インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

「反日」解剖 歪んだ中国の「愛国」

  現地取材と当事者へのインタビューを積み重ねて書かれた、現在の“反日情緒”を概観する本。

  第一章にある「上海日本人留学生殺人未遂事件」のことは恥ずかしながら知らなかった。読んでいると、現地の公安や日本領事館の対応には底知れない恐ろしさを感じる*1
  またお互いへの知識や常識が欠如したままセンセーショナルな報道を繰り返す双方のマスコミに対しても、ネット上の無責任な反日・嫌中言説より数倍罪が重いと厳しい批判をしている*2
  そのほか、「愛国教育」に繰り返し使われる“抗日歌曲”や抗日戦争映画、ほとんど「エロゲー」な反日ゲームにトンデモシネマなど、オタク的・共産趣味的な論考に加え、日本兵専門俳優へのインタビューなどもあって、読みごたえのある本。
  題名だけ見ると『SAPIO』や『諸君!』によく登場するような「イデオロギッシュ」な主張なのかと思うし、実際この本に収められた文章のほとんどは上記二誌に掲載されたものなのだけれど(笑)、少なくとも『日中再考』のような本よりは冷静で、勉強になる。何より著者のきっちり是々非々な態度に中国への愛情が感じられてよい。

*1:中国の日本大使館や領事館の対応の悪さはつとに有名で、私もその「定評」を身にしみて感じた経験が何度もある。

*2:SARSの時もそうだったが、まるで中国全土・台湾全土がウイルスに汚染されているかのような報道が目立った。疑問に思ったのはNHKのとある番組。北京にいる日本人留学生を取材して、日本の実家へ電話をかけさせ、涙を流す様子を伝えるような演出をしていた。わざわざ現地へ行きながら、何を取材していたのか。ドキュメンタリー仕立てで不安を煽るヒマがあったら、もっと現地の実情を正確に伝えることに力を注ぐべきだ。