インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

グッドナイト&グッドラック

  午後の派遣仕事、家を出て電車に乗っていたところ、携帯に電話。あわてて下車して電話を受けると、お客さんの都合で急遽キャンセルということに。直前のキャンセルは仕事をしなくてもギャラが入るという契約なので、何だか気が大きくなって*1映画を見に行く。米ソ冷戦下にマッカーシー上院議員の「赤狩り」旋風が吹き荒れるアメリカのお話。
http://www.goodnight-movie.jp/
【ネタバレがあります】

  監督・脚本・助演をジョージ・クルーニーがつとめ、会社や国防総省の圧力に屈せずマッカーシー批判を行うCBSのキャスター・エド・マローをデヴィッド・ストラザーンという人が演じている。この方、どこかで見たような俳優さんなんだけど、たぶん出演作を見るのは初めてだと思う。
  スクリーンに女性があまり出てこず、この二人を軸にモノクロの画面で男たちのストーリーが淡々と進む。まるで『12人の怒れる男』みたい……って、ああそうか、ストラザーンはヘンリー・フォンダに似てる!?*2
  途中に挿入されるジャズが渋い。でも映画自体はコンパクトであっさりしていて、今ひとつピンとこなかった。エド・マローと彼の番組スタッフは、マッカーシー批判でかなり危うい立場に立たされるし、圧力に耐えかねたスタッフの自殺というショッキングな出来事もあるのだけれど、主人公にとってはそれほどの一大危機に見えないのだ。もちろんあれだけ毅然と政府の批判をできるジャーナリズムは素晴らしいと思うけれど。
  これに比べたら「かの国」の反右派闘争や文革での失脚劇のほうがもっと悲惨だ、と思ってしまう(まあ何も悲惨さ比べをする必要などないが)。この映画の迫力は当時の雰囲気を体験したアメリカ人でないと分からないのかもしれない。ただこの映画を見ながら、9.11のあとのアメリカ上下両院でブッシュ大統領に報復戦争行使の権限を与える決議を行った際、反対したのがバーバラ・リー議員たった一人だけだったという話を思い出した。あれだけ自由だ平等だ正義だと言っているアメリカも、頭に血が上っているときはかなり危ない。
  モノクロ画面が1950年代の雰囲気をよく伝えているのだけれど、あとひとつ、登場人物がみんなもうもうとタバコを吸いながら仕事をしているのも時代だなあと思う。これ、途中にKENTのテレビコマーシャル*3を挟み込むなど、クルーニー監督はけっこう意図的にやっているようだ。さてこの演出、彼の意図は嫌煙家としての皮肉だったのか、それとも愛煙家としての憂さ晴らしだったのだろうか。★★★☆☆。

*1:というところが貧乏人的発想だが。

*2:でもよくよく見たら、似てるのは髪型だけ。モノクロ画面だから余計似通っている気がしただけかも。

*3:現在じゃ考えられない。