インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

アベノマスクの「衝撃」を忘れない

今朝の新聞の、5ページ目だか6ページ目だかの目立たないところに、小さな囲み記事が載っていました。「アベノマスク全世帯配布完了」。400文字ほどの短い記事です。配布完了しちゃいましたか……。このほとんど役に立たなかった、問題山積で遅れに遅れ、貴重な財源を無駄遣いした愚かな政策が、見直されることなく完遂されてしまったわけです。郵便局のみなさん、回収や検品に忙殺されたみなさん、ほんとうにお疲れさまでした。

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私はこの天下の愚策が発表された時、自分のなかで何かが壊れるのを感じました。安倍政権についてはそれまでも色々と疑問を感じていましたが、布マスク二枚全戸配布という施策が「急激に拡大するマスク需要に対応する上で極めて有効だ」(日経4/2朝刊)という暗愚なドヤ顔宣言に接して、なにかこう政府に対する期待なり希望なりがもう根本からポキっと折れてしまった。あれは、私たちの心にとって何か大きな転換点になるような、国や政府というものに対するスタンスをガラッと変えてしまうような、そんなインパクトを持っていたような気がします。

qianchong.hatenablog.com

かつて中国に留学していた際、現地で知り合った大学生にこんなことを言われました。「中国は上(指導者層)がしっかりしているけれど、下(民衆)が心もとない。日本は下がしっかりしているけれど、上が心もとない」。要するに日中双方の為政者の能力について、そして国民全般の資質について、中国(の知識階級)にはそういう見方があるんだよ、と教えてくれたのです。

私は当時、それはあまりにも単純化した物言いだなあと思ったものですけど、今次のコロナ禍における官民の対応をみるにつけ、いまでも彼らの見立ては当たっているのではないかと思います。

またずっと時代が下って数年前、とある中国人ジャーナリストを講師に招いたセミナーで通訳をした際、政府筋にも近いというそのジャーナリスト氏はこんなことをおっしゃっていました。「正直に言って、中国の指導者層は日本の指導者層に対して『もっとしっかりしてくれないと困る』と思っている」。つまり、日本の指導者層があまりにも近視眼的な政争に明け暮れ、天下国家と世界情勢について深慮遠謀がなさすぎるので、中国としては却って対日政策を立てにくいから困るというわけです。

この話を聞いて、当時の私はとても恥ずかしく思いましたが、今回も「布マスク二枚全戸配布」という施策に接して、外国籍の職員や留学生が多い職場で働く私は、極めて恥ずかしい思いをしました。だって外国籍のみなさん、おたくの政府もいろいろと興味深いよねと、憐憫とも同情ともつかぬ微笑みを私に投げかけてこれらるんですもの。

アベノマスクの、ある種の「衝撃」を私たちは忘れてはいけないと思います。