インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

しまじまの旅 たびたびの旅 70 ……澎湖北海・憧れの灯台と砂州の島々

台湾の離島・澎湖の、そのまた離島を訪ねるツアー。先日行った「猫の島」虎井嶼に続いて、今度は「北海」と呼ばれる海域の島々を巡るツアーに参加してみました。最北端にある目斗嶼の灯台を目指します。

下の地図は、島と島の間隔が縦方向にぎゅっと圧縮されています。実際にはかなり離れた場所に点々と散らばっている感じです。

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https://travel.network.com.tw/main/travel/penghucounty/

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澎湖本島北部の「岐頭遊客中心」から出航して、最初に向かったのは鳥嶼の手前にある砂だけの島。この島は比較的最近出現したそうで、引き潮の時間には鳥嶼まで長い珊瑚の砂州「澎澎灘」が現れてつながるそうです。ガイドさんは「摩西分海(モーセの海割り)」と言っていました。

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ここに限らず、澎湖では貴重な自然環境をなるべく破壊しないよう、観光客の上陸を制限している場所が多いようです。ここも船から眺めるだけで次に向かいました。砂州も現在のところ立入禁止だそうです。

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鳥嶼の沖でガイドの若者たちが海からカゴを引き上げていました。前の日に仕掛けておいた蟹カゴで、ここで捕れた蟹はお昼ご飯で供されるんだとか。

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次に向かったのが險礁。「危険な」という名前に似つかわしくない、こちらも砂だけの島ですが、船を接岸させるのがなかなか難しいのでこの名前があるそうです。ここはドラマ『原味的夏天』のロケ地になったところで、撮影時に建てられた民宿のコテージが今も残っています。現在は改修中とのことで、ここも上陸はしませんでした。

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その先に長く伸びた砂州で有名な吉貝嶼があり、砂州では大勢の若者がマリンスポーツに興じたり、ドラマの主人公よろしく砂州を散策したりしていましたが、参加者の年齢層が比較的高い我々のツアーは沖から眺めるだけであっさりスルー。観光局の写真だけ貼っておきます。

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https://www.penghu-nsa.gov.tw/ScenicSpotDetail.aspx?Cond=1b4a87a6-6631-4e9b-b305-ecacd2f00364&DistrictCategory=cb31c85a-f4bd-420b-9aa2-fcfe9274fbb2

とはいえ、まったく砂州で遊べないのも不満が出ると思ったのか、船長さんが急遽ツアーを改変して北海の西端にある鐵砧嶼と姑婆嶼に向かいました。海上のツアーは天候などで海の状況が刻々と変わるため、こうやって船長の判断で改変が行われることがよくあります。

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鐵砧嶼は平べったい形の岩礁のみの無人島で、中央部に波が削り取ってできた洞窟があります。船長さんの絶妙のコントロールで舳先を洞窟につっこむというアトラクションを敢行。

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波もあるのでけっこう危ないですが、みなさん歓声を上げて洞窟の天井に触れていました。ミーハーな私も触れてきました。

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次に今日一番のおめあて、美しい灯台がある目斗嶼を目指します。この灯台は、日本が台湾統治時代(1895〜1945)に、最初に建てた灯台だそうです。

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孤島にすっくと立つ灯台の、何と凛々しいことか。そういえば余談ですけど、真っ直ぐに、勢いよく立ち上がっているさま、ないしは動きを「すっくと」と言いますよね。ところが、以前見つけた灯台の写真集では「すくっと」がタイトルになっているんですよね。


ライトハウス すくっと明治の灯台64基 (World architecture)

「すくっと」と言えるかなあ……とネットで検索してみると、どちらも「あり」みたい。勤め先の日本語の先生方にも聞いてみましたが、むしろ「すくっと」派の方が多かったです。う〜ん。

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閑話休題。ここではおやつのケーキが配られました。

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その後船は一路南下して、今朝がた海から眺めただけだった鳥嶼に上陸、ここでお昼ごはんになりました。

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お昼ごはん、といっても、海鮮のお粥と煮干しの副菜だけなんですけど……一緒のテーブルに座った若い台湾人カップルが「これだけ? 真的假的(マジかよ)!」と言っていました。まあでもお粥は美味しかったです。

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それにさっきカゴで採った蟹が蒸されて供されました。こちらはたっぷりあって、私たちのテーブルは人が少なかったのでたくさん食べることができ、台湾人カップルも機嫌が直っていました。

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そのあと電動カートで鳥嶼の高台へ。野生の山羊が群れていました。

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港に戻ると、地元の子供たちが海に飛び込んで遊んでいました。

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さらに船は隣の員貝嶼にも寄り、ここでは島一周の散策に出かけました。

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誰もいない光景がすてきです。

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引き潮の時間になったのか、沖に鳥嶼とそこから伸びる砂州が姿を現し始めていました。

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手前にある自然の石柱は筆の形をしているので「石筆」と呼ばれ、隣にあるくぼんだ地形の岩を「石硯」、この地方独特の黒い玄武岩からなる柱状節理を「石墨(目の前の海は墨汁に見立てるそう)」、そして沖に見える白い砂州は「白紙」ということで、ここは「文法四宝」が揃っているんだそうです(ややムリヤリですが……)。

で、かつては大学受験者がここまでやってきて合格祈願をしたのだとか。昔は大学の合格率がかなり低く、ここで祈願をするとかなりの高率で合格するので有名だったそうです。もっとも現在では台湾の大学も一部を除いて「全入時代」に入っているので、そうした祈願者も皆無になったと言っていました。

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岐頭の港に戻ってツアーは終了です。派手さはあまりない地味なツアーですが、なかなか味わい深いものがありました。たったひとつだけ、ツアーの最初から最後まで船長さんがマイクを握って大音量で喋り倒すのがちょっと……すごく話が上手だし、まるでお笑いバラエティのMCみたいに笑いを取るんですけど、もうちょっと静かに海を見ていたかったです。

でも、周りの華人観光客のみなさんは、だれひとり気にするふうでもなく……これは常日頃から密かに感じていることですが、華人のみなさんって、常に話し続けてないとむず痒いというか、落ち着かなくなっちゃう体質の方々なんじゃないかな。回遊魚じゃないけど、話し続けていないと死ぬ、みたいな*1

docs.google.com

*1:まあこれは冗談です。もちろん一般化はできません。知人の華人には寡黙な人もいますから。

しまじまの旅 たびたびの旅 69 ……澎湖虎井嶼・スローフードと猫の島

高雄からプロペラ機で澎湖に飛びました。高い山が全くない、平べったい環状の島、澎湖(大昔にできたカルデラ火山の外輪山だそう)。何度来てもその抜けるような解放感に強く惹かれます。海と空が、いちだんと広く大きく感じられるのです。

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今年はもう、民宿に蟄居して、時々バイクで街に出かける程度の自堕落な滞在にしようかなと思っていましたが、友人のすすめもあって、離島・澎湖のそのまた離島を訪ねる半日ツアーに参加してみました。澎湖本島の南端、風櫃の沖にある虎井嶼を夕方から夜にかけて訪れるという「夜訪虎井慢食小旅行(スローフードとともに楽しむナイトツアー)」です。

馬公市の港を出発して30分ほど、虎井の集落は本当にごくごく普通の漁村の風景。暑いので(とはいえ海風が心地よい)、人もほとんどいません。すてきです。

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島の警察署には、署長と巡査の二人しかいないそうです。それでも犯罪なんかまず起きないので、暇で暇でしょうがないって。

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ツアーガイド氏によると、虎井嶼は人の数より猫(それも野良猫)の数の方が多いらしく、「猫島」とか「喵星人島*1」などと呼ばれているそうです。ちなみに台湾の方はみなさん猫のことを「貓咪」と呼ぶんですね。

