インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

普通救命講習に参加してきました

先日申し込んでおいた、普通救命講習に参加してきました。

qianchong.hatenablog.com

四時間の講習は、教材費込みで1400円。テキストと、人工呼吸の際に用いる「蘇生用マウスピース」が配布されます。

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学んだことは、以下の四つです。

①心肺蘇生のやり方
自動体外式除細動器AED)の使い方
③気道異物除去のやり方
④止血のやり方

心肺蘇生

心肺蘇生は傷病者に反応と普段通りの呼吸がない場合に、呼吸と心臓の機能を補助するために行います。大きく分けて「胸骨圧迫」と「人工呼吸」に分かれています。

訓練では、傷病者を発見した際にどう行動するかから実技を含めて学びました。まず、すぐに傷病者に近寄るのではなく、周囲の安全を確認します。例えば道路の真ん中や踏み切りの中で倒れている場合は、自分の安全も確保できるかどうかを確かめるのが大切だからです。

次に、両肩を軽く叩きながら「大丈夫ですか」「わかりますか」などの声かけを行います。反応があれば必要な応急処置に移りますが、反応がない場合は、大声で周囲に助けを求め、119番への通報とAEDの搬送を依頼します。この時「そこの黒いスーツの男性の方、119番に電話して救急車を呼んでください」「そちらの女性、AEDを持ってきてください」などと具体的に人を指定して協力を求め、相手の反応も確認することが大切だそうです。

まずは119番、次にAEDの調達。周りに人がいれば手分けできますが、一人の場合は最低限119番に電話してから以下を始めます。いずれにせよ、救急隊に引き渡してできるだけ早く病院に搬送するのが最終目標だからです。あくまでもこれは「救急救命」ですもんね。

次に、呼吸の確認を行います。いきなり処置に入らない、と。傷病者の頭の方から胸を斜めに見るようにして、胸や腹が動いているかどうかを10秒以内で確認します。この時「1、2、3……」と数を声に出して数えます。成人の場合1分間にだいたい16〜19回は呼吸があるそうで、呼吸があれば10秒以内でも数回は胸や腹が動くことになります。

ここで注意すべきなのは、「死線期呼吸」と呼ばれるしゃくり上げるような途切れ途切れの呼吸、あるいは口をパクパクさせてあたかも呼吸しているように見える状態です。これは心臓が止まった直後に起こる現象で、これを普段通りの呼吸と勘違いして心肺蘇生が手遅れになることだけは避けてほしい、とのことでした。

呼吸がなければ「普段通りの呼吸なし、心肺蘇生開始」となります。まず胸骨圧迫ですが、首の下の鎖骨が合わさるところと、みぞおちのちょうど中間あたりを両手を組み合わせて手の根元を当て、1分間に100〜120回のペースで5cm圧迫。これを30回行います。ここまでの処置については、先般話題になった「British Heart Foundation(BHF)」のこの動画がとても分かりやすいです。

youtu.be

30回行ったら、人工呼吸に移ります。まず気道の確保。舌の根元(舌根)が気道を塞いでいる可能性があるので、片方の手を傷病者の額をおさえ、もう片方の手の二本の指であご先を軽く持ち上げるようにして頭を反らせるようにします。この時、首を絞めるような形にならないことが大切とのことでした。

このあと、鼻をつまみ、口全体を覆うように自分の口をつけ、横目で胸の上がり下がりを確認しながら「二回だけ」息を吹き込みます。直接口をつけるのがためらわれるような状態(嘔吐している、出血しているなど)の場合、配布されたマウスピースを使うこともできます。人工呼吸は胸の動きが確認できてもできなくても、とにかく「二回だけ」。すぐに胸骨圧迫に戻ります。

「普段通りの呼吸なし」と確認してから、胸骨圧迫×30回、人工呼吸×2回、胸骨圧迫×30回、人工呼吸2回……のサイクルで続けていきます。これ、かなり疲れるので、まわりに協力者がいる場合は交代してもらいます。交代するときもできるだけサイクルを途切れさせないため、胸骨圧迫を続けながら協力者に指示して「交代しますよ、1、2、3!」で瞬時に代わります。

