インタプリタかなくぎ流

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こもかぶり

金沢のお土産に「こもかぶり」を買いたいと思っていました。薄いどらやきのような生地のなかに、小豆餡と栗が入っている和菓子で、紐をたすき掛けしたような形状と、そこに挟まれているひとひらの海苔が特徴です。その形状ゆえに作り方がとてもユニーク。こちらにその動画があります。


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製造販売元の板屋さん金沢城址ちかくにあるのですが、あいにく定休日だったので金沢駅のなかに入っているお土産店街「あんと」で購入しました。お土産用とは別に自分で食べる用にも買ったので、さっそくいただきました。栗が甘露煮になっているためか小豆餡が甘さ控えめのあっさり味で、とてもおいしかったです。

こもかぶりの「こも」は漢字で書くと「薦」だそうです。推薦の薦ですね。冬の雪が多い金沢では、伝統的な土塀を雪による損傷から守るために、藁で作った「薦」を土塀に設置します。金沢の雪対策としては樹の枝折れを防ぐための「雪吊り」が有名ですが、「薦掛け(こもがけ)」も大切な作業なんだそう。こもかぶりはこの「薦掛け」を模したお菓子です。

それにしても「薦(こも)」と推薦の「薦(せん)」が同じ字だというのが面白いです。辞書によれば薦は「廌(ち)」という動物(羚羊=レイヨウの一種らしい)が食む草を表す漢字だそうです。現代中国語でも“推薦(tuījiàn)”という言葉は使われていて(というか、もともと中国から来た言葉ですね)、中国語の辞書にあたると“薦”は“草蓆、草墊”、藁の筵(むしろ)みたいなものの意味だそうです。

つまり植物の名前が先にあって、のちにそれが推薦の薦、つまり「薦める」という意味にも使われるようになったということでしょうか。なぜ筵から薦める意味が生まれたのかは謎ですが、さあどうぞどうぞと筵の上に座るようすすめるところから来たのかな。花見の季節でブルーシートの上に座っている方々を多く見たので、そんな牽強付会をしてみました。


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