鉄条網と監視所つきの高いコンクリート塀に囲まれた海辺の殺風景なプラントで二年半、今日ようやく「出所」とあいなった。「もう二度と来るんじゃないぞ」とは言われず、渡された航空券は向こう一年間オープンの往復切符。また何度かはスポットの派遣でここに戻ってくることになるだろう。
正門の鉄格子をくぐって「娑婆」に出ても、「おつとめご苦労さんです」と並んで挨拶する黒服の男たちがいるわけでもなく、いつもの野良犬たちが「でーっ」とアスファルトに寝っ転がってしっぽだけ振ってくれる。ボスの「陳さん*1」に挨拶だけしてアパートに帰る。
アパートはもう何日も前から大掃除と片づけをしていたのでがらんとしている。本やCDを郵便小包で送ったら段ボール箱で十二個にもなってしまって、船便でも一万元近くかかってしまった。最後のゴミを出して、荷物のパッキングをして、べつにこれで食べ納めというわけでもないのだが牛肉乾麺と滷味を食べにいく。
帰りに、お世話になった*2裏通りのアパート前につながれている「ライオン丸*3」とスーパーそばの路地にいる“猟狗大爺*4”にも挨拶をしてくる。
みなさん元気で長生きしてください。