心肺蘇生を中止するのは、①救急隊員が到着して引き継いだとき、②傷病者に反応が現れたとき、③普段通りの呼吸が始まったとき、だそうです。そこまではとにかく胸骨圧迫を続ける、人工呼吸はできなくても、胸骨圧迫だけはできる限り続けるのが大切と。心肺蘇生は呼吸を回復させるためのものですが、同時に、心臓を動かし続けて血液を脳に送り続けるというのも極めて重要な目的です。脳に酸素を届け続けるためで、これを怠ると蘇生しても重篤な後遺症が残る結果になってしまいます。

講習では、以上の流れを何度も、協力者役の人とペアになって実演しながら覚えました。

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AED

心肺蘇生を続けながら、AEDを使用します。協力者がAEDを持ってきてくれたら「AEDを使えますか?」と聞きます。使える場合はAEDの準備をその人に任せ、自分は心肺蘇生を継続します。使えない場合は上記の交代の要領で心肺蘇生を代わってもらい、自分がAEDを起動させます。

AEDはほとんどが自動で作動し、音声の指示に従って行動するだけです。ただし電源を入れるところだけは自分で行わなければなりません。電源ボタンを押すものや、カバーを開けただけで自動的に電源が入るものもあります。講習ではこの二種類をいずれも実習しました。

AEDが電極パッドを貼るように指示したら、服を脱がし、一枚を胸の右上、もう一枚を反対側のわき腹上あたりに貼ります。電極パッドは一度しか貼れない(貼り直しできない)ので注意が必要とのこと。また服を脱がすとき、電極パッドを貼るときだけ心肺蘇生を中断することになりますが、これも極力短い時間で行う、とのことでした。

このあとはAEDが自動で心電図を解析し、必要があれば電気ショックを与えます。傷病者に触れないよう指示が出たら、心肺蘇生を中断して傷病者から手を離します。電気ショックを与える指示が出たら、ショックボタンを押します。その後AEDから再度心肺蘇生を始めるよう指示が出たら、電極パッドを貼ったまま心肺蘇生+人工呼吸を継続します。この時、協力者は気道の確保を行います。電気ショックの指示は何度も繰り返し出るので、その度にAEDの指示に従います。

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今回の講習では、心肺蘇生とAEDの二つの処置をスムーズに行えるよう訓練しました。これは主として成人への処置で、子供や赤ちゃんに対しては多少違う配慮が必要なのですが、それは講義だけで実習は行いませんでした(上級講習に出ると学べるらしいです)。ただ、AEDは赤ちゃんに対しても使えるというのは初めて知りました。最近のAEDは成人用と子供用で電圧を変えるスイッチがついているそうです(その機種も実習で扱いました)。

最後に一連の流れの実技試験があり、〇×式の筆記試験があって、救急技能認定証をもらいました。

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これがあっても、実際に傷病者が発生した現場に居合わせたら、かなり動揺すると思います。協力者がいるかどうかも分かりませんし、服を脱がせるのも(特に相手が女性だったらなおさら)ためらうかもしれません。それでも「まずは119番! 次に呼吸と脳への血流を確保するためとにかく心肺蘇生!」という一連の流れは体得することができました。もらったマウスピースは今後常時携帯していようと思います。

今回訓練で使用したのはこんな人形でした(健康な人間に対して心肺蘇生を試しちゃいけません!)。

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http://www.aedshop.jp/

ちょっとコワいですけど、実際の現場はもっとコワいだろうな、と思いました。できれば自分も他の人も、そういう場面に出くわさないのが一番幸せですが、講師の先生がおっしゃっていた次の言葉が心に残りました。

一人でも多くの人に救命技能を知ってもらうことで、誰かの命を助けることができる。そしていつか自分が傷病者になったときには助けてもらえる。私たちはそういう社会を作って行かなければなりません。

そういう場面に出くわさないことを祈りつつ、でも出くわした場合はためらわずに行動したいと思います。講習は各地の消防署などで行われています。東京都の場合は、こちらです。

www.tokyo-bousai.or.jp

講習に参加したおかげで、昨日からずっと「ステイン・アライブ」が脳内ヘビロテしています。

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