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水資源に乏しい離島のこと、水道水が引かれるまで、真水がわく井戸は島民の命綱でした。この島が「虎井」と呼ばれるようになった理由は諸説あるそうで、かつて子供が井戸に落ちて亡くなる不幸があったので、子供が近づかないように「井戸には虎が住んでいる」と言って注意をうながしたとか、台湾語の「好井(良い井戸)」が訛ったとか、ツアーガイド氏がいくつかの説明をしてくれました。

こちらは個人宅の井戸。壁に「好井」と書かれた板がかかっています。

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地元の少年が「僕の方が詳しい」とガイドツアー氏の話をたびたびさえぎりつつ乱入してくるので笑いました。

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こちらは公共の井戸。島にはあちこちにこうした井戸があるそうです。水は底の方に少ししか見えませんでしたが、多いときには井戸の八分目くらいまで水が上がってくるとのこと。

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伝統的な閩東式の住居は徐々に朽ち果てて行きつつありますが、それでも往事の面影を残しているところがあり、ガイドツアー氏から詳細な説明を聞きました。

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窓の棧に練り込まれた陶器やガラスの破片がとてもポップです。

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こちらは壁の上に色とりどりのタイルが嵌め込まれ、その下の長押の部分が細い庇のように僅かに出っ張っています。これは小鳥が止まれるようにしてあるそうで、小鳥が止まりに来る家は安全で運気が良いという考え方に基づくそうです。

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壁の下に扇型の意匠があり、またこの下の写真では門柱の上に擬宝珠のような屋根が乗っている意匠を見ることができます。

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これらは伝統的な閩東式の住居とはやや趣が異なるそうで、それはかつてこの地を日本が統治した際に日本的な意匠が持ち込まれた結果なんだそうです。

第二次世界大戦時にはここ虎井嶼にも「南進指揮所」が置かれていたよし。真珠湾攻撃の際に打電された暗号「トラ・トラ・トラ」は虎井嶼に由来するという説もあるそうですが、これはどうやら「まゆつば」のようです。

虎井嶼 - 維基百科,自由的百科全書

漁村の集落を見下ろす高台へ向かう道の途中で、ピクニックシートを広げ、海を見ながらお茶の時間。たった一人の日本人を気遣ってか、ツアーガイド氏が台湾人の青年に声をかけて一緒のシートに座らせてくれました。

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高台へ向かうこの道も日本軍が建設したものですと聞かされて、再度、いや、台湾を旅していると各地で感じるのですが、かつてここまで出張ってきちゃっていたんだなあ日本人……と何だか申し訳ないような気持ちになります。

友人も含め台湾の人々は、いやそれは歴史の結果だから、日本による統治には良い悪いを含めて色々な側面があるから、と言います。今回のツアーガイド氏もそう言っていましたが、私はやはりどこかむず痒くしっくりしない感じが抜けません。でもまあ大切なのはそうした思いを今とこれからにどう活かすかですよね。

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そのあと高台のてっぺんまで移動して、日没を待ちました。母上と参加されていた台湾の高校生が「福岡に留学中なんです」というので、日本語でしばらく話をしました。高校生で留学というのも珍しいですが、野球をやるために三年間留学して、今後は日本の大学でも野球を続けるそうです。へええ、そういう留学の形もあるんですね。

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タンクの前に野生の山羊。

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youtu.be
日が沈んでから集落に戻り、晩ごはん。どれも薄い味つけでこのツアーの「売り」であるスローフードの面目躍如。おかわり自由の「滷肉飯」と、とくにこの「魚湯」も本当に美味しかったです。

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食後にサボテンとハミウリのアイスまで食べてしまいました(こちらはオプションなので、自費で)。

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漁村の夜は、とても静かです。

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派手なところは全くないけれど、とても深い味わいの残るツアーでした。こういう、ある意味地味なツアーが成立するというのも、ちょっとした驚きです。あまりお金をかけなくても、こういう休日の過ごし方があるんだ、という。

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馬公の港に戻って、解散。お茶の時一緒のシートに座ってくれた台湾人青年(澎湖諸島の東吉島出身だそう)とは「東京に来たらぜひ連絡してね」とラインのIDを交換して別れました。

www.phsea.net

*1:日本語にすると「ニャー星人島」という感じですか。たぶん映画『喵星人(Meow)』から採ったんだと思います。追記:ツイッターで、この呼び方は映画以前からあったネット用語だと教えていただきました。ありがとうございます。映画の方がその用語に便乗したということですね。

しまじまの旅 たびたびの旅 68 ……港園の牛肉麺と爵士冰城の紅豆牛奶冰

高雄に「帰って」きたら、何をさておき、まずは港園の牛肉麺を食べに行かなければなりません。地元で人気の牛肉麺屋さんで、日本で学んでいる高雄出身の台湾留学生も「あそこが一番!」と太鼓判を押すお店です。何度となく食べに行き、そのあっさりした味わいから、日本からの出張者を連れて行ってもとても喜ばれました。

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スープありの「湯麵」と、混ぜそば風の「乾麵」があるのですが、今回は湯麵で。

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う〜ん、この「碗面(という言葉があるのかどうか分かりませんが)」の美しさ。しかし……あれ、心なしか味が変わったような気がしました。何だかあっさりし過ぎているというか。とはいえ凡百の牛肉麺よりはるかに美味しいんですけど。いやいや、これは、こちらが歳を取って味覚が変わったのでしょうね。最初に食べたのはもう十五年ほど前ですから。

もう一軒、甘いものを食べたくなって、十全國小(小学校)そばの「爵士冰城」に行きました。「爵士(ジャズ)」というカッコいい屋号ですが、創業何十年にもなるという老舗です。ごくごく庶民的なアイスクリーム屋さんという感じで、目の前にある小学校の児童が放課後に立ち寄るんだろうな、といった雰囲気です。

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もう閉店間際だったのですが「食べていっていいよ」と言って下さったので「紅豆牛奶冰」を。ミルク味のアイスクリーム(というか台湾でポピュラーな雪花冰ふう)に小豆と花豆の餡がかかったものです。花豆が入っているので、けっこう「食べで」があり、複雑な味わいで美味しいです。

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私の写真ではその魅力や味わいが全然伝わらないので、高雄のB級グルメをあますところなく取材してまとめてある『雄好呷』の頁をご覧ください。

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雄好呷: 高雄111家小吃慢食、至情至性的尋味記錄 (附手繪地圖) - 旅行 | 誠品網路書店

この頁に載っているおかみさんが「あんた、日本人?」というので「そうです」と答えると、「そうだと思った。うちの娘婿も日本人なのよ。娘夫婦はいま日本に行っていて、娘婿は中国語がうまくてね……」と、色々話してくれました。そばでおやじさんが夕飯を食べていて、このなんともゆるい雰囲気がたまりません。

こちらのお店は数年前に「啵! 爵士冰城 Bonne Jazz Ice Town」という名前で別の場所に新しいおしゃれなお店を展開したのですが、この旧店舗も変わらずに残っていってほしいなと思います。

しまじまの旅 たびたびの旅 67 ……高雄左営・懐かしの餛飩

かつて高雄で働いていた頃、会社の台湾人スタッフが何度か連れてきてくれた餛飩(ワンタン)のお店がありました。現在台湾高鉄(新幹線。当時は建設中でした)の左営駅にほど近い場所で、庶民的な市場の入口にある、ほとんど屋台と言ってもいいほどの小さなお店でした。とても美味しくて、日本から出張してきたスタッフにも好評でした。

その後、日本で仕事をしている時に、台湾の邱澤(ロイ・チウ)という俳優さんの通訳をすることがあって、背景知識を入れるために色々ネットで検索していたところ、こんな動画を見つけました。

