抜歯したあとの傷口はなんの問題もなく治り、とうとう歯全体に矯正器具(マルチブラケット)を装着することになった。
最初に歯の汚れや歯石を取るためのクリーニング。そのあと一本一本の歯の表面を乾かしながら接着剤のようなものが塗られ、ついで「ブラケット」という矯正のためのワイヤーを固定する小さな器具を歯の表面に接着していく。そのあとワイヤーが通され、「結紮モジュール」というブラケットとワイヤーをつないで固定するゴムリングをぱちんぱちんとはめていって終了。さすが矯正専門医、手際がよい。
つけ終わった直後は、口の中にかなり違和感があるが、ほとんど痛みは感じない。
そのあと装置の説明と、歯磨きの仕方を教わる。ブラケットやワイヤーと歯の間がかなり磨きにくいので、専用の小さな筆先のような歯ブラシをもらう。
先生によると、これからだんだん痛みが増してきて、次の日の朝あたりが一番痛いのだそうだ。「男性のほうが痛みに弱いみたいでねえ、いつもこの時点で恨まれるんですけど、がまんしてくださいね」と言われる。
鏡を見ると、ブラケットが透明なプラスチックでできているせいか、思ったより目立たない。装置と唇の内側がこすれる感じがするが、言葉の発音にはほとんど影響がなさそうで安心した。
夜になっていくつかの歯が徐々に痛み出す。食事もかなりしにくく、特に食べ物がワイヤーにあたってぐいっと引っ張られるとかなり痛い。はあぁぁ……と落ち込みそうになり、酒を飲む。酔ってくると痛みがかなりやわらいだ。ヘッドギアを装置に連結し、寝る。
次の日の朝、我慢できないほどではないものの、歯全体に鈍痛がある。装置に触れている粘膜の一部が口内炎になりかかっているような感じ。特に痛い部分について、装置の上に「シリコンガード」という粘土状のものを貼りつけ、粘膜を刺激しないようにする。
ネットで歯列矯正の体験談を読んでいると「装着した当初はブラケットで口の中がざくざくきれて、口内炎できまくり」などという恐ろしい文章がそこここに。またもはあぁぁ……と落ち込みそうになる。痛みは一週間くらい経つとほとんど感じなくなってくるそうだ。頑張るのだ!