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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

北京1966

ほん

 編訳者のおひとりと一緒に忘年会をやって、その時に「こういうのが出たんだけど」と頂いた本。『北京1966―フランス女性が見た文化大革命*1です。ページをめくって目に飛び込んできた写真にびっくりしました*2

 口絵として収められている40枚ほどの写真は、フランス人のソランジュ・ブラン氏がフランス大使館付き秘書として北京に滞在していた1965年から1967年の三年間のうち、1966年と1967年に撮られたものです。中国の近現代史に詳しい方なら、この年号を見て「また何と微妙な時期に」と思われるでしょう。毛沢東による文革の発動がまさに1966年ですから、これらの写真はあの大政治運動が暴発する直前から、暴発して運動が最も先鋭的だった時期に撮られたものなのです。
 ソランジュ・ブラン氏はジャーナリストではありません。というわけで、これらの写真は彼女が、異国の珍しい風景への個人的興味に誘われるまま、個人の小さなカメラで何気なく撮られたスナップに過ぎません。にもかかわらずこれらの写真に私が引き込まれたのは、ひとつには報道や宣伝のための写真とは全くテイストが違っているということ、もうひとつは、全ての写真がカラー写真だということです。
 モノクロ写真にはモノクロ写真のよさがあり、時にはカラー写真以上に雄弁であることも分かっているつもりですが、ことこの文革初期の写真群に関する限り、カラー写真であることが画面のリアリティを最大限に高めてくれています。いやもうそれはちょっと、気持ち悪いくらいに。
 個人的にいちばん「すごい」と思ったのは、写っている人々のたたずまいが、今と全然変わっていないところ。もちろん着ている服やヘアスタイルなんかが今とは全く違うんですけど、顔の表情とか眼差しとか、立ち方、歩き方、座り方とか、醸し出している雰囲気やオーラみたいなものが、現代の一般の人々と本当によく似ているんです。王朝時代ならともかく、半世紀ほど前の写真ですからそんなに変わるはずないと言えばそれまでなんですけど、なんだか中国大陸の人々のこの「変わらなさ」というものは、中国や中国人を理解しようとするときのひとつのポイントではないかとも思うんです。
 この本には写真の他に、当時文革の時代を生きた人々へのインタビューと、編訳者による40枚の写真一枚一枚に対して詳細な読み解きをおこなった対談が収められています。

*1:なぜかAmazonでは新刊本が売られていませんが……たぶんまだ正式な流通に乗っていないものと思われます。

*2:出版社のHPは[http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=1&products_id=100166:title=こちら]。