インタプリタかなくぎ流

“Might come in handy one day.”

夜明けの国

  シンポジウム「イメージとしての『文化大革命』」を聞きに行ってきた(於:専修大学)。目玉はドキュメンタリー映画『夜明けの国』の上映だ。文革初期の1966年から67年にかけて、中国東北地方を撮影して回った岩波映画。国交回復前に、日本の撮影隊が大陸で長期ロケを行っていたのだなあ。カラー作品であるということとあわせ、当時の雰囲気を伝えるとても貴重な映像だ。

  撮影の主眼は「新中国」の経済や産業に置かれていて、文革はたまたま遭遇した事象にすぎなかったのだそうだ。だから文革の特徴的な映像としてたびたび引用される紅衛兵や大衆を動員したプロパガンダなどのシーンはあまり出てこない。人民公社や工場での労働の姿を写したシーンがほとんどだ。それでも背景に現れるスローガンや赤い旗や、壁に貼られた毛沢東の語録などなど、思わず引き込まれる映像がたくさんあった。
  通訳者を介したやりとりも随所にあった。この通訳者は声の調子などから中国人だと思われるが、なかなか流暢で、しかも古風な日本語。場所が東北地方ということもでもあるし、「満洲」時代に日本語教育を受けた人なのだろうな。
  上映後にシンポジウムがあったのだが、こちらは少々疲れた。パネリスト四名の発言のうち三名は、失礼ながらもし自分がこのシンポジウムの通訳者をしていたら大いに頭を抱えただろうなと思う。論旨が回りくどくて、いったい何が言いたいのかよく分からない。
  会場からの質問は、こういうシンポジウムの常なのかもしれないけれど、例によって質問ではなく長々と意見表明をする人、当時の熱い思いを語る人、私怨とも愚痴ともしれない意味不明な繰り言を延々続ける人など、う〜ん、「あまりにも場の雰囲気を読めていない方」が多かった。
  特に学生の質問は、勉強不足以前に物事の理解力が極端に低いことをうかがわせる発言ばかりで唖然とさせられた。私も学生時代は今にも増して相当にバカだったと思うからこんなことを言うのもおこがましいが、今日の映画を見て、その後のやりとりを聞いたうえでその発言かい! とツッコミを入れたくなる(^^;)。せっかく質問用紙を配っていたのだから、映画の後の休憩時に記入してもらって回収して、建設的な発言を選べばいいのにね。
  説得力があったのはこの映画の制作サイドの方々。映画に撮られる人々の表情は作為的なものではないのか、当局が良いところしか撮らせなかったのではないかという批判に対して、脚本担当の方が「カメラの前に立てばだれでもある程度作為的になるのはむしろ当然だ。しかしそれを差し引いても何かが残るのがドキュメンタリーであり、残るようにシナリオを書くのがシナリオライターの仕事でもある」と発言されていた。かっこいいではないか〜。