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通訳という作業は本質的に「前もって発言を聞いておく」ことができない種類のものです。あらかじめ発言原稿を入手できて、しかも発言者はその原稿を一字一句違わず読み上げる、ということもないわけではありませんが、基本的にはつねに「ぶっつけ本番」*1です。

とはいえ、その発言がなされる状況に関する背景知識や専門用語などを予習しておけば、聞き取り、理解し、訳すこともよりスムーズになります。というわけで、特に有名な方に関してはYouTubeなどの動画を探して、発音の癖や訛りの有無などを確認し、時にはその動画を教材にして予行演習をします。

今回もそうやって視聴した動画のひとつがこれだったのですが、高雄の左営にある海軍基地で兵役に就いていたという邱澤氏、1:00あたりからの「推薦高雄美食(高雄グルメのおすすめ)」というパートでこんなことを話しています。

左営大路の、マクドナルドのお向かいにあるワンタンスープのお店。休み時間に兵舎を抜け出して、ゴミ箱を踏み台にして塀を乗り越えて、示し合わせて外で待ってる友達のバイクに乗せてもらって、食べに行ってたんだ。とにかく美味しいから。あ、玉子を追加するの、忘れないでよ。

おお、ひょっとしてこれ、あの市場の入口にあった餛飩店のことじゃないの?

というわけで今回、高雄滞在中にわざわざ出かけてきました。左営大路を歩いて行くと、確かにマクドナルドのお向かいに「汾陽餛飩」というお店が。屋号は覚えていないけど、たぶんここで間違いないはず。ただ、市場の入口の屋台ではなく、きれいなファストフードといった店構えです。お客さんも大勢入っていて、いかにも人気店という感じ。

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餛飩を、もちろん「玉子入り」で注文して、出てきたのがこれ。玉子はポーチドエッグになっていて、左側の隅に沈んでいます。おお、確かにこんな感じでした。

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でも食べてみると、特にそれほど美味しいというわけでも……思い出は往々にして美化されちゃうものですけど、こんな味だったかな。

なんとなく割り切れない感覚で食べ終え、外に出ると目の前にもう一軒「菜市仔嬤」という餛飩のお店があります。小さく「汾陽餛飩」とも書いてあります。今のお店と同じ屋号ですが、あちらは満員だったのに、こちらは客が全く入っていません。

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せっかくだからこっちも、ということで「はしご」してみました。餛飩を、でも今度は玉子を入れずに注文して、出てきたのがこれ。う〜ん、見た目はほとんど一緒です。こちらのお店の方が、餛飩がやや小ぶりですけど。

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食べてみると……この味です! こちらの方がずっと美味しい。よく分からないまま、一気に食べ終えてしまいました。こちらのお店は「辣椒」を取るための小皿や、ワンタンをスープから取り出して辣椒につけて食べるための小さなフォークまでテーブルに置かれていて、なかなか気が利いています。

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こんなに美味しいんだったら、塩味の「湯圓」も入っている「招牌綜合」にすれば良かったです。もちろん「玉子入り」で。いやいや、さらに麺も加えて「ワンタンメン」にしたい。

壁にはこのお店が何十年も続く老舗であることを示す新聞記事が飾られていました。う〜ん、最初に入ったあちらのお店は何だったんだろう。二番煎じの類似店だったのかしら。それにしてはすぐお隣で営業しているしねえ。

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気になるので、お店の老闆娘(おかみさん)と思しきおばさんに聞いてみました。「以前はここ、屋台みたいなお店でしたよね?」

「そうそう。市場が閉鎖されてね。それでお店を新しく建て替えたの」
「あの……お隣に同じ名前のお店がありますけど、あれは?」
「兄弟でのれん分けしたのよ」

なるほど、そうでしたか。食べ終えて外に出てみると、確かに市場があった場所は空き地になっていました。邱澤氏もおすすめのこのワンタン、食べに来るなら向かって左側のお店がおすすめです。あ、もちろん玉子入りで。

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*1:この通訳の「ぶっつけ本番」性が、「話せれば訳せる」という誤解とつながっているような気もします。

しまじまの旅 たびたびの旅 66 ……静かな墾丁と庶民的な鴨肉屋さん

恆春の朝市を冷やかしてから、バイクで墾丁に向かいました。台湾最南端の岬があるところです。

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墾丁は十数年前に仕事絡みで来たことがあるだけで、その時は通りにあふれる若者と、岬にある灯台しか見なかった覚えがあります。今回もその灯台を見てきましたが、こんなんだったかな?

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墾丁の街は、意外なほど人が少なかったです。伝え聞くところによると、今年の夏は中国からの旅行客が減って、台湾各地の観光地はどこも苦戦しているそう。蔡英文大統領(総統)の民進党政権になってから、中国政府が台湾への観光を規制したり緩和したりと色々政治的な動きがあったとは聞いていましたが、今年の夏にまた中国人観光客が減っているのはなぜなのかな?

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こちらは恆春から墾丁へ向かう途中に見かけた原子力発電所。台湾電力公司原発展示館もあったんですけど、あまり食指が動かずスルーしてしまいました。

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灯台から墾丁の半島を東回りでバイクを走らせながら恆春まで戻ってきましたが、暑いせいもあってほとんど人影はなく、車の往来も本当に少なく、誰もいない風景が大好きな私は楽しかったですが、十数年前に抱いていた活気にあふれた墾丁とはかなり違った印象を受けました。

晩ごはんは、行こうと思っていた鴨肉料理屋さんが定休日だったので、もう一軒地元で人気らしいこちらのお店に行ってみました。

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極めて庶民的なお店です。シャッターの柱さえ、めんどくさく(?)外していないという……。お店のにいちゃんがとても親切で、一人で食べるならこれくらいにしておいた方がいいよ、などと注文の量を調整してくれました。

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注文したのはこの店の「招牌(看板メニュー)」の鹽水鴨と冬粉(春雨)、それに豆腐の炒め物。どれも塩分控えめで美味しかったです。

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調整してくれたとはいえ、大量で食べきれなかったらどうしようと思っていたのですが、あっさり全部食べちゃって、しかもちょっと甘いものまで食べたくなってしまったので、帰りに宿の近くのカフェに寄りました。特に調べもせずふらっと入ったのですが、その都度豆を挽いて一杯ずつ入れてくれるコーヒーはとても美味しかったです。店員さん共々、とても落ち着いた雰囲気のお店でした。

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しまじまの旅 たびたびの旅 65 ……恆春ならではの味と旬の竜眼

今回、恆春に着いてからいろいろと検索して、恆春ではこの三軒のお店で食べてみたいなと思っていました。

①朝ごはんは、こちら。
goo.gl

②お昼ごはんがわりに、こちら。
goo.gl

③晩ごはんは、こちら。
goo.gl

ところが、なんと、①ご主人が臨時で来られなくなったので普通の「蛋餅」のみ販売、②③休業日で、いずれも空振りでした。う〜ん、まあそんなこともあります。次回のお楽しみに取っておくことにしましょう。

そのかわり、こちらの屋台、恆春に着いた日の夕方に長蛇の列ができていて、私も並んでみるも「売り切れ」と言われてしまいました。そこで次の日に再度行ってみたら、ちょうど始業したばかりで列はありませんでした。

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屋台の表に「不是蔥油餅」と書かれています。台湾各地でよく見られるB級グルメの「蔥油餅」ではない「蛋酥餅」、「酥」の名の通り、サクサクした生地が特徴の「炸油餅」ふうです。

