インタプリタかなくぎ流

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留学生からの哀れみの視線が耐えがたい

新しい年度に入って、新学期からの授業の準備をしています。他に事務作業も大量にあって、まずは新入生の名簿を作るなどしているのですが、4月のこの時点になっても何人かの留学生がまだ来日できていません。

すでにうちの学校に在籍していて、一時帰国した際にコロナ禍の影響を受けて再入国できず、そのまま休学していた留学生は、入国を認められました。が、今年から新規に入学してくる留学生は、現在のところ一律に入国の許可が下りていない様子です。私が担当している学科は二年制なので、もとから日本に在住している留学生も多く、まだましな方です。でも一年とか半年のカリキュラムで留学生を受け入れている日本語学校は、どこも学生さんが払底しているそう。当面はオンライン授業で対応するようですが、長期化するようだと「日本に留学する」ことそのものの意義が問われる事態になりますよね。

だいたい、台湾とか中国とか韓国からの新規留学生に日本政府からの入国許可が下りないって……政策が奏効してほぼ完全に抑えきったそれらの国に対して「日本よ、お前が言うか」という感じです。一年以上経っても、感染症抑制のための「検査と隔離」を真剣に行わず、ワクチン開発では完全に他の先進国の後塵を拝し、第四波の懸念が高まる中「まんぼう」「まんぼう」とばかり言っているうちの国に、それでも留学してくれようとしている学生さんたちなのに。

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https://www.irasutoya.com/2016/04/blog-post_66.html

国の要路にあるお年寄りたち、特にジイサンたちは未だに気づいていないかもしれませんけど、日頃から国際的なやりとりをしている業界の私たちにはひしひしと感じられる一つの感覚があります。それは「日本はもう、東アジアの中でも非常に情けない国に落ちぶれてしまった」という感覚です。留学生のみなさんと日々接していても、「日本のセンセ方もいろいろ大変っすね」という哀れみとも同情ともつかない視線を感じることがとみに多くなりました。

コロナ禍への対応もそうですけど、デジタル化(というのも陳腐ですかね。でもこの国は「デジタル庁」の新設などという、半ば意味不明なフレーズをもてあそんでいる段階です)ひとつとっても、日本は台湾や中国や韓国などの国々に大きく水をあけられています。例えばうちの学校では新しく入ってきた留学生に「学籍カード」なるものを記入させるのですが、未だに手書きで、しかも書類に顔写真と外国人登録証のコピーを取って「糊」で貼り付けるなんてことをやらせています。

留学生のみなさんはとても「大人」ですし、基本的に日本が好きで留学してくださっている人たちなので、はいはいと快く応じてくれますが、内心は「日本ってこんなに遅れてたっけ?」と不可思議に思っているはず。私としてはそういうアナクロな作業を留学生にお願いするたび、上述したような哀れみとも同情ともつかない視線を投げかけられるのが……も〜耐えられません。いいかげん、前に進みましょうよ。