きょう1月13日は台湾の大統領(総統)選挙と立法委員選挙の投票日です。台湾の選挙は在外投票や期日前投票ができないそうで、この時期は海外に住む台湾人が大挙帰省して、それぞれの地元で投票をすることになります。私が勤めている学校にも台湾人留学生がいますが、冬休みを少し延長して台湾にとどまり、投票を済ませてから日本に再入国するという人もいるようです。
台湾と日本では政治の仕組みが異なりますから、ひとしなみに語ることはできないのですが、毎回大統領選挙のこうした盛り上がりぶりを見ていると、いろいろな感慨を抱きます。特に、普段はそれほど政治的なことに関心がなさそう(失礼)に見える留学生のみなさんも、こうやってぜひとも投票に参加したいという行動を示すこと自体、彼我の違いを感じざるを得ません。日本の選挙における低投票率は、留学生のみなさんの間でもつとに有名ですから。
もちろんなかには、自分はそれほど政治に関心はないけれど、親や親戚、あるいは地域コミュニティの手前、この大切な選挙をスルーするわけには行かないという同調圧力が働いて、という人もいるのかもしれません。またとある私の知人(台湾人)が語ってくれたように、毎回選挙に大量の人々が動員され、まるでお祭り騒ぎのような選挙運動や “造勢會(支持者を集めての選挙集会)” が繰り広げられることを「社会のリソースを蕩尽しすぎでは」と捉える人もいると聞きます。
ところで、きのうNYTのウェブサイトを眺めていたら、この台湾の選挙に関する記事が出ていました。大見出しには “Frozen Garlic!” とあります。見出しだけ読んでいた英日通訳クラス担当の同僚が「なんだろうと思った」と言っていたので少しご説明申し上げましたが、これは台湾の “造勢會” などでよく叫ばれている “凍蒜!” ですね。
Taiwan Democracy Is Loud and Proud - The New York Times
漢字の意味はまんま「凍ったニンニク」ですけど、これは台湾語の「ドンスァン」に漢字を当てたもので、中国語(國語/台湾華語/北京語)にすれば “當選(当選)” です(NYTのこの記事にも解説が書かれています)。選挙集会などで “◯◯◯(候補者名)凍蒜!” などとシュプレヒコールを上げるわけです。↓これはきのうのテレビニュースですが、0:15あたりで “凍蒜!” が連呼されています。
“造勢會” では、候補者や支援者の演説中に「効果音」が入ることがあって、これも台湾ならではの雰囲気だなと思います。NYTの記事でも紹介されていますが、たいていエレクトーンやドラムなどの奏者がいて、演説の内容に合わせて即興で音を入れ、集会をさらに盛り上げるんですよね。「まっとうな政治を取り戻そうではありませんか!そうでしょう皆さん! ♫ ちゃらららっらら〜ん! ♫ ドドン!」みたいに。
「政治に熱くなり過ぎでは」という台湾の知人の嘆きも分からなくはないのですが、それでも政治に対してこれだけ熱くなれること自体、低投票率と白けたあきらめ感ばかりが漂う本邦の状況とのあまりの違いに、ため息とも羨望の嘆息ともつかぬ声をついつい漏らしてしまうのでした。