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老闆の兄ちゃんが作っているところを見ても、単に小麦粉を練っただけの生地に見えるんですけど、焼き上がってみるとこのパリパリ感。「九層塔」の餡を選びましたが、本当に美味しかったです。昨日あれだけ長蛇の列ができていたのも分かるような気がします。↓こちらのレビューを読んでみると、老闆の兄ちゃんはどんなに長蛇の列ができていても一枚一枚焼いているよう。

ネットの情報も、検索の仕方によって引っかかったり引っかからなかったり。偶然こういうお店に出会うのも、旅の楽しみのひとつですね。

もうひとつ、この屋台の斜めお向かいにある「阿伯綠豆饌」にも行ってみました。「綠豆饌」というのは、ちょっと独特の緑豆の「ぜんざい」みたいな(でも全然違うけど)食べ物です。冷たいのと熱いの、それに「原味」と「綜合」があって、綜合を食べてみたかったけど売り切れだったので、原味の冷たいのを食べました。かき氷の上に緑豆と甘いどろっとしたシロップ状のものがかかっています。

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華人がよく言うんですけど、緑豆は夏の火照った身体を冷やす効果があるとされ、様々な形で食べたり飲んだりされる食材です。日本ではなぜか緑豆といえばほとんど春雨くらいしか知られていませんが、もっとこうした食べ物がポピュラーになったらいいですね。私、中国や台湾で食べる綠豆冰棒(小豆のアイスキャンディーの緑豆版)が大好きなんですけど、日本ではなぜか見かけないです。

それからこの時期は竜眼の季節なので、路上で売っていたおじさんから一枝買いました。食べきれないので20〜30粒ほどついた枝を選んだんですが、「そんだけでいいの?」と言われてしまいました。みなさんこの時期はもっとど〜んと買って行かれるもよう。「そんだけ」なので、たった10元でした。

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竜眼はライチに似ていますけどもっと小さめで、甘さも香りも控えめです。でもその分飽きずにいくつでも食べられる感じ。あっという間に一枝食べ終わってしまって、もっと買えば良かったと思いました。

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しまじまの旅 たびたびの旅 64 ……南部の空気感が心地よい恆春

台東から電車とバスを乗り継いで、台湾最南端の古い街、恆春にやってきました。にぎやかな街で、殊にこの、ごった煮のような庶民的な空気が魅力的です。

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恆春には昔の街を囲っていた城壁や門の一部が今も残っています。公園のように整備されている所もありますが、今も現役で人や車の往来がある門もありました。

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youtu.be
台湾を旅していても、都会ではそれほど「異国感」を覚えません。街の風景や建物のデザインなどはもちろん日本とは多少異なりますけど、多かれ少なかれ同じようなブランドの看板が並んでいますし、特にショッピングセンターやコンビニなどはほとんど同じ雰囲気です。

ところが台湾の南の地方、それも田舎の町に行くほど濃厚なある種の雰囲気が立ち上がってきます。かつて仕事で何年間か住んでいたのもそうした南部の、それも田舎町だったので、個人的にはとても懐かしい感覚がよみがえります。

この雰囲気を言語化するのはとても難しいです。気取っていないというか、どこか「ユルい」というか、雑然としていて様々な色と音と匂いが混在していて……「台客*1」的でもあり、唐十郎の芝居のよう*2でもあり、とにかく居心地が良いのです。

こうした街でバイクを借りて、にわか住人よろしく通りをゆっくり流していると、本当に癒やされます。まあ、旅人の勝手なノスタルジーなんですけど。

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恆春に限らず、路上に点在する亀の子たわしの破片のような檳榔(ビンロウ)の「噛みがら」と、路地のそこここに我が物顔で寝そべっている飼い犬や悠々と闊歩する野良犬を見ると、ああ台湾南部の田舎町に来たんだなあ……という気分に包まれます。現地の方には「よりによって、それか!」と突っ込まれそうですが。

そんな恆春で泊まったのは、前日にAirbnbで予約したカッコいい宿です。若い人たちが共同で経営しているらしく、ここで料理教室などの活動をしているよし。かつては銀行だったという建物の一部をリノベーションして、恆春らしからぬ(失礼)こんなおしゃれな空間に。

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Airbnbなどの民泊は、日本では個人の家の一部を貸すとか、所有するマンションの一室を貸すなどというイメージで、それが周辺の住民とのトラブルを生んで、政府も規制に傾いていますけど、台湾ではこうしたホテルや旅館も積極的に民泊サービスのシステムを利用していて、運用がとてもフレキシブルだといつも感じます。

私は他のネットのサービス、例えばBooking.comやエクスペディアなども使いますが、宿のバリエーションと旅ならではの思いがけない体験は今のところAirbnbが断トツだと思います。

料理教室をやっているだけあって、宿泊料に入っている朝食はその場で作ってくれるワンプレートでした。すばらしい。

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恆春といえば映画『海角七号』のロケ地で、映画に出てきた「阿嘉の家」はこの宿のすぐ裏手でした。この辺はおしゃれなカフェもあちこちにあって、観光客でにぎわっています。私はスルーしちゃいましたけど(ごめんなさい)。

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でもこの建物を見てからというもの、脳内で『國境之南』の歌がイヤーワームになってしまって、いささか参りました。

youtu.be

*1:日本語での説明がとても難しい言葉、いや概念とでも言いましょうか……。もともとは日本語の「ヤンキー」「チンピラ」的なニュアンスの呼称で、いささか侮蔑のニュアンスも含んでいたようですが、現在では逆に親しみの成分が濃くなっているような気がします。飾らなくて、土着的で、無頼で、野卑で、都会的なセンスは皆無だけれど、人情味があり、古き良き時代の匂いを残している……ああ、やっぱり私は語彙が貧しいです。

*2:かつて見に行っていた紅テントでの公演では「檳榔」が芝居のモチーフに使われていたりした記憶があります。

しまじまの旅 たびたびの旅 63 ……トビウオ推しの蘭嶼

綠島は「マグロ推し」でしたが、蘭嶼は「トビウオ推し」のようです。島のあちこちでトビウオを使った料理が看板やメニューに書かれていました。そこで、海辺の「海の家」風な食堂で浜風に吹かれながら食べたのがこれ、「飛魚特餐」。セットランチですね。200元ですから日本円で700円ほど。

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トビウオをまるまる一尾揚げたものと、茄子のピリ辛炒め、ニラ玉。手前の緑の野菜はそのちょっとツルムラサキみたいな土臭い感じからして芋の葉っぱじゃないかと思います。おかずはどれも美味しかったけど、特にこのトビウオ。ちょっとスパイスを効かせた唐揚げになってて、淡泊な白身にぴったりです。羽根のようなヒレを立たせて姿揚げにしているのもいいですね。

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台湾でも南にある蘭嶼は当然ながら日差しも強くて暑いですが、日陰に入るとかなり心地よく、こういう冷房が効いていない場所でも特に不快に感じません。東京は日陰や木陰に入っても蒸し暑さが襲ってきますから、逃げ場がないですね。

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食べ終わったら食器は道の向こう側にあるボックスに入れてね、と言われました。魚の骨も豚の餌にするので分けて捨ててと。なかなか気持ちのよい食堂でした。昨日書いたタロイモアイスもこのお店です。というか、お店の名前は「雯雯芋頭氷」なので、アイスの方が看板メニューなんですけど。

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トビウオがあまりに美味しかったので、別の店で夕飯もトビウオのセットを食べました。

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こちらは小ぶりのトビウオ唐揚げが二尾に、タコのサラダ、海草の炒めたの、地瓜(サツマイモ)、パパイヤの甘酢漬けみたいなの、豚のベーコンみたいなの、それにご飯。あと、スープがついて確か350元でした。

