インタプリタかなくぎ流

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ロイヤルコペンハーゲンの度胸

デンマークに「ロイヤルコペンハーゲン」という陶磁器ブランドがあります。「ロイヤル」の名の通りデンマーク王室の御用達だそうで、日本の古伊万里に影響を受けたといわれる藍色の唐草模様パターンがトレードマークのシリーズを始めとして、多種多様な製品を作っています。

私はこのブランドの「ブルーフルーテッドメガ」というシリーズが好きです。もともと定番デザインの「ブルーフルーテッド(プレイン)」というのがあって、これが一番ロイヤルコペンハーゲンらしい意匠として有名で、1775年の創業以来ながらく生産されてきたそうです(いまでも定番として販売されています)。

これが「プレイン」です。

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ところが2000年になって、デザイン学校の学生だったカレン・キエルガード・ラーセン氏が卒業制作として同社に持ち込んだアイデアから、伝統のデザインをどでかく拡大したシリーズ「メガ」が生まれたのです。よく見ると、確かに「プレイン」の意匠の一部が換骨奪胎され、大胆にあしらわれていますよね。

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伝統のデザインを拡大するだけで、こんなにもモダンな印象に変わるのがとても新鮮です。そして、これを思いついたラーセン氏の独創性もさることながら、創業以来守ってきたデザインにここまで大胆な改変を加えることを受け入れた会社側、特にゴーサインを出したとおぼしきお偉方も度胸があるというか、見る目に長けていると思います。普通だったら「伝統のデザインに何てことを! けしからん!」ってけんもほろろ、歯牙にもかけないところじゃないですか。

この会社は、近年さらに新たなデザインを発表して、それは従来器の裏側に押されてきた裏印と呼ばれる王室御用達のマークなどを拡大して大胆にあしらった「フルーテッド シグネチャー」というものです。なるべく目立たないようにしてきたアイテムを逆に前面に押し出すというアバンギャルドな発想ですが……う〜ん、ここまでくるとちょっとブランド趣味が全面に出過ぎていて「ハズした」かしら、と個人的には思います。

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むしろ昨年発売になった「blomst(ブロムスト=花)」というシリーズの方が、よりこのブランドの伝統を踏まえた深みのあるデザインで素敵だと思います。

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ちなみに、現在ロイヤルコペンハーゲンフィンランドフィスカースという企業に買収されているそうです。イギリスのウェッジウッドも、フィンランドイッタラ(イーッターラ)やアラビアもこの企業の傘下ブランドなんだそう。へええ、初めて知りました。

ロイヤルコペンハーゲンの製品はそんなにお安くはないんですけど、基本的には丈夫で、そこまで繊細な扱いが必要な陶磁器ではないので、どんどん普段使いして楽しみたいところ。イェンス・イェンセン氏によるこちらの料理本にはその魅力がたっぷり表れていて、参考になります。


イェンセン家のホームディナー