インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

得便宜賣乖

  職場や会合などで、中国人同士が会話しているのを聞くのが好きだ。
  好きだ……ったって、明らかに「盗み聞き」なので、決してよい趣味じゃないのだけれど、ネイティブ同士の容赦ない会話を聞くのは、リスニングの訓練になる。日本人と中国語を話す段になるや、親切心から(?)語彙や表現方法を「容赦ある」レベルに落としてくれる人もいるので。
  だから、せっかくの親切心を無にしちゃうようだけど、こちらにも容赦のない中国語で話してくれるネイティブのほうがありがたい。というわけで、私も中国人留学生と日本語で話すときは、(相手のレベルにもよるけれど)できるだけ容赦のない日本語で話すようにしている。

  閑話休題。
  ここ数週間、よく話題にのぼったチベット情勢+聖火リレーへの抗議行動。中国人同士の容赦ない話がダライ・ラマへと及ぶにいたり、聞こえてきたのがこれ。
  “得便宜賣乖*1
  へええ。ちょうど教材で使うために『中国部分知识分子关于处理西藏局势的十二点意见』を訳していたところだったので、思わずキーボードを叩く手が止まった。

追記

  「チベット情勢+聖火リレーへの抗議行動」について、それとなく(どこがだ)知り合いの若い中国人(の中でも冷静に話のできそうな)数人に聞いてみた。
  「長野に行こう!」と携帯メールをもらった人もいたけれど、みんな「ま、ちょっとね」と冷静というか、あまり関心なさそうというか。
  ただ、チベット自治区新疆ウイグル自治区が独立するのだけは絶対に絶対にダメだという。
  「どうして?」
  「先祖が何千年も守ってきた土地です。僕たちの時代に失ってしまったら、未来の子孫に申しわけが立ちません。チベットも新疆も台湾もモンゴルも」
  「何千年も? モンゴル?」
  地図を見ると分かるが、中華人民共和国内蒙古自治区は彎曲したクロワッサンのような形をしている。その彎曲と新疆ウイグル自治区が連なって成す「くぼみ」にすっぽり収まっているのが外蒙古、つまり現在のモンゴル国だ。中国人と話をしていると、ときどき言外に「あのくぼみがぽっかり欠けているのがくやしい〜!」というニュアンスを感じることがある。今回も感じた。今では発行が廃止されている「中華民国全図」に見えるような、あのまるまると膨らんだ国土への憧憬か。
  今回は時間がなかったけれど、次回はどんなふうに学校で教わってきたのか聞いてみたい。

*1:ずるいことをしてうまい汁を吸いながら、調子のよいことを言う(講談社『中日辞典』)。