英語でも北京語でもいいのだが、日本人同士が外国語で話すというのはとてもおもしろい体験だ。畢竟母語ではないからそれなりに意識的かつ一所懸命に話すし、どこか芝居を演じているような高揚感があるのだ。かつて東京にある日本語学校で、大陸からの留学生同士が日本語で何気ない話題をおしゃべりしているのを見かけたときも、「やるな〜」と思った。
だもんで、大陸に留学したときは日本人と話すときも日本語を使うまいと思って、実行した。結果、会話能力は多少上達したような気がするが、ときどき初対面の日本人留学生に「あんた、日本人なのにどうして北京語で話すのよっっ!!」と怒られたりもした*1。
しかし、「ヤツは北京語しか話さないらしい」という定評がたつのは、留学中の語学習得にとってはプラスだと思う*2。いったんそういう定評がたてば、相手も最初から北京語で話しかけてくれるようになるからだ。もっとも、めんどうくさいと思う人もいるようで、日本人留学生がさささ〜っと私を避けるような感じになったりして、まるで大海を行くモーゼのよう。まあ私は三十路に入ってから留学したので、いまさら友達をおおぜい作って「青春をエンジョイ」などとは思っていなかった*3から、別にかまわなかったのだけれど。
*1:最初は韓国人留学生と思って話していたのが、途中で私が日本人だと気づくや、何だかだまされていたような気分になったらしい。それと、あまり初歩の段階からこれをやると、おたがい語彙が少なすぎてゼスチャートークみたいになり、意味がない。
*2:大学や大学院での研究のために留学する人はまた別だろう。私の場合は純粋な「語学留学」で、通訳や翻訳などということはまだほとんど念頭になかったし、留学するのはひとえに北京語の海に飛び込むためだった。だからそれこそ日本語を使うことそのものが「ナンセンス+もったいない」と思えた。
*3:それでも日本人留学生のなかにけっこう「同好の士(?)」はいて、今でも連絡をとりあう人も何人か。