参加要件が厳しすぎるとして話題になっていた東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集ですが、大会組織委員会が要件を見直したというニュースに接しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180607/k10011468441000.htmlwww3.nhk.or.jp
※2018年6月14日追記:上記のニュース、現在は削除されてしまったようです。公式Twitterアカウントからもリンク切れです。
東京五輪・パラのボランティア 「やりがいPRを」組織委 #nhk_news https://t.co/RJzIHkhCYo
— NHKニュース (@nhk_news) 2018年5月21日同じ内容の報道が時事通信には残っていますので、リンクを張っておきます。こちらもそのうち削除されるかもしれません。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018060801193&g=spowww.jiji.com
募集要項の表現をわかりやすく見直した結果、「10日以上が基本で、連続での活動は5日以内が基本」となったのだそうです。交通費についても「一定程度を支給する」とのこと。う〜ん「そこじゃない」感が満載です。炎天下のタダ働きは基本そのままですし、募集要項の表現も依然分かりやすくはないですね。要するに「5日働いて1日休んでまた5日の繰り返し」ということかな?
例えば2020年の東京オリンピックは2020年7月24日(金)~ 8月9日(日)の17日間ですから「5日働く+1日休み+5日働く+1日休み+5日働く」のサイクルでちょうど収まりますね……って、違〜うだろ〜!(古い)
しかもこれが最終案だそうです。これではまたSNSあたりで「炎上」しそうですが、組織委員会はこのまま突き進むでしょうね。一般の方の応募は低迷するかも知れませんが、組織委員会には強い味方、大学がいます。私は今後大学生を中心とした学生への動員がかかるのではないかと危惧しています。実はすでに何年も前からその準備が進められており、組織委員会と連携協定を締結した大学がこんなにあるのですから。
tokyo2020.org
実際に大学が、組織委員会とどんな「連携協定」を結んでいるのか興味があって、ネットで検索してみたところ、たくさんの大学が誇らしげに「協定書」を掲げていらっしゃいました。こちらの画像検索結果はその一例です。
拝見するに、協定書の内容はどの大学もほぼ同じようですね。例えばこちらは法政大学の協定書です。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会 大学連携協定締結式が行われました|法政大学
「連携事項」にはこう書かれています。
1)人的分野及び教育的分野での連携
2)オリンピック・パラリンピック競技大会に関わる研究分野での連携
3)オリンピック・パラリンピック競技大会の国内PR活動での連携
4)オリンピックムーブメントの推進及びオリンピックレガシーの継承に関する連携
大学らしく教育・研究分野での連携も謳われていますが、逆に「オリンピックムーブメントの推進及びオリンピックレガシーの継承」といった抽象的かつ曖昧な表現も盛り込まれています。私が「ボランティアへの動員」について危惧するゆえんです。
しかし学生さんだって生身の人間ですから、酷暑の真夏、炎天下での「タダ働き」にも物理的生理的な限界はあるでしょう。もし学生さんたちが一般の方々同様に消極的な姿勢を示した場合、そしてその規模が予想以上に大きかった場合、大学側はかなりの窮地に立つような気がするのですが、各大学は連携協定の締結時にそれを予測していたのでしょうか。
おそらく各大学は、半世紀以上も前の東京五輪における前例を踏襲しただけという認識でしょう。みんなで五輪を盛り上げる、それのどこが悪いの? 前向きでポジティブで若者にぴったりの「ムーブメント」じゃないですか……って。ですが今は社会通念も学生の意識も全く異なっているのです。ましてや様々なメディアを通してオリパラの裏側も知れ渡っている。大きなお世話かも知れませんが、大学の担当部署はこの先修羅場を迎えると思います。
いや「大きなお世話」などという他人事ではないのでした。今朝、私が勤務している学校に来てみましたら、校舎の前にこのような大きな看板が。
キタ〜!(超古い)実は、うちの学校も協定をしっかり締結しちゃってるんですよね(私は直接関係ない部門にいるんですけど、学校法人としては同じなんです)。私は前々から少しずつ根回し、もとい、注意喚起を行ってきましたけど、組織委員会が「最終案」を固めたいま、本格的に動員がかかってきたらトップダウンで学生さんたちにハナシが行くかもしれません。
特に私が担当している留学生のみなさんは、そのほとんどがマルチリンガル。「話せれば訳せる」という信憑が根強いこの日本にあって、安易に「通訳ボランティア」として使われないか心配です。もちろん参加不参加は個人の自由ですし、積極的に参加したいという留学生も中にはいるかも知れません。授業で聞いてみたらみなさん「その時期は夏休みで帰省してまーす」「タダ働きはイヤでーす」と頼もしいことを言っていましたが。
でも、気が進まないのに例えば単位などと引き替えにボランティアを、とか、教師も積極的に働きかけを、などという圧力がかからないかが心配なのです。生徒が出ないなら教職員が、とかね。いや、杞憂であれば本当にいいんですけれど。
Twitterでは「#Tokyoインパール2020」というハッシュタグが生まれています。私は今回の東京五輪を「インパール作戦」になぞらえるのは、確かにその無謀さにおいてその通りだなとも思うのですが、よそ様の国に迷惑をかけまくった同作戦でもあることですし、ちょっと不謹慎かなと思って使うのを躊躇しています。
一方で、もし本当に「動員」がかかったなら、これは現代の「学徒出陣」だなとも思います。奇しくも1943年(昭和18年)秋、明治神宮外苑競技場、つまり現在新国立競技場の建設が進むその場所で出陣学徒壮行会が開かれたんですよね。これも不謹慎のそしりは免れないかもしれませんが、私は「教え子を炎天下のタダ働きに送り込みたくない」です。ましてやそれが「話せれば訳せる」「通訳なんてボランティアで充分」という日本の社会通念を強化する類のものであれば、なおさら。
qianchong.hatenablog.com
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ううむ、ブログにこんなことばかり書いていたら、そのうち学校当局にも知れるでしょう。私がこの件に関するエントリを上げなくなったり、Twitterなどでつぶやかなくなったりアカウントが消えたりしたら、「きゃつもダークサイドに堕ちたな」と察してください。