インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

三塁ベースに生まれて

きのうの東京新聞朝刊、一面下の「筆洗」欄は岸田首相の秘書官・岸田翔太郎氏の更迭についてでした。この件に関しては、岸田首相に対してほとほと愛想が尽きたというか、その視野の狭さと世間知のなさに、ちょっと憐れみを覚えるほどです。

だいたい、自分の息子を秘書官に据えた段階で「世襲の準備」との批判を招くことは容易に想像できたはずなのに、その程度の想像も働かなかった(想像したけど、かわせると思っていたなら、それはそれでたいへんな驕りです)のもさることながら、そうであれば人一倍努力してそんな批判をかわしてみせるとばかりに職務に邁進すればいいところ、こともあろうかまるで炎上Youtuberなみの公私混同写真を週刊誌にすっぱ抜かれる息子氏にも目が当てられません。

それはそうと、この記事には“born on the third base”という興味深い英語の表現が紹介されていました。ChatGPTに“What does it mean?と聞いてみたら、こう答えてくれました。

The phrase is often used to critique individuals who may not fully recognize or appreciate the advantages they had, assuming their success is solely due to their own efforts rather than acknowledging the head start they had been given. It highlights the concept of privilege and the unequal distribution of opportunities in society.


このフレーズは、自分の成功が自分に与えられた有利な条件によることを理解せず、もっぱら自分の努力のおかげであると思い込み、自らの利点を十分に認識していない可能性のある個人を批判するためによく使用されます。 特権という概念と社会における機会の不均等を強調しています。

おおお、なんと的確かつ手厳しいお答え。

首相になる父親のもとに生まれたというのも、それはそれでいろいろと大変なこともあるだろうとはお察しします。自分では選べない境遇ですし。でも、せっかく与えられた地位と立場の、その意義を十分に認識していなかった・認識できなかったというのは、もう32歳にもなる大人としてはちょっと情けなかったですね。

あえてむりやり想像をたくましくしてみれば、ひょっとすると自分の後釜に据えたいと考えるお父上にどこかで反抗したかったのかもしれません。自分はほんとうは政治家なんかにはなりたくない。しかし父親は「なれ」と迫る。それがわが家の伝統だと。もっと違うフィールドで自己実現したかったのに、それができない。炎上YouTuberの心理の底には「承認欲求」があると聞いたことがありますが、あの「悪ふざけ」もそのセンで理解ができるかもしれません。

息子氏も、首相の息子であるという自分とそうではないところにある自分とのジレンマに苦しんでいた……だったらこれを機に、父親とは袂を分かってご自分の道を歩まれたらいいと思います。まだ32歳なんだし、これからいくらでも人生を再構築できます。

……って、たぶん私の考え過ぎだと思いますが。