先日の東京新聞朝刊に、木ノ下歌舞伎主催の木ノ下裕一氏がコラムを寄せていました。毎回楽しみに読んでいるコラムですが、今回も落語に出てくるという「箱根山、駕籠に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」との言葉がいいなと思いました。社会はさまざまな人々の営みでまわっているというたとえだそうです。
そう、私もできるだけ誰にも頼らず、自立して生きて行こうとはしていますけど、実際には自分もさまざまな人々の営みによって生かされているんですよね。
家に引きこもって、人や社会との交わりをできるだけ断とうとしている人だって(私も大学生の時に一時引きこもっていました。それで留年しました)、ライフラインが使えるのはどこかで誰かが働いて管理してくれているからですし、食べ物や飲み物だって完全に自給自足することは不可能です。村人とのつきあいを嫌って山の上に住んでいる「アルムおんじ」ことハイジのおじいさんだって、チーズやヤギなどの交易のために、定期的に村に降りて来ざるを得ないのです。
木ノ下氏がおっしゃるように「自分が見知らぬ誰かの草履を綯っているという誇り」があればこそ、毎日の労働にも耐えられるし、他人への寛容も生まれてくるのかもしれません。みんなお互い様ですし、持ちつ持たれつなんですから。
というわけで、今日ようやく確定申告を済ませ、私にとっては少なくない税額を納めてきました。いくつかある勤務先のうち「主たる給与」を得ている所で年末調整が行われ、どーんと諸々の税金がさっ引かれていますから、その他の「従たる給与」を得ている部分はすっぽかしちゃえ……などというよこしまな考えが浮かぶ(それも毎年)のですが、もちろん「従たる給与」が年20万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。
まあこうやってきちんと税金を納める(当然なんですけど)ことで、私も社会の一員として「誰かの草履を綯っている」ことを実感できるのですし、税金の使われ方についても意識を向けるようになるのですかね。