インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

Apple Musicもいらないかな

ヘッドホンの選択であれこれと紆余曲折があったあと、結局はAppleAirPods(第3世代)を購入することにしました。私は日常的にiPhoneを一台とMacBook Airを二台使っているのですが、さすがは同じ会社の製品だけあって、接続性が抜群に良いです。最初から迷わずこれにしておけばよかった……本当にいろいろと無駄遣いをしてしまいました。

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AirPodsを購入したら、Apple Musicが6か月間無料という特典がついてきました。ためしに申し込んでみたのですが、以前Spotifyを使っていて、その後退会したときと同じ感慨を抱きました。本当にありとあらゆるジャンルの曲を聞くことができ、Spotifyにはなかったアーティストの曲もあって一瞬テンションがあがりましたが、やはりこれ、私はいらないです。

Spotifyにせよ、今回のApple Musicにせよ、また映像系のNetflixにせよAmazon Prime Videoにせよ、サブスクで鑑賞し放題という設定の前で私は、ちょっとでも気に入らなかったコンテンツをどんどん飛ばしてしまうようになります。自分の前に無尽蔵のコンテンツがあるという設定そのものが、コンテンツに対してとても粗雑な態度を許してしまうのです。

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いえ、そういう楽しみ方がお好きな方はそうすればいいですし、そういう方にこうしたサブスクの諸サービスはうってつけだと言えるでしょう。でも私は、いくらでも自由に視聴できるという設定が与えられた瞬間に、なぜだか音楽や映像を楽しめなくなる自分に気づいてしまったのです。

SpotifyApple Musicにはおすすめ機能が充実していて、自分では思いもよらなかった方向ですごく面白いものに出会える可能性もあります。だから自分ひとりの狭い世界でコンテンツを探すよりも、もっと世界が広がっていいことばかりのように思えるのに、なぜ私は却って楽しめなくなるのか、不思議です。

あ、このおすすめ機能でちょっと驚いたことがあって、今回Apple Musicに登録したらすぐに「リプレイ:2015年」というプレイリストが生成されたんですけど、そこにはこの年に自分がよく聞いていたという楽曲がずらっと網羅されていました。もちろんこれは、私がApple IDでサインインしているときにスマホやパソコンで見たり聞いたりした「視聴履歴」をもとに生成されているのでしょう*1

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Appleのウェブサイトには「Apple Musicとプライバシー」というページがあります。これはiPhoneの「設定」→「ミュージック」の一番下の方にあるリンクからも読めます。この長文を全部読む方などほとんどいないと思いますが、読んでみるとけっこう怖くなるようなことがいろいろと書いてあります。

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例えば上述したおすすめのプレイリスト生成についてはこんな感じで情報が収集されています。

Appleは、お客様が再生した曲やビデオ、ご自身のミュージックライブラリやプレイリストに追加した曲やビデオ、お気に入りの、コメントした、または共有したコンテンツに関する情報を収集します。再生時に使ったアカウント、IPアドレス、デバイス、App、車載インタフェース、再生時にApple Musicで表示していた画面、再生時刻、再生時間などの情報が、Appleに通知および送信されます。

しかもこんなふうにも書かれています。

この情報は、Apple Musicのメンバーシップの期間中、またそのあとも財務報告の必要に応じて、財務報告関連の適用法によって指定された期間保持されます(期間は地域によって異なります)。多くの場合、保持期間は最低10年ですが、中国などの地域では30年になる場合があります。

30年! 最後の一文は、私みたいな職業のものにはあれこれよからぬ想像が働きます。さらには「第三者への開示」についても、レコードレーベル、出版社、アーティストはもちろん、サブスクを仲介している形になる携帯電話会社にも情報を提供するのだそうです。「個人を特定しない」範囲でと書かれてはいますけど、私たちがそれを検証することは不可能に近いですよね。

GAFAをはじめとする巨大ネット企業が私のネット上での行動を逐一蓄積・分析していて、そうした企業はおそらく自分の家族以上に私のことを知っているであろうことはいまさら言うまでもないことなのですが、やっぱり気持ち悪いなと思いました。

Apple Musicも解約することにいたしましょう。

*1:それに気づいて、スマホの設定画面で「視聴履歴を使用」をオフにしました(上掲写真を参照)。