インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

中年になってからの歯列矯正

私は40歳を過ぎてから「歯列矯正」をしました。ときどき人から「中年になってもできるの?」と聞かれることがあるので、簡単にまとめてみようと思います。

歯列矯正は子供がするもの?

歯並びを直すというの、成長過程にある子供の頃だけ話だと私も漠然と思い込んでいました。その一方で、若い頃から自分の歯並びがあまり好きではありませんでした。前歯、特に上の片方の歯が極端に前に出ていて、唇を閉じても時々歯が見えることがあったのです。

笑うときに歯が見えるのもなんとなく気になって、軽いストレスを感じていました(自意識過剰ではありますが)。で、あるとき履歴書用の証明写真を撮ったら、歯が見えた状態で写ってしまって、それで一念発起して歯列矯正について調べ始めました。

調べてみて分かったんですが、歯列矯正は大人になってからでもできるんですよね。私のように40歳という「高齢」になってもできるのかどうか分からなかったので、ネットで何件か歯列矯正の専門医を探して、受診してみました。

歯科医を選ぶ

都合3軒ほど、歯科医を「はしご」しました。セカンドオピニオンを聞くのが大切だと思ったからですが、最初に訪ねた歯科医があまりにも「営業的」で、ちょっと身構えてしまったからでもあります。歯列矯正はそれなりのまとまったお金が必要で、歯科医にとっても「大きな商売」なのでしょうね。その歯科医は受信後もDMを送ってきましたし、診察室もかなり高級なサロン的雰囲気で、なるほど歯列矯正というのはそういう「セレブ的(?)」な世界の一端なのだなと感じた次第です。

結局、目黒区は洗足にあるこちらの歯列矯正専門の歯科医院を選びました。

www.senzoku-square.com

自宅からは遠かったんですけど、料金が比較的良心的だったのと、駅前で便利だったこと、先生が歯列矯正の「認定医」に加えて「指導医」の資格もお持ちだったこと、最初の診断で現在の状況を分かりやすく説明してくださり、今後の具体的な治療案も提示してくださったことなどが決め手になりました。

認定医:5年以上の矯正治療経験があり、審査に合格して得られる資格。
指導医:12年以上の矯正治療経験があり、認定医取得後に大学病院で3年間の教育歴がなければ取得できない資格。

ここの先生はその後「専門医」の資格も取られたそうです。「認定医・指導医・専門医」については、こちらをどうぞ。

http://www.senzoku-square.com/japan_super_orthodontists.html

費用

ホームページによると通常の歯列矯正の場合「¥650,000〜¥750,000」とのことです。私が受診したのはもう10年以上前ですが、確かに合計でこれくらいの費用がかかりました。う~ん、まあ、お安くはありません。また、歯列の状態によってはこれよりもかかる場合もあるとのことです。

私はその直前に台湾へ長期派遣で赴任していて、そのときの給料+海外派遣手当などをまるまる貯金していた分でまかないました。田舎のへんぴな場所にあるプラントでの「実質24時間勤務」だったので、お金を使うところがなかったのです。

治療期間

このブログにも「治療記」(カテゴリーの「歯列矯正」)を書いていましたが、さっき確かめてみたら歯列矯正の装置をつけていた期間は約2年でした。その後「リテーナー(保定装置)」という、歯列が戻らないように固定するマウスピースのようなものをつけていました。このリテーナーは現在でも、夜寝るときに装着しています。また現在でも半年に1回通院して、定期検診を受けています。虫歯予防にもなって助かります。


暮らしや仕事への影響

歯列矯正の施術は様々な種類がありますので、詳細は各歯科医のウェブサイトなどにあたっていただくとして、私が実際に歯列矯正の施術中(特に矯正装置が歯に装着されている段階)に感じたことを簡単にまとめます。

・矯正装置

一般的な「マルチブラケット」と呼ばれる、歯の表側に装着する装置を選びました。いったん装着すると、約2年間つけっぱなしになります。表から見えないように歯の裏に着けるタイプや、透明なマウスピース状の装置もあるそうですが、いずれも矯正のスピードがやや落ちるそう。私はなるべく最短で矯正してしまいたかったので、スタンダードなタイプを選びました。このあたりは医師から詳細な説明があります。
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https://www.irasutoya.com/2014/04/blog-post_28.html

実際には途中で2回ほど一部が外れたので、緊急で装着し直してもらいました。装置が外れるとかなり危ない(ワイヤーや装置の一部で口腔内を傷つける恐れがある)ので緊急の処置が必要ですが、遠方への出張中にそういうことが起きても、地元の歯科医で何とかしてもらう……というのはかなり難しそうで、これは一つのリスク要因ではあります。もっとも、普通に暮らしているだけではそうそう外れるものではないらしいので、多分私の「狼吞虎咽(ガツガツ食べる)」な食べ方に問題があったのでしょう。

装置をつけているとかなり目立つんじゃないかと思って、最初は抵抗がありました。特に当時語学教師や通訳業などをしていて、人前で話す機会が多かったからで、特に中国語の発音指導などでは、口の形や舌の位置、それに歯の開け方などを細かく実演するので、最初はかなり不安でした。また装置をつけると発音がしにくくなるのではないかとも思いました。

結果的には、ほとんどの心配が杞憂でした。生徒さんの中には「私も子供の頃に矯正していましたよ」と理解を示してくださる方も多かったですし、周囲の人たちも最初は「へえ、矯正中なんだ」と興味を示すものの、すぐに馴染んでしまいます。だいたい、自分があれこれ気にしているほど、人はそんなに私のことなど興味ないんですよね。みなさん自分の人生で忙しいんですから。

発音も、装着して数日はかなり話しにくくて「これは暫時廃業かしら」と心配しましたが、すぐに慣れてしまいました。特段話しにくいとか発音しにくいなどということは、私についてはありませんでした。

・食事の問題

歯の表面にかなり複雑な形の装置がついているので、食事ごとの歯磨きは必須です。しかも装置の隙間や奥まで磨くために、普通の歯ブラシとは別に、歯科医で進められた細長い形の歯ブラシも併用していました。こういうのです。

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https://www.amazon.co.jp/dp/B0744J7MVP/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_gffhCb2CGVPJQ

また、あまり堅いものは食べられなくなります。装置が外れてしまう可能性があるからです。それ以外は特に制限されませんでしたが、カレーは食べませんでした。食べても別に問題はないのですが、装置を固定している半透明の小さな輪ゴムみたいなのがあって、それがカレー粉で黄色く染まってしまうからです(現在では改善されているかもしれません)。

また矯正開始当初はかなり痛くて、ものが上手く食べられないという状況もありました。それでもやはり矯正を続けるうちに慣れちゃいます。人間って、かなり特殊な状況でも慣れてしまえるものなのですね。

・痛みの問題

上記のように、装置を初めてつけた日はかなり痛くて泣きそうになりました。やはり「矯正」の名の通り、強引なことをやっているわけですから、仕方がありません。また装置の出っ張っているところが口腔内の粘膜などに当たることで、口内炎に似た炎症を起こすこともあります。そのための薬も処方されていました。

矯正中のかなりの時間帯は、夜寝る際にヘッドギア状のものを頭につけていました。これは主に装置と連結させて「加強固定(動かしたくない歯をしっかりと固定する)」ために使われます。これをつけて装置を引っ張っているときも、最初はじんわりとした痛みを感じてあまりよく寝付けず、苦労しました。でもこれも、じきに慣れてしまいます。

矯正を終えてみて

全体として、やはり歯列矯正をして本当によかったと思います。あのままコンプレックス(卑屈な、本質的ではないコンプレックスですが)を抱えて悶々としているより、矯正して思い切り話したり笑ったりできるようになったというのは、存外心理的に大きな効果がありました。もっとも、私はその後に介護疲れ(?)で顔面麻痺を発症してしまい、笑顔が作りにくくなっちゃったんですけどね。

また矯正後は顔の形というか雰囲気がかなり変わりました。そういう意味では歯列矯正もまごうかたなき「整形」ですね。私はもともと上下の歯列がいずれも前に出ている状態で、例えが適切かどうか分からないけど「犬顔」だったんですね。口の周囲全体が前に出ている感じというか。それが矯正後はかなり引っ込んだ形になったと思います。

また「あれだけ真剣に矯正に取り組んだんだから」ということで、歯の健康についてよく考えるようになりました。毎度毎度の歯磨きはもちろんですが、定期的な歯の健康診断に行き、幼い頃に虫歯治療で詰めた金属をセラミックに変えたり、PMTC(専門家によるクリーニング)を受けたりするなどして、虫歯などの不健康な状態からはこの十年あまりずっと遠ざかっています。

歯列矯正をしても、また加齢と共に歯列は多少崩れていくのですが、今でも就寝時にはリテーナー装着を欠かさずにいるので、矯正完了から10年以上経った現在でも歯列はほとんど崩れていません。いくつになっても健康な歯できちんと食べることができるというのは何物にも代えがたいものなので、とても満足しています。

歯列矯正には様々な方法があって、健康な歯を抜いてそろえる(私はこの方法で都合四本抜きました)施術や、それは不自然なのでなるべく歯を抜かないで行うと謳っている施術など、多種多様です。またその方の歯列の現状によっても方法や期間や金額などもかなり違ってくるので、まずは信頼できる医師を探して、カウンセリングを受けるところから始めるとよいと思います。