夕方の早い時間で席はけっこう空いていたんですが、カウンターに座るよう言われたので「他の席はダメ?」と聞いてみたら「予約の方で埋まってます」とのお返事。仕方なく薄暗いカウンターで食べましたが、結局食べ終わるまで予約席にお客さんは来ませんでした。

せめて「予約のお客さんが来たら移っていただきますけど、それでもいいですか?」的な心遣いがあったら嬉しいのになと思いましたが、まあ郷に入っては郷に従うしかありません。

外国を旅するときは、日本にいるときの七掛けか八掛けくらいで行動するのがいいかなと思います。自国にいるときと同じ感覚であれこれ求めないのが、ひと様の国を旅させてもらうときには大切かなと。

あ、でもこのトビウオのセットメニューも本当に美味しかったです。トビウオは骨が多い魚ですが、身離れが良くて食べやすいですし、からっと揚げてあるから小さな骨は食べられますし。

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もうひとつ、トビウオを使ったトーストとおにぎりを出しているという、朝ごはんのみのお店に行ってみました。ネットで開店時間を調べて、その時間に行ってみたら、すでに長蛇の列でおにぎりは売り切れ。う〜ん、舐めてかかってました。そこで次の日は開店30分前にバイクをかっ飛ばして駆けつけましたが、それでもすでに並んでいる人がいました。

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この屋台みたいな「掘っ立て小屋」がその朝ごはん屋さんなのですが、海を見下ろせる場所にベンチ式の椅子が何列が並んでいて、なかなか風情があります。

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台湾でよくある、メニューが並んだ紙にチェックを入れる方式で、名前も書いておじさんに渡して、ベンチで海を眺めつつ待つことしばし。名前を呼ばれたら受け取りに行きます。トビウオのトーストは今日はないとのことで地瓜のトーストにしました。それとトビウオのおにぎりと豆乳。右のカップは無料の冬瓜茶です。

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目の前の干した長靴がちょいとじゃまですけど……美味しそう。トーストは、割ってみると中にサツマイモのマッシュとゆで卵。なるほど、ポテトサラダのサツマイモ版という感じですね。ほんのり甘い味つけでこれは新鮮な味です。

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おにぎりの方は、トビウオの身を甘辛味のそぼろ状にした感じのものがご飯の間に挟まっています。ご飯も黒ごまと青のりが入っていて風味豊か。

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いや、これは開店前から並ぶ理由がわかりました。みなさんネットなどでよく調べていらっしゃる。今度訪れるときはぜひトビウオのトーストを食べてみたいです。

しまじまの旅 たびたびの旅 62 ……タオ族の信仰と主食

蘭嶼の集落では、十字架があちこちで目につきました。キリスト教の教会も数多く見かけました。蘭嶼の先住民族はタオ族(ヤミ族)ですが、この民族は独自のアニミズムを持っているものの、第二次世界大戦後にキリスト教が普及したそうです(参照:タオ族 - Wikipedia

特に海の波が削ってできたと思われる洞窟の奥に十字架が立てられている場所がいくつかあって、神聖な、というよりちょっと怖い雰囲気を漂わせていました。ここも祈りの場所なのでしょうか。

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蘭嶼は山間部が急峻なため、ほとんど道路や人家が見られないのですが、唯一山の上に見えるのが灯台で、ここまでは道路が延びています。灯台独特のこの雰囲気、やっぱりいいですね。

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灯台へ向かう道の途中に、徒歩でしか入れないような横道がありました。「小天地」というタオ族のかつての聖地に通じているそうです。蘭嶼には「大天地」と「小天地」という二つの聖地があり、どちらもかつての火山の噴火口だそうです。大天地は水がたまって湖になっているのですが、ガイドなしには到達できないほど深い森の奥らしいので今回はあきらめ、小天地を見下ろせる場所まで行ってみることにしました。

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バイクを降りて、山道を歩きます。現在はタオ族の多くがキリスト教に帰依しているとはいえ、先住民族の聖地に踏み込むのはちょっと申し訳ないような気がしますけど。説明の看板によると、かつてはこうした聖地で身体を清め、邪を払う儀式が行われていたそうです。

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だんだん草木が覆い被さってくるようになり、もう引き返そうかなと思ったら、いきなり視界が開けました。

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この緑の濃さと深さ。たぶん底の方が噴火口で、そこに聖地があるんでしょうね。

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タオ族の主食は「芋頭(タロイモ)」だそうで、島のあちこちにタロイモの水田がありました。

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街の食堂ではタロイモアイスも。かなり甘さ控えめの素朴な味です。

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海岸においてあった伝統的な形の船(たぶん観光用だと思いますが)と、そばでご主人様と一緒に散歩していたわんこ。

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しまじまの旅 たびたびの旅 61 ……花の香りと核のゴミ

蘭嶼を一周する道路をバイクで走っていると、鬱蒼とした緑から発散されているであろう草いきれの匂いと、花の香りを強く感じます。さすが「蘭嶼(ランの島)」ならでは。花の香りはランのようでもあるけれど、道端でたくさん見かける馬蹄花(たぶん)やハイビスカス(たぶん)の香りかもしれません。

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蘭嶼はどこも緑が深いです。その深さにちょっと畏怖さえ覚えるほど。平地が少なく、海からそのまま断崖が数十メートルから数百メートルも隆起しているような地形が多いためか、山麓以外には家や畑など人工的なものがほとんど見られません。古代からおそらく変わらないであろう原始のままの巨大な山がそびえ立っているのです。そのぶん緑の深さが際立っているような気がします。

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島を一周する道路で、何度も野生の山羊に出会いました。

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よく見ると、山の急峻な崖に白い山羊が点々と見えます。アニメ『アルプスの少女ハイジ』の世界ですね。

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ちなみに蘭嶼の集落がある場所では、野良犬もたくさん見かけました。野良犬じゃなくて、飼い犬を単に放し飼いにしているだけかもしれません。島唯一の夜市には当然ながらおこぼれを狙って出没率が高いです。

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蘭嶼の一番南の端には「蘭嶼儲存場」があります。低レベル放射性廃棄物を保管している場所です。台湾はすでに脱原発に舵を切っていますが、それでも過去の「遺産」は保管し続けて行かなければなりません。翻って日本は……。蘭嶼という一種の「最果ての地」にこういう施設があること共々、いろいろと考えさせられます。

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蘭嶼貯存場 - 維基百科,自由的百科全書

島の飲食店やお土産屋さんなどでは、多くの場所で「反核」の旗やポスターを見かけました。

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島が核のゴミ捨て場となっていることに対して、また高レベル放射性廃棄物が持ち込まれているのではという疑惑もあり、反対運動が続いているそうです。政府は放射性廃棄物の島外撤去を約束したものの代替地が見つからないため延び延びになっており、その分の「補償」として地元にお金が拠出され……いつかどこかで、そして何度も見てきたような構図です。

「語学では食えない」をめぐって

通訳翻訳業界ではよく知られている『通訳・翻訳ジャーナル』という雑誌があります。記事の内容は圧倒的に英語関係なので私はあまり買わないのですが(ごめんなさい)、たまに中国語や韓国語の特集が登場することもあります。

また別冊として『通訳者・翻訳者になる本』というムックも出ていて、現役で活躍している通訳者や翻訳者のインタビュー記事など、私もなかば身を焦がれるようにして読んだものです。


通訳者・翻訳者になる本2019 (プロになる完全ナビゲーションガイド)

この雑誌やムックの記事は、そのほとんどが語学を仕事にするにはどうすればよいか、つまり「語学で食っていくこと」にポイントが置かれています。そのため語学学校、なかんずく通訳学校や翻訳学校の授業体験記や勉強法、プロとしてデビューするまでにやるべきこと、仕事を取ってくるために求められること……などなど、まあちょっと業界外の方が読めば「ナマすぎる」トーンの記事が多いのが特徴です。でもそれが語学業界のリアルな姿なんですね。

