インタプリタかなくぎ流

いつか役に立つことがあるかもしれません。

先進国だと自称することへの痛み

性的少数者に対するあからさまな差別発言で更迭された首相秘書官についての続報がけさの新聞に載っていました。同性婚の法制化に対する否定的な態度は、何もこの元首相秘書官だけにとどまるものではなく、岸田首相みずからの価値観を反映したものなのではないかという記事です。選択的夫婦別姓と合わせて、この課題に対する自民党のスタンスはもとより明白なのでいまさら驚きすらありません。

www.tokyo-np.co.jp

ただ、こうした記事で私が少々気になるのは「G7で、同性婚夫婦別姓を法的に認めず、LGBTQなどへの差別禁止法も制定していないのは日本だけだ」といったような文言に接したときです。この記事にもG7各国の現状が一覧表として添えられていて、なるほど日本だけが突出して遅れている(変な日本語ですね)のだなというのが一目瞭然で分かりやすいです。

でも、事ここに至ってしまっている現在、なおも日本をG7のメンバーだと自称し続けること自体への後ろめたさや痛みのようなものはないのかと思ってしまうのです。これだけの周回遅れが現実のものとなってしまっているいま、日本は先進7カ国の一員でございと述べることそのものが私にはちょっと恥ずかしくてやりきれません。

Wikipediaの「G7」にはこんな定義が紹介されていました。「最も裕福な自由民主主義国であり、グループは多元主義と代議制政府という共通の価値観に基づいて公式に組織されている」と。また日本の外務省はG7について「その時々の国際社会における重要な課題について、自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有する」と形容しています。選択的夫婦別姓同性婚を頑迷に認めようとしない日本の現状は、ぜんぜん多元主義じゃないじゃん。自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有してないじゃん。

あと、これはさすがにマスメディアでは見たことがないですが、SNSなどでは同性婚を法制化した台湾を引き合いに出して日本の現状を批判する際に「台湾でさえ同性婚が認められているのに」といったような文言に出会うことがあります。私はこれにも違和感を覚えてしまうのです。「台湾でさえ」は明らかに台湾を見下した言い方だなと思って。

私たち有権者ひとりひとりが、日本はG7の一員なんだ、アジアの先進国なんだという意識をそろそろ改めるべきではないでしょうか。そして政治に対して粘り強く働きかけていかなければ。私も私の持ち場でできることをやっていきたいと思います。

qianchong.hatenablog.com