フィンランドにアラビアという陶磁器メーカーがあります。北欧なのにアラビアってのが不思議ですが、その由来がこちらのウェブサイトで紹介されていました。
創業当時工場の周辺がスウェーデン人の別荘地だったそうで、遊び心で通りに世界の都市の名前を付けていたらしく、ちょうど工場のあるところがアラビア通りだったところに由来しているそうです。
——scope(スコープ)さんのウェブサイトから
へええ、そうなんだ〜。面白いですね。
最近のアラビア社は、なんだかとっても「ムーミン推し」なんですけど、私が一番ひかれるのは「バレンシア」というシリーズです。すでに生産中止になっていて、アンティークショップではかなりな高額で売られていますが、私は以前ネットであちこち探して、良心的な価格のところからいくつか購入したことがあります(写真はいずれも、ヘルシンキにある食器店・Astialiisaさんのウェブサイトから。こちらは品揃えがよくて、日本から通販でも買えて、対応がとてもスピーディかつ親切で、おすすめです)。
このシリーズも、以前書いたロイヤルコペンハーゲンの「ブルーフルーテッドメガ」同様に藍色の釉薬が魅力的ですが、同じ北欧でもたたずまいが全く違いますよね。ぶっとい筆でほとんど塗りつぶすように模様を描き、わずかに残った白地が軽妙なリズムを奏でているという、粋なデザインです。それでもどこか中国や日本の蛸唐草模様あたりを思い浮かべてしまうのは、東洋人の贔屓目かしらん。
アラビアで現在も販売されている製品では「トゥオキオ(=瞬間)」というシリーズがわずかにこの伝統を受け継いでいるようです。李禹煥(リ・ウファン、이우환)氏の抽象絵画みたいですよね。こちらは現行のシリーズなので、そこまでお高くありません。
アラビアの「バレンシア」や「トゥオキオ」に似たテイストで私が好きなのは、日本の白山陶器が作っている定番の「ブルーム」というシリーズです(写真は白山陶器さんのウェブサイトから)。最近このシリーズの「どんぶり」が出たのですが、私は中くらいのボウルをどんぶり代わりに使っています。どんぶりとボウルとでは若干デザインが違っていて、ボウルの方が内側にも南天みたいな模様がついていてカワイイんですよね。
白山陶器は、1958年からのロングセラーだというこちらの醤油差し(1296円!)がとても有名ですが、ほかにもとても抑制の効いた静謐な雰囲気の、素敵な器をたくさん世に送り出しています。
藍と白のこうしたシンプルな食器は、長く使っていても飽きが来なくて本当に重宝します。アラビアの「バレンシア」などアンティークにはなかなか手が出ませんが、白山陶器は良心的なお値段で普段使いにもぴったりだと思います。