そのためにこの雑誌は、語学学校の広告数が半端ではありません。というか、正確にページ数を数えてはいませんが、誌面の半分かそれ以上は広告か、語学学校とのタイアップ記事、さらには各学校の様々なデータバンク、という体裁になっています。そして出稿されている語学学校の広告はいずれも身を焦がす読者に向けた「語学を上達させる」「語学を仕事に」が通奏低音として流れているのです。

メルマガへの疑問

この雑誌の出版社は「つーほんメール」というメールマガジンも配信していて、私も登録して毎回配信して頂いています。語学関係の試験情報やイベント、法改正の動向や書籍の情報などいろいろと参考にさせてもらっているのですが、昨日配信された最新号には、東京国際映画祭東京オリンピックパラリンピックのボランティア募集について記事が載っており、ちょっと引っかかるものを感じました。

例えば東京国際映画祭については、こんな感じです。

海外から多くのゲストが参加する大規模な映画祭の運営は多くのボランティアによって支えられています。


(中略)なかには語学力を有する人を求めるもの、また、ずばり通訳や翻訳ができる人を求めるものもあるようです。たとえば、「ボランティア募集部署(3)プロモーショングループ【cyberTIFF】」では日本語・英語字幕の翻訳、インタビュー時のアシストや通訳等を行う「翻訳・通訳スタッフ」を6名程度募集しています。


(中略)映画が好きな人、通訳・翻訳を学習中の人はぜひ詳細をチェックしてみましょう。

東京オリンピックパラリンピックについては、こんな感じ。

東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会は7月24日、大会ボランティアの特設サイトを開設しました。活動分野や募集人数、応募の流れ、体験記などをチェックできます。


本メルマガの読者の方々が気になるのは「通訳」のボランティアではないでしょうか。通訳は「アテンド」と呼ばれる活動分野に属しており、選手がメディアからインタビューを受ける際のコミュニケーションサポート等をおこないます。

そして最後には、同出版社の近刊である『東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本』の広告が載せられています*1

……どこかおかしくないですか。

上述したように『通訳・翻訳ジャーナル』は通訳や翻訳で食べていこうとしている読者のための雑誌であるはずです。それなのにこうして「通訳や翻訳は無償でよい(しかも緊急避難や弱者支援ではない営利目的のイベントに)」という社会通念を後押しするような情報をメルマガで発信し、さらには書籍を出版するのは矛盾しており、かつジャーナリズムの放棄も甚だしいと思います。本来であれば、こうした風潮に対し批判を加え、通訳者や翻訳者の正当な権利を主張してこそ「ジャーナル」という雑誌名にふさわしいのではありませんか。

私はかつて(大昔です)この出版社から依頼されて芸能通訳に関する原稿を寄稿したことがあります。中国語を学び始めたのが遅かった私はずいぶん歳を取ってから通訳者になったのですが、そこを意気に感じて(?)原稿を依頼してくださった恩義を忘れてはいません。それでも、このメルマガや出版物は大いに疑問です。

英語だって「食えない」?

この出版社だけではありません。例えばTOEICの日本での運営を行っている「国際ビジネスコミュニケーション協会」がTwitterに投稿されたこちらのツイート。

もう募集は終わっていますが、こちらによれば2日間で、拘束時間は合計12時間、10名募集という、これはもうれっきとした業務で、それを無償で行わせようというのです。チャリティでも何でもないイベントなのですからきちんと予算を組んで、報酬を出すべきではないでしょうか。

TOEICは就職や昇進といった現場で指標として使われることが多い試験ですが、TOEIC自体はビジネスだけに目標をしぼっているわけではありません。それでもTOEICの実施団体が「語学を学んで無償で奉仕しよう」と言っているに等しいメッセージをなぜわざわざ発信するのか、そしてやはり「通訳という作業は無償でよい」という社会通念を後押ししようとするのかがわかりません。

……というようなことを嘆いていたら、なんと、私が奉職している通訳学校でもこんな短期コースが開講されると知りました。

https://www.issnet.co.jp/courses/e_i_short.html#feature1

おもてなし通訳を体験しよう!


日本を訪れる外国人の増加に伴い、サポートする人材も求められています。海外からのゲストをおもてなしするにはどうしたら良いのでしょうか?このクラスでは、「お出迎え・道案内」「日本文化・名所の説明 」「医療サポート」などを想定した演習を通して、英語でのご案内や簡単な通訳を体験していただけます。この機会に、ホスピタリティマインドに基づいた英語でのおもてなしを学んでみませんか?英語力を高めたい方や、ボランティア通訳などに興味があり、その内容を知りたい方におすすめのクラスです。

う〜ん、まずは入門編としてボランティア「あたり」から入ってもらって、徐々に力をつけたらプロを目指しましょう(その際にはぜひうちの学校で)という戦略だとは思います。それは分かるのですが、初手から「通訳はボランティアでもできる」というのを肯定しちゃうのは、プロの通訳者を養成する学校としては矛盾しているのではないでしょうか。

語学業界の深い森

以前のエントリですが、松田青子氏の小説『英子の森』は、こうした語学産業と実際の語学の現場の乖離、ないしは矛盾を悪夢のような文体で描き出した快作、いや怪作です。何度読み返しても怒りと悲しみと、そしてある意味私もそんな語学産業の一翼を担っているのではないかという自責の念に駆られます。

qianchong.hatenablog.com


英子の森 (河出文庫)

人から尊敬を受けたいなどと日々念じている人間など誰も尊敬しないと思いますが、それでもこの国の(他の国はどうなんだろう)語学に対するリスペクトの薄さは何とかならないものだろうか……一通のメルマガをきっかけにまたそんな煩悶が始まってしまったのでした。

ことここに到って、例えば「五輪を中止」などという選択は現実的にありえないでしょう。それでも最低限「ボランティア*2」への参加を「動員」するようなことがないこと、そして自分の意思で参加した人にきちんと報酬を支払うこと、この二点だけでも様々な場所で声を上げていきたいと思っています。

追記

この記事をまとめたあと、Twitterで教えていただいたこちらのページ。糸井重里氏主宰の『ほぼ日』のコンテンツですが、酷暑の五輪に対してSNSだけでなく大手メディアまでもが警鐘を鳴らし始めている今、ここまで脳天気に組織委のお先棒を担いでしまえるなんて……まさに仰天の記事です。ぜひご一読いただき、怒りで蒸し暑さを倍増させてください。

www.1101.com

*1:かつてリオ五輪に東京外大が「自腹ボランティア」を派遣したことがありましたが、その際に東京外大の教授にボランティア学生の募集を持ちかけたのが「オリンピックジャンキー」を自称されるこの方(http://blog.livedoor.jp/charlesnishikawa/archives/9354513.html)で、この本の著者です。ご自身で「ジャンキー」と称されるほどお好きで参加されるのはもちろん自由なのですが、巨大な営利目的のイベントと化した現代の五輪や、組織委と大手広告会社がもくろむ無償奉仕の実態、酷暑における開催によって社会の各方面と人々の命にまでしわ寄せが行くと懸念されつつある中、学生にこうしたボランティアを推すのは無責任ではないでしょうか。それを承ける大学も同断です。殊に「通訳は無償でよい」との通念を強化しているという自覚が外大関係者にあるのかが疑問です。誰よりも外語をよく知り、外語を学び活かすことの素晴らしさも難しさも、そして怖さをも熟知されている外大の方々には、少なくとも五輪のボランティア通訳に疑問の声を上げてほしいと思います。

*2:言葉の正しい意味でのボランティアではないけれど。

しまじまの旅 たびたびの旅 60 ……漁港の九層塔パスタと蘭嶼の虹

若者でごった返す綠島を後にして、今度は蘭嶼に向かいます。ダイレクトに綠島→蘭嶼の船を使いたかったのですが、便数が少ないとのことでいったん台東に戻ることにしました。飛行機も一応あたってみましたが、こちらも小さな飛行機で発売後すぐに満席になってしまい、しかも島民優先とのこと(当然ですね)で、諦めました。

綠島から台東の富岡漁港に着いたのが予定より遅れて正午近く。蘭嶼に向かう船は13:00なので仕方なくフェリー乗り場の二階にある食堂でお昼を食べることにしました。これまでの経験上、こういう場所の食堂はあまり期待しない方がいいんですけど、台東の街まで往復する時間もないですし。

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……と、予想に反して、二階はおしゃれなイタリアンレストランになっていました。オープンキッチンで大勢の料理人さんがきびきび動いています。あれ?

