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インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

世界史のなかの満洲帝国

ほん

世界史のなかの満洲帝国
  著者のあとがきによると、東洋史の中にきちんと位置づけられた満洲帝国史研究はいまだ出ていないのだそうだ。「傀儡国家」の歴史書となれば、政治的思想的バイアスがかかってしまうのは避けられないからで、「日本の罪を告発する、罵声の飛び交うような本ばかり」だという。
  でもそうしたバイアスがかからない歴史書なんてあるのだろうか。この本は史実として確実な部分を踏まえることに力を注ぎ、強制連行や七三一部隊などの評価が定まっていない部分については全て保留としてあるのだが、これだって強いバイアスがかかっていると言われてしまうかもしれない。
  とはいえ、この本はとても読みごたえがある。満洲(と呼ばれた地域)の地理と歴史を古代から説き起こし、東アジアの民族興亡史をこまかく押さえていく。実際に満洲帝国の歴史に話がおよぶのは本の後半、五分の三近くになってからだ。なぜ満洲帝国ができるまでに到ったのか、日本人が大挙して満州に渡ったのはなぜか、この地を巡る各国の思惑、とくにロシア─ソ連の動きなど読みどころがいっぱい。
  蛇足1:大連という都市名はロシア語の「ダールニーヴォストーク(極東)」の前半分「ダールニー」を漢字にうつしたものだというのを初めて知った。へええ。
  蛇足2:この本には何度か「夫の岡田英弘」という言い方が出てくる。岡田氏の中国研究を引用した箇所だが、なぜわざわざ「夫の」とことわるのだろうね。