して、これをやられて嫌になった記憶がある。そういう人には二度と人生相談をしていない。こういう人が少なくないのだ。だから周囲に相談できる人が見つからず、ガン患者に人生相談をしてしまう。

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なるほど、やはり周囲に相談できる近しい人がいないので、私に相談してくるということなのかもしれません。

ただ、興味深いのは、そうしたご相談のメールなどに回答をしても、それっきりで返事が来ないことが多いという点です。ショートメッセージやLINEでは話しにくいから(この辺が「おじさん」的です)メールで、とメールアドレスをお教えしても、その後メールが届くことは少ないです。私に相談してみたものの、期待したような回答じゃなかったから「ああ、この人に頼ってもだめだ」と思って他の人に相談しているのかもしれません。

あるいは幡野広志氏がおっしゃるように、「ああ、この人は自分の考えを押しつけたり、過去の自分のことばかり語りたがってる」と思ったのかもしれません。私としてはそんなつもりはなく、相談にできるかぎり誠実に答えようとはしているのですが、基本的に「自分で決め、自分で解決すべき」だと思っているので、そういうスタンスがメールなどの文面ににじんでいるのかもしれません。それが素っ気ない返事に感じられるのかなと思います。

キャリアコンサルタントの資格を持っている細君によれば、相談者には大きく分けて二つのタイプがあるそうです。ひとつは自分で自分の気持ちを整理したいと思っていて、そのために相談という場を活用しようとする人。そしてもうひとつは相手に丸投げで「何かしてもらいたい」と思っている人。なるほど、相談してきて、それっきりお返事がない方というのは、その後者にあたるのかもしれません。他力本願で「何かしてもらいたい」。でも、最終的には自分で解決すべきことですよと言われて「それじゃない」と。

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https://www.irasutoya.com/2016/01/blog-post_340.html

ちなみに私自身は、あまり人に悩みを聞いてもらって自分の気持ちを整理しようとしたことはありません。もちろん人生の節々でいろいろな方にお世話になってきましたが、家族にも友人にも(友人があまりいないこともあるけれど)相談したことはほとんどなく、人に相談するよりはむしろネットを検索するとか本を読むとか(自己啓発本みたいなのも含めて)して、自分で決めて行動してくることが多かったです。

「それはアンタが強い人間だからよ」と言われることもあるのですが、私はむしろ弱い人間だからだと思います。人に相談できない・しないのは、自分の弱みを人に見せたくないというプライドの高さから来るんじゃないかと。そうやって自分の弱みをさらけ出して、あるいは腹を割って話すことができないがゆえに、親友と呼べるような存在も極端に少ないのだと思います。