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メニューもかなり魅力的で迷いましたが「青醬海鮮寬扁麵」を注文しました。「青醬」はバジルソース、「寬扁麵」はリングイネですね、きっと。

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おおお、すごく美味しい。漁港のレストランだけあって海鮮もたっぷり。それにこのバジルソースは「九層塔」ですね。ちょっと香り控えめで、薄味のパスタによく合っています。そう、こちらの味つけもとても淡泊でした。お店に入る前は「期待しない方がいい」などと値踏みしてしまって、ごめんなさい。

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蘭嶼までは二時間半も船に揺られるので、今回も酔い止めを飲みました。乗る船は綠島へ渡ったときよりも一回り小さめ。お客さんもそれほど多くありません。

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酔い止めの必要がないほど船はほとんど揺れず、蘭嶼に到着。緑が濃く、深いです。民宿のおやじさんにピックアップしてもらって、バイク屋さんでバイクをレンタルして(こちらはガソリン車を貸してくれました)、民宿に荷物を置いてからコンビニに水を買いに行きました。夕焼けが美しいです。

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少し夕立が降ったあとで、気がついたら目の前に虹が出ていました。

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しまじまの旅 たびたびの旅 59 ……海水の温泉と「鮪推し」

台湾に限らず、離島へ行ったら必ず灯台を探します。かつて遠洋航路の船乗りか灯台守になるのが夢だったからです。灯台の周辺はたいがい立入禁止になっていることが多いのですが、遠くから眺めているだけでもその佇まいに何かこう、胸が高鳴るのを感じます。

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こちらは綠島唯一の灯台、その名も「綠島灯台」。こういうところで灯台守をしたい……けれども、聞いた話によると現代の灯台はほとんどが自動制御になっていて、灯台守という職業そのものがなくなりつつあるそうです。

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綠島は海産物、とりわけ鮪(マグロ)が有名だそうで、街中の食堂やレストランでは「鮪推し」のメニューを数多く見かけました。こちらは朝ごはんのお店で食べた「鮪魚蛋餅(左)」と「綠島魚粽(右)」。どちらも肉のかわりに鮪を使っています。粽(ちまき)に入っている鮪はところどころ脂身もあったりして、豚バラの角煮にそっくりです。でも魚なので味はあっさり目。民宿のおやじさんのおすすめ通り、これは大当たりでした。

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夕飯では刺身も頼んでみました。一人だと分量が多すぎるかなと恐れていたんですが、以外に少なかった……。でもとても新鮮でした。ほかにも定番の「鹽水蝦」と「海草煎蛋」も。この煎蛋は「菜脯蛋」に似ていますが、菜脯のかわりに海草(生海苔みたいなの)が入っていて、これも美味しかったです。いずれも塩分控えめ。やっぱり台湾料理はどれもあっさり味でいいですね。

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日差しが弱くなる夕方まで待ってから、温泉に出かけました。綠島には世界でも珍しい海水が自然に温泉として湧いている場所があるのです。

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露天の温水プールと同じような感じで、水着と水泳帽着用です。このプールはかなりぬるくて物足りない感じでしたが、浜辺に降りた先に源泉があります。眺めていると、底からあぶくが立ち上っています。こちらはまさに温泉と呼ぶにふさわしい温度。すぐそばで波の音が響く素晴らしい環境でした。

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海水の温泉ですが、お湯から上がったあとも不思議にベタベタせず、海水浴とは全く違う感覚です。近くには90度ほどのお湯が湧き出ている場所もあり、みなさん卵や海老やトウモロコシなどを持参して茹でていました。

この温泉の名前は「朝日温泉」。もしやと思って調べてみたら、案の定日本統治時代に「旭温泉」と名づけられ、ここから日の出を眺めつつ温泉に入るのが人気だったよし。かつて、こんなところまで出張って来ていたのね、日本人。

そういえば、島を一周する道の途中にこんな記念碑がありました。

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たまたま見つけたんですけど、そばの説明文には「一九九三年二月二十八日永興旅客機事故による遭難者記念碑」とあります。台湾文化部の職員と日本の旅行会社の社員が観光資源開発のために蘭嶼へ向かう途中遭難した、と。

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綠島や、おとなりの蘭嶼は、日本人にとってはかなりマイナーな場所ですが、それでもいろいろと関わりがあるのだなと思いました。

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夕方に行った朝日温泉では日没は見られなかったのですが、民宿への帰路に素晴らしい夕焼けが待っていました。あまり人のいないこうした道を電動スクーターでかっ飛ばすのは爽快です。

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これはおまけ。民宿のかわいい送迎用ワゴンです。助手席側の窓が開かない、かなりオンボロな改造車。台湾の海辺の民宿や食堂って、こういうキュートでポップなテイストの所が多いです。というか海辺のサマーリゾートはどこもこうかな。何というか、島全体、街全体がこぞって「チープな海の家」状態なんです。気取ってなくて私は好きですが。

しまじまの旅 たびたびの旅 58 ……綠島の若者文化と監獄文化

綠島は、観光用の島内一周バスを除くと、バスやタクシーの類が一切ないので、バイク(スクーター)が必須です。私も電動スクーターを借りました。電動は馬祖でも乗ったことがありますが、電池の交換が頻繁で不便なので普通のガソリンで動くバイクを借りたかったんですけど、外国人は電動のみという暗黙のルールがあるようでした。

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というわけで、綠島唯一の繁華街、南寮のメインストリートはバイクで溢れかえっています。しかも圧倒的に若い方が多い。お店もどちらかというと若者向けのテイストで、例えて言えば原宿の竹下通りや台北の西門町的なポップで雑然とした雰囲気(の超ローカル版?)が感じられます。

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それから、バイクに乗っている時にヘルメットをかぶらない人の率がけっこう高いです。写真ではけっこうかぶっているように見えますけど、島内を一周してみて、だいたい六割くらいの人がかぶっていないようにお見受けしました。あと、上半身裸(+タトゥー)の若い兄ちゃん率もかなり高い。暑いですし、マリンスポーツが盛んな場所ですからね。

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そう、ここ綠島は端的に言って、若い方や家族連れがシュノーケリングやダイビングや釣りなどのマリンスポーツを手軽に、そして比較的安価に楽しめる場所という位置づけのようです。朝の時間など、お揃いの救命胴衣をつけた大勢の観光客が大挙してスクーターで移動していたりして、ちょっと壮観です。

その意味では静かにゆっくりとリゾート気分を味わう南の島という雰囲気はほとんどなくて、そのぶん「田舎」の雰囲気満載。澎湖よりも馬祖よりも、さらに台湾の田舎の街らしい雑多な感じにあふれています。

