インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

通訳スクール冬期講座

  二週間ほど様々な仕事*1が折り重なるように押し寄せてきて、ものすごく忙しかった。今日は久しぶりにほとんど何も予定がない休日。朝のジョギング(というより散歩に近い)をさぼって九時ぐらいまで寝てしまった。

  昨日、一昨日は某通訳スクールの冬期講座で講師。
  教材はスクールから指示された式辞挨拶。最初にシャドーイングやリプロダクションやクイックレスポンスなどの練習方法を紹介して実践。実際に後から通訳してもらう式辞原稿を使ってシャドーイングをやリプロダクションをやり、出てくる重要な単語を使ってクイックレスポンスをやったので、逐次通訳はほぼ大丈夫かなと思った……のだが、かなり苦労しているようだった。というか、ほとんど訳出できない。
  このクラスは一応、通訳訓練を受けたことがあるか、実際に通訳をしたことがある方のためのクラスだったのだけれど、お堅い式辞通訳はかなり苦手なようだ。
  日本語ネイティブと中国語ネイティブが半々のクラスで、日本語ネイティブはお堅い中国語の聞き取りや記憶保持が弱く、中国ネイティブはフォーマルな日本語への訳出とやはり記憶保持が弱い。
  だもんで、急遽サイトラに切り替えた。実際の仕事でもよくあるようなシチュエーションということで、別の原稿を配って五分間でスラッシュリーディングをしてもらい、すぐに逐次通訳。これもずいぶん苦労していたようだ。
  日本語ネイティブは動詞や重要な単語をつかんで、それを中心に自然な日本語に組み立てる力が弱く、中国ネイティブはやはりフォーマルな日本語と、基本的な日本語の単語の知識が弱いようだった(漢語をそのまま読んでしまうなど)。それに両者とも訳出の際の「芝居っ気」が極端に足りない。
  もう一つ、自分で持ち込んだ「柔らかめ」の音声教材も使ってみた。こちらは話題が身近なことに加え、やはり実際の仕事を追体験する形で背景知識や重要単語の理解を行い、式辞よりもっと細かく切って聴かせて訳してもらったので、上手にできる方もいた。特に二日目は、別の教材(これも「柔らかめ」)を使って、一度細切れで逐次通訳をした後、もう一度今度は長めに切って訳してもらったら、みなさんそこそこ上手にできていた。なんとか逐次通訳として成立するレベルだと思う。
  まあ、実際には通訳前にここまで発言内容が分かっちゃってることなど、ほとんどありえないのだけれど。
  二日間という短期講座にしては、ちょっと総花的でしかも「手取り足取り」が過ぎたかもしれない。でもまあこの冬期講座は、本講座への入学の呼び水みたいなものだ(と思う)から、こんなところだろうか。……というより、この私が講師というのがそもそもかなり大胆かつ身の程知らずなんだけど。

*1:今数えたら七種類もあった。ほとんど「何でも屋さん」だ。