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いつか役に立つことがあるかもしれません。

「華人のLINEやチャットの返信は日本人より格段に速い」問題

華人(チャイニーズ)のメールやLINEやチャットの返信は日本人より格段に速い。留学生クラスで「自分の国と日本とで、違いを感じる風俗習慣は何ですか?」と聞いたら、日本人は返信が遅いという答えが返ってきたという問題。別の華人留学生クラスで聞いてみたところ「日本と違って、仕事中にLINEやチャットのためにスマホ操作するのをあまりはばからない文化だからではないか」という意見が出ました。おお、個人的にはそれ、大いにうなずけます。

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確かに日本では、会議中にスマホいじるのはちょっと……みたいな空気というか同調圧力がありますが、華人のみなさんはそれはそれ、これはこれとしてガンガン使い倒してるような気がします。それともうひとつ、年配のお偉いさんが、かなり重要な話であってもチャットで済ませちゃうことあり、という文化もあるような。広東省出身の留学生は、省長(日本の都道府県知事のようなもの)クラスでも意見のやり取りにWeChat使うのは別に不思議でもなんでもない、と言っていました。

日本の政治家やお役人はどうなんでしょう。そもそもスマホをあまり使ってらっしゃらない? やっぱり大事な話はメール、いや、やっぱり「会食」しながら、もしくは「クラブ(DJがいないほう)」でですか?

それはさておき、華人と仕事すると意思決定の速さが日本とかなり違うとよく言われるのも、その一端にはこういう違いがあるのかもしれません。これは先日同僚から聞いた話ですが、東京のとある自治体主催の在日外国人向け日本語教室について「今後は授業をオンラインに切り替えたいので、ついては相談のため来庁されたし」ってお申し越しがお役所の担当者からあったそうです。大事な話はやはりじかに会って……という習慣はなかなか変わらないのでしょうか。

それでも、コロナ禍で日本でもビジネスチャットツールが普及し始めています。私も在宅勤務中はGoogleのハングアウトで同僚と意思疎通しています。会議や授業でもZoomのチャットで資料を送ることが多い。オンライン環境は、まだまだハード面での遅れが目立っていて、画面の大きさから資料が一覧しにくいとか(私はプラス老眼で見にくい)、一覧できるようにプリントアウトして結局ペーパーレスになってないとか、学生さんなど家にパソコンもプリンタもなくスマホだけで授業を受けているとか、あちこちに改善の余地がまだまだあります。それでも今次のコロナ禍は、仕事や学習のやり方が大きく変わっていくきっかけを作りました。これからもどんどん変わっていくでしょう。

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https://www.irasutoya.com/2014/10/sns.html

ところで、華人留学生のみなさんに「チャットやLINEなどより電話で話したほうがはやくないですか」と聞いたら、「電話はかけて、相手が出て、その時間を共有しているのが『めんどくさい』」んだそうです。なるほど、要はこま切れの時間の中で、自分の発信を自分本位にコントロールできるってことですよね。でもそれだけに、返信も可及的速やかに行われてほしいと思う。実に華人らしいリアリスティックな発想だと思います。日本の私たちはまだそこまで行っていないから、華人のみなさんから「返信が遅い」と言われるのでしょう。でも私たちも、ことにお若い人たちがそこに追いつくのはすぐなのかもしれません。