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かつて「監獄島」とも称された綠島には、いまも一部の刑務所施設が現役で稼働しています。民宿のおやじさんによると、こちらの刑務所には「重犯」の受刑者が収容されているとのこと。すぐそばにあるポップな繁華街とのコントラストがすごいですね。

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入口前まで行ってみると、観光客が記念写真を撮っていました。何というか、この壁の絵もそうですけど、刑務所というものに対する感覚がちょっと興味深いです。いや、日本の刑務所だって壁に絵が描かれているところはありますけど。

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入口前の日陰にいた「アンタ、何しにきたの」という顔の猫さん。

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この刑務所からほど近いところに「綠島人権文化園区」があります。かつて政治犯や思想犯を収監、あるいは教化するために使われていた「綠洲山莊」と、犠牲になった人たちを記念する公園からなっています。しかし監獄の名前が「山荘」ってのもすごいですね。

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逆光で見えにくいですが、奥の大きな崖に「滅共復國(共産党を滅ぼして国を取り戻そう)」と書かれています。

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分厚い鉄の扉。

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接見用のブースもありました。

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もともと憲兵などの宿舎だった建物で、白色テロの犠牲になった医療関係者に関する特別展が開催されていました。

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綠洲山莊のお向かいにある人権記念公園。暑いのでほとんど人がいません。

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自身も政治犯として収容されていたことがある作家・柏楊氏の碑文がありました。「在那個時代,有多少母親,為她們被囚禁在這個島上的孩子,長夜哭泣」。あの時代、どれだけの母親が(彼女たちのために)この島に囚われた子供を思って長い夜を泣き明かしただろうか。

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この碑文にある「為她們」にぐっときました。直訳すれば「彼女(母親)たちのために」ですけれど、この「她們」にはもっと広くて深い意味が込められていると思います。いわば、自由を求める全ての人々のために、この国の未来のためにというニュアンスを感じるのです。

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地下に掘り下げられたスペースには、かつてここに収容された人たちを始め、政治犯や思想犯として迫害や弾圧を受けた人々の名前が刻まれています。ものすごい数です。

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獄死した人、銃殺刑に処された人……。

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綠洲山莊に収容されていた人々の名前の中に、施明徳氏の名前もありました。やはり李昂氏の小説「鴛鴦春膳」の牛肉麺のくだりに出てくる描写は、ここでのことだったんですね。

あまりに暑いので探しませんでしたが、2000年に陳水扁氏と組んで副総統に当選した呂秀蓮氏や、高雄市長だった陳菊氏の名前もあるそうです。いずれも民進党の重鎮級政治家。現在台湾の与党は民進党ですが、この政権が生まれるまでに、また台湾がアジアで他に先駆けて民主的な政策を進めつつあるという今の状況に到るまでに、費やされた犠牲の多さに粛然とした気持ちになります。

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最後の、一番新しい年代のところに「前田光枝」という名前を見つけました。日本人ですよね。調べてみたらこの方、台湾独立運動などに関わり一時は日本に亡命していたこともある史明氏と、台湾共産党史などの研究で知られる盧修一氏との連絡役(何でもお茶の葉を入れる缶に史明氏からの「指令」を潜ませて盧修一氏に渡したとか)として摘発され、国外追放となったそうです。

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緑島がこうした歴史的背景を持っているということで、「竹下通り」的なメインストリートには監獄を模したようなお店がいくつかありました。民宿のおやじさんは「監獄文化」と呼んでいました。ちゃっかり観光資源にしちゃってます。

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こちらは「冰獄」という名前のかき氷屋さん。牢屋に入ってかき氷を食べるというコンセプト(?)。ちょっと不謹慎な気もしますけど、こういう悪趣味テイストのノリって台湾には好きな方も多いですよね。あの「KUSO」的な悪ノリ文化というか。

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こちらのお店をはじめ、緑島のかき氷は海草(岩海苔みたいなの)が入っているのが特徴だそうです。「監獄冰」の「ALL(全部乗せ)」を頼んでみました。大と小がありますが、「小」でもこのボリュームなので、二人でシェアした方がよいかもしれません。

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しまじまの旅 たびたびの旅 57 ……富岡漁港の魚市場と緑島フェリー

台東の沖にある綠島に渡るため、フェリーが発着する富岡漁港にやってきました。

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切符売り場は綠島や蘭嶼で休日を過ごす人たちでごった返していますが、民宿経由でフェリーのチケットを予約しておいたのですぐに発券してもらうことができました。

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乗船口に向かう途中、こんな看板が。“白色恐怖”は「白色テロ(反政府勢力に対する政治的弾圧)」のこと。そう、綠島はかつて政治犯を収容する監獄が置かれていた場所で、別名「監獄島」とも呼ばれていたのでした。今も一部の施設は刑務所として運営されています。

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確か「美麗島事件」に連座した施明徳氏らもかつてこの綠島監獄に収容されていたはず。李昂氏の小説『鴛鴦春膳』に収められた短編「牛肉麺」で出てくる施明徳氏のエピソード*1もここの監獄での出来事だったのかな。

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フェリーの出発時間まで余裕があったので、チケット売り場の隣にある魚市場に行ってみました。

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仕切られた台の上に、次々に水揚げされた魚が並べられていきます。その場で値段交渉をして買って行くみたい。巨大な魚から雑魚まで、そして熱帯特有のカラフルなものまで、色々な魚が並んでいます。

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なぜか太刀魚だけは別枠のコーナーが設けられていました。新鮮でお刺身にしたら美味しそう(熊本に住んでいたときはよく生の太刀魚を食べていました)。手前の太刀魚の巨大なこと!

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今回乗ったフェリーは「天王星」号です。

ところで、以前綠島に行ったことがあるという台湾の留学生から「センセ、あのフェリー、波が高いときは気をつけた方がいいですよ」と言われていました。

「どうして?」

「船酔いするんです。周りの乗客も船酔いして、吐く人が続出して。その光景と音と匂いでこちらも気持ち悪くなっちゃうんです」

「えええ……」

「だから綠島についたら、みんな『帰りは絶対飛行機に乗る!』って言うんですけど、小さな飛行機が一日に数便しか飛んでないから、チケットなんて取れないんです。で、帰りも同じ地獄を味わうという……」

「ほええ……」

予約した民宿の老闆からもラインのメッセージで注意事項が届き……

①船に乗る一時間前に酔い止めの薬をのむこと(できれば口服液がよい)。
②マスク、イヤホン(音楽を聞く)、サングラス、帽子はできるだけ身につけること。
③乗船したらなるべく後ろ寄りの真ん中に席を取り(一番揺れない場所)、できれば寝ること。
④船に乗って写真撮影のためデッキに出るなどせず、非常に酔いやすいのでスマホの画面も極力見ないこと。
⑤身体を横に向けると酔いにくいらしいが、それでも酔ってしまったらとにかく耐えること。

……と事細かなアドバイスが入っていました。

だもんで、戦々恐々の私はこれらを忠実に履行して、こんないでたちに。酔い止めは「トリブラ」の口服液を日本から持っていきました。

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しかし、この日は波も非常に穏やかで、ほとんど揺れず、周りで吐いている人は一人もいませんでした。私一人、かなり浮いた格好でまんじりともせず船の客席で過ごす形に。なんだか、かなりマヌケです。

*1:監獄に収容されている政治犯は、お金があれば牛肉麺を注文することもできた。施明徳氏の向かいに収容されていた囚人はお金がなく、いつも羨ましそうな目でこちらを見ていた。そんな彼を見かねてある日、牛肉麺をご馳走してあげようと注文を取りに来る看守に言おうと思っていたが、たまたまその日は用を足している最中で注文できなかった。明日また注文すればいいさと思っていたら、あくる日の早朝、くだんの囚人は銃殺刑に処されてしまった……というお話。