インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

単騎、千里を走る。

  高倉健主演で話題になった張藝謀監督の映画。
【ネタバレがあります】

  田舎の土ぼこりを描かせたら右に出るものはいない(と私が勝手に思っている)張藝謀監督。この映画にはさらに雲南の雄大な山々や、奇岩の立ち並ぶ風景が加わって見ごたえがある。
  けれど物語自体には、『あの子を探して』みたいな胸のすく盛り上がりはほとんどない。高倉健演じる、ガンに冒された息子のために仮面劇をビデオに収めようと頑張る日本人の不器用な生き方がじくじくじくじくと続いて、終わる。そういや健さん、かつて「不器用ですから」って言ってたよね(^^)。だからとっても地味な印象の映画なのだが、いろいろ考えさせられるものがあったし、涙腺もゆるんでしまった。
  id:moli-xiongさんがすてきなレビューを書いてらっしゃるので私などが繰り返すこともないが、映画を見ながら、大陸の人たちとつきあうってどういうことなんだろう、と考えた。ふだん、日本に住んでいるチャイニーズ(日本人の考え方をよく知っている人たち)と、メディアに登場する大陸のこわもて政治家にしか接していないと、大陸の人たちのとらえ方を誤ってしまうのではないか――そんなことも考えた。
  それからこの映画には通訳者が二人登場する。ほとんど通訳できない通訳者(?)と、とてもていねいな通訳をする通訳者。前者が通訳しているとき(実際はほとんどしていないのだが)はじりじりするようなもどかしさを感じる。で、後者が登場するとふうっと救われたような気分になる。こういうふうに観客をのせていくあたり、張藝謀監督はあいかわらずうまいなあと思う。けれど、そのほとんど通訳できない通訳者がからんでいるシーンでも、言葉の伝達とは違う次元で気持ちが通じたり物事が前に進んだりするからおもしろい。
  かつて「私が作りたい映画は、ハリウッドのようなものとは違う映画です」と言っていた張藝謀監督。『HERO』や『LOVERS』よりもこういう映画のほうが張藝謀監督のすごみが出ていると私は思う。